表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された悪役令嬢は、役割を与えられない場所で静かに生きる 〜尽くしても報われなかった私を、理由も聞かずに受け入れてくれる領がありました〜  作者: 東雲透


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/98

第62話 閉ざされた港

 北方港は、城館から半日の距離にある。


 かつては王国で唯一、外洋に面した交易港として賑わった場所。


 今は、静かだった。


 潮の匂いが強い。


 風は冷たく、桟橋の軋む音だけが響いている。


 私は辺境伯とガルドに同行していた。


「……想像以上に傷んでいる」


 ガルドが低く呟く。


 倉庫の壁は色褪せ、屋根の一部が崩れている。


 だが。


 基礎は生きている。


 石積みはしっかりしているし、桟橋も修繕すれば使える。


「完全に死んではいない」


 私は手すりに触れながら言う。


 ガルドが横目で見る。


「令嬢は、楽観的だ」


「数字上、再建費は王都経由の損失三ヶ月分で回収できます」


 即答する。


 ガルドの口元がわずかに歪む。


「……本当に帳簿を読んでいるな」


 私は倉庫の扉を押す。


 中には、古い木箱が積まれていた。


 埃を被った契約書の控え。


 北方海洋国家との交易条項。


 凍結。


 破棄ではない。


「王都の中央集権政策のとき、縮小された」


 補佐官が説明する。


「港の管理権を王都直轄に近づけるためです」


 つまり。


 辺境伯の独自外交を抑える意図。


 王都は、この港を“弱めた”。


 今、それが逆に響いている。


 私は桟橋の先まで歩く。


 波が静かに揺れている。


 遠くに水平線。


 王都とは違う、広がり。


「船は出せる」


 私は言う。


「修繕と人員の再配置が必要ですが、三週間で最初の便を準備できます」


 ガルドが息を吐く。


「三週間で?」


「急げば二週間」


 辺境伯が私を見る。


 評価でも疑問でもない。


 確認。


「できるか」


「できます」


 はっきりと答える。


 怖さはない。


 戻れば解決する、と言われた。


 でも。


 戻らなくても、整えられる。


 それを証明するだけだ。


 風が強く吹く。


 港は静かだが、死んではいない。


 眠っているだけだ。


「王都は嫌がる」


 ガルドが言う。


「嫌がらせは強まる」


「はい」


 私は頷く。


「でも、動かさなければ削られ続けます」


 辺境伯が桟橋に立つ。


 海を見つめる。


「動かす」


 短い決断。


 それだけで、港の空気が変わった気がした。


 帰りの馬車の中。


 私は窓から海を見つめる。


 静かな場所を選んだ。


 でも。


 静けさは、守るものだ。


 港は閉ざされていた。


 けれど、閉じたままではいない。


 少しずつ、動き出す。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ