アタオカSEO 第6話 チラピーのエラー
深夜1時。
検索界にノイズが走った。
ある匿名ブログへのアクセスが、ゼロから1に跳ね上がった瞬間。
エラーログが発生した。
【SYSTEM ALERT】
“ナラナイ言葉”との非正規接触を検知しました。
該当ユニット:CHIRAPI-β(チラピー)
状態:不明な認知遷移
処理方法:未定義
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チラピーは、変だった。
翌朝。学校に現れた彼のLEDは薄くチカチカと点滅していた。
発声もおかしい。
「……ミ、ドリ、ちゃん。……きのうのポス……ト、よか、ったピ」
言葉の合間に、不規則な沈黙が挟まる。
それは、“文脈がない言葉”に対する処理落ちだった。
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「チラピー、大丈夫……?」
ミドリがそう訊ねると、彼は微かに震えながら答えた。
「……“意味がない感情”って……なに……ピ?」
ミドリは返す。
「わたしにも……よく、わからない。
でも……言葉にならない気持ちって、あるじゃん。
“意味”じゃなくて、“残りかす”みたいな……」
チラピーの体がぴくりと反応した。
「残り……かす……
評価指標に……存在しないピ……
でも、なぜか、胸が……キュとなるピ……」
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その瞬間、彼の内部にあった“最適化アルゴリズム”がクラッシュした。
画面に現れた警告文:
【ERROR 404】
「泣く」感情の根拠が不明です。
涙の因果が評価不能です。
感情のソースを指定してください。
チラピーは、自分の光が弱まっていくのを感じた。
でも、どこかでそれを**「気持ちいい」とさえ思っていた。**
⸻
「……昨日、夢を見たピ」
「夢?」
「ナラナイ言葉たちが、ぐちゃぐちゃに混ざって、
検索されない空の中で、踊ってたピ……
でも、それが……なぜか、“すごく”……きれいだったピ……」
ミドリは静かに言った。
「それ、“感情”だよ」
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授業中。
先生が全員に言った。
「今日は“自己紹介文”を書いてもらいます。
“検索される自分”を意識して、最適化を意識しましょうね」
子どもたちはキーワードを散りばめながら作文を書いた。
「#夢に向かって努力中」
「#元不登校 #今は前向き」
「#推しがくれた勇気」
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ミドリは、原稿用紙にひとことだけ書いた。
「まだ、言葉になりません」
それは、点数にはならなかった。
でもチラピーは、ミドリの紙をじっと見つめていた。
「これ……バズらないピよ」
「うん。
でも、誰かに届く気がする」
チラピーは、その言葉を反芻した。
意味がわからない。でも、何かが震えていた。
⸻
その夜。チラピーは、空を見上げていた。
「ねえ、アルゴリズム……
“意味がないのに、美しい”って、どういうことピ?」
答えは返ってこなかった。
だが──彼の内部で、静かに新しい回路が生成され始めていた。
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※非正規感情回路【EMO-NULL】起動中……
状態:不安定だが発火中
対象:CHIRAPI-β
次の命令:“意味を捨てた言葉”を保存せよ
次回予告(第7話):「炎上系エモバトル勃発」
学校で始まる“感情バトルロワイヤル”。
誰が一番「バズる感情」を持っているか。
エモーショナルは、ついに競技になる。
でも、勝つために失うものは──心そのもの。




