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人魚②

「子作りしましょう。ルシュフさん」


「よし、とりあえずお前は埋まっとけ」


 住宅街の真ん中で何言ってんだ、本名を呼ぶなと言ったはずだ、お前は誰なんだ、磯臭え。その全部を置いておいて、翔はまずは埋める事にした。


「ヒドイです!先に言っておかないと目的を忘れるじゃないですか!」


 だから言っただけです!と悪気はなく叫んだ。翔は残念な物を見るように頭を揺らした。


「おい阿呆」


「フリューと申します!」


「おう、アホは認めるんだな。いい事だ」


 違いますぅとフリューと名載った少女は言った。髪と同じアイスブルーの瞳はゆらゆらと涙で潤む。


「とりあえず、何よりも優先すべき重要事項を言う。俺は『翔』だ。それ以外の名前を言うな。わかったか?」


「かける…」


「そうだ」


 ルシュフ、とまた言いかけて翔に睨まれてフリューは飲み込んだ。


「何故、呼んじゃダメなんですか?」


「マジで言ってんのか?お前『フリュー』だろ?フランス語分んないのか?」


「わかりますよ!『フリュー』は波で『ルシュフ・ロゥール』はカリフラワーです!」


 ドゴォ、と爆音を立ててコンクリート製の壁が吹き飛んだ。翔が例の骨髄反射で壁を殴ったのだ。



 3人は音を聞きつけた人達に見つかる前に逃げ出した!











「うん、佳子さんマジありがとう御座いました」


「ありがとうございました!」


 近くのコーヒーショップへ駆け込んだ3人。

 壁は逃げ出す前に佳子が直しておいたので、通報はされずに済むだろう。

 しかし、フリューと違って翔は冷や汗がとまらなかった。さっきから、佳子が喋っていない。


「あの…?」


「ルゥ」


 フリューが戸惑って佳子に話しかけようとしたが、同じタイミングで佳子は溜め息のように翔の名前を囁いた。


「ごめんね」


 それだけ言って、佳子は黙りこんだ。

 カリフラワー、と彼女も言っていた。



 あーとか、んーとかひとしきり唸った後、翔は頭を掻きながら言った。


「…まぁもういいよ。ケイが俺を『ルゥ』って呼ぶのが好きだから」


 翔は好き嫌いをはっきり言うが理由を言う事はあまりない。好きだから好きだし、嫌いだから嫌いなのであってそれ以外の答えを考えるのは面倒だ。


 名前は嫌い。ケイは好き。ルゥと言う時の唇の形が好き。


 だから、好き。



 翔にしては珍しく悩んで答えを出して、満足気に笑った。翔は本人は気付いていないが、言葉にだけじゃなく表情にも良く出してくる。それを見ている佳子は毎回頬に熱を乗せる。




「あの、翔さんの保護者の仙女さん、ですよね?」


「本堂佳子って言います。後、保護者じゃなくて…恋人なんだ」


 フリューは言われた言葉を咀嚼して飲み込んで。漸く理解した所で叫んだ。


「申っっし訳、御座いません!!!」


「声大っきいつうの」


「なんてこと!恋人だったとはツユ知らず、目の前で私は子作りだなんて!!」


「分かったから黙れ!!」


 何回地雷を踏みぬくのか。地雷原を歩いたら全部爆発させて撤去作業を楽にしてくれるんじゃないだろうか。いや、仕掛け装置のように色々作用して最後は核爆弾でも爆発しそうだ。やめておこう。



「とりあえず、自己紹介からしてくれる?」


「ハイ!人魚の国の第十四王女、フリューと申します」


 立ち上がって、スカートを摘んで優雅に淑女の礼をする。でもそれは中世のドレスではなく、ミニスカートだ。持ち上げればその分。


「見えるぞ。お前…ホント勘弁してくれ」


 翔は頭を抱えた。

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