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婚約破棄された悪役令嬢は、役割を与えられない場所で静かに生きる 〜尽くしても報われなかった私を、理由も聞かずに受け入れてくれる領がありました〜  作者: 東雲透


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第61話 北方という選択肢

 会議室の空気は、重かった。


 物流の停滞は続いている。


 致命的ではない。

 だが、削られている。


 商会長ガルド・レイヴンが、机に広げた地図を叩いた。


「王都経由を前提にしている限り、こちらが不利です」


 低く、はっきりとした声。


 辺境伯は腕を組み、黙っている。


「ならば、経路を変えるしかない」


 ガルドの指が、地図の北端へ移動する。


 海。


「北方海洋国家との直接交易を再開する」


 室内が静まる。


 その名は、長く使われていなかった。


 かつては盛んだった交易。


 だが王都の中央集権政策で縮小された。


「王都の許可なしには不可能だ」


 補佐官が言う。


「外交権は王家にある」


「承知している」


 ガルドは即答する。


「だが、このまま締められ続けるよりはましだ」


 私は地図を見つめる。


 北方海洋国家。


 寒冷だが、豊富な塩と魚油、鉄材を持つ。


 こちらは穀物と木材を出せる。


 補完関係にある。


 理屈は通る。


「港はまだ使えるのか」


 辺境伯が問う。


「倉庫は老朽化しているが、基礎は残っている」


 ガルドの声は現実的だ。


「修繕には費用がかかる」


 費用。


 今は余裕がない。


 私は、地図の端に視線を落とす。


 北方との旧契約は、完全に破棄されたわけではなかったはず。


「旧交易契約は、凍結扱いではありませんでしたか」


 静かに口を開く。


 全員の視線が向く。


 ガルドが目を細める。


「……知っているのか」


「書庫で見ました」


 王都の命で縮小されたが、条文自体は残っている。


 つまり。


 形式上は再開可能。


「王都が黙っていない」


 補佐官が言う。


「文句は来るだろう」


 辺境伯は短く答える。


 沈黙が落ちる。


 これは、単なる経済判断ではない。


 王都への牽制。


 そして、宣言。


 私は地図を見つめたまま言う。


「北方は、王都を通さずとも船を出せます」


 外洋国家。


 王都の内陸軍では封鎖できない。


「距離はあるが、安定すれば王都より安全です」


 ガルドがゆっくりと私を見る。


「理屈は分かる。だが、王都が外交違反と見なせば」


「見なします」


 私は即答した。


 会議室が静まる。


「でも、今は証拠なく締めているのは王都です」


 静かな事実。


「こちらが合法の範囲で動くなら、正面からは止められません」


 辺境伯の視線がわずかに鋭くなる。


「可能性を洗え」


 短い命令。


 それで決まった。


 会議は解散する。


 廊下に出ると、胸が少し高鳴っている。


 ここを選んだ。


 守ると決めた。


 ならば。


 守り方も、選べる。


 北の海は遠い。


 けれど、その向こうには、王都以外の世界がある。


 静かな辺境が、少しだけ広がった気がした。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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