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プロローグ

 ガドネア歴九七五年 四月中旬   マリア・ファルアスタシア


 私たちを乗せた馬車は、一路バース王国を目指す。ユニス王都の北、丘陵地を抜けたところにある宿場町で一泊、その先にある町にて一泊、そして王都入り。王都同士の距離は近く、もし戦争にでもなったら、距離が近いが為に先手を打った方が圧勝するだろうか。まあ、この二国間の関係性は極めて良好なので、そういった事態に陥ることは無いと思います。

 そうそう、私とアーサーですが、昨日恋人同士になれました。雨の中何となくそういった雰囲気になって、キスをして。……えへ。


 この後は、当初の計画通り、バース王国から二手に分かれることとなります。私とアーサー、そしてファーネルとミリア。この組みでそれぞれ中央街道、北部街道で調査を行う予定です。

 中央街道は、私の故郷を経由する街道です。アーサーとのことを報告したら、家族は一体どんな顔をすることやら。楽しみです。


 操車場は、てんやわんやの大騒ぎだった。

 ユニス王国とバース王国は首都同士が近く、それだけ貿易の量も人の往来も多い。そのため一〇台や二〇台の馬車ではたらず、今季最大の四〇台にまで膨れ上がっていた。そのためこれを警備する冒険者の募集もかなりの数になる。ソロでもパーティーでも参加可能だが、パーティーの人数が多い場合は、複数の馬車に分かれて乗り込むことになる。どの様に分けるかを相談し合ったり、或いはソロ同士で同じ馬車に乗り込むときに、互いにどの様な戦い方をするのかで役割分担を決めたりと、出発前から冒険者同士でも様々な所で相談している。

 基本的に、馬車一台に二人ずつの冒険者が乗り込む。馬車四〇台だから、冒険者も八〇人以上いる。数字だけ見れば多く見えるが、この先の丘陵地区から渓谷にかけては、魔獣や魔物がわんさか出てくる地域でもある。他の国ではスタンピードだと言って騒ぎ出すぐらいの物量が、この地区での平常だ。

「……それ、異常じゃ無いですか?」

 かいてもいない汗を拭うようにしながら、ミリアはその異常性を指摘する。

 ミリア・サンディー。黒龍族の女性、一八歳。身長およそ一二二フォーネルと小柄だが、人型をとっている龍族としては平均身長だ。真っ黒なロングストレートヘア。真っ黒な長袖ワンピースだが、背中は大きく開かれたものに昨日着替えた。その上に真っ黒なローブを羽織り、一見して魔道士風である。この先の砂漠地帯を想定し、ローブを脱げば涼しげな衣装になれるように、この組み合わせにした。武器は特に携行はしていない。一度だけ山岳地帯でコカトリスと戦ったことがあるのだが、その時は魔法、というよりは龍族の能力、レーザー・ブレスで一撃にて下している。それ以外の戦闘が皆無なため、どの様に戦うのかは未知数である。

「まあ、ガドネアの外から来た人は皆そう言うな」

 ファーネル・テナイ。一七歳。人間族。身長は一四二フォーネルほど。短い金髪は少々長くなりバサバサである。碧眼はこの髪色とあわせれば、この辺りの定番。長い間旅を続けているため、肌は多少焼けているが、それでも色白な方であろうか。見た目は細いが、それなりに筋肉質である。鉄製のブレストアーマー、膝元を守るアンダーアーマーの組み合わせ、武器はロングソード。こちらも剣士としては定番の装備だ。前回まとまった報酬を受け取ったため、思い切って装備一式を革製のものから新調した。

「あと、大陸の魔獣よりも大分強いとも聞くよな」

 アーサー・スナー。一八歳。人龍族。身長は一三四フォーネルほど。髪色と目の色は明るい紫と、珍しい色である。人間と比べて小柄な人龍族だが、その中で考えれば背が高い方である。革製のブレストアーマーとアンダーアーマーの組み合わせだ。彼のブレストアーマーは背中を大きく開けてあり、人龍族の特徴ともよべる翼が使えるようにしているのだ。その翼は、普段は魔法を使用してアストラルサイドに収納している。

 ファーネルがパワーファイター型であり、アーサーがスピードファイタータイプと、丁度分かれる。二人とも実家に伝わる剣技に関しては皆伝の腕前を持っているため、見た目と年齢の割にはかなり強い。

「それに関しては、ちょっとした逸話があります。他の大陸と比べ、魔力の素となるもの、学術的には魔素と呼ばれるものが多く分布しているそう。……その分魔獣も魔物も蓄えている魔力が高くなって、全部の力が底上げされているって感じみたいね」

 前半冷静に話し、後半別人のように砕けて話すのは、マリア・ファルアスタシア。彼女は二重人格であるが、これについて仲間の三人は周知の事実である。人龍族、一六歳。身長一〇五フォーネルは、小柄な人龍の中でもさらに小柄な方だ。ミリアとは色違いのワンピースをマントの下に着込む。昨日違う店で購入したものなのだが、デザインが一緒の色違いという事で、二人同時に驚いたとか。ミリアはローブだが、マリアは膝当たりまでのマントとしているのは、ローブのように脱ぐのに時間がかかるものを敬遠したからとなる。防具はこの通り一切装備していないが、彼女が装備する武器はジャマダハル。ガドネアでこの武器を持つのは、彼女の出身、ファルアスタシア家の人間のみで、有名人でもある。長さ二五フォーネルほどの刃、その両脇を二本の棒で支え、その棒の中間当たりで横の棒がつなぐ。その横棒を握り、振るう。攻撃は刺突が主となるが、薙いだり相手の剣を弾いたり滑らせたりと、多種多様な動きも自由自在だ。彼女の剣技の特徴としては、短い距離の空間跳躍がある。そこにトリッキーな動きを重ねることで、並の戦士では相手にならないほどの強さを誇る。

 なお、アーサーとマリアは、つい昨日、恋人になったばかりである。実はファーネルとミリアが二人をくっつけちゃおう作戦を考えて居たのだが、その前に勝手に引っ付いてしまったことで、少々拍子抜けを食らったばかりなのだ。


 この四人はこれからどんな旅路となるのか。胸を弾ませるのだった。


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