谷村 亮太郎・パーティー会場にて
Side 谷村 亮太郎
古来より、善は急げと言う。
いくら善であっても、死人が出た後では、被害が拡大した後では意味がない。
今日本は未曽有の危機だ。
宇宙犯罪組織。
異次元帝国。
異世界の帝国。
そして恐怖の大王の復活。
人類史の中で未経験の厄災が起きている。
敗北は地球人類の終わり。
勝利し続けなければ未来はない。
☆
=夜・関東・首都圏・パーティー会場周辺=
黒髪のおかっぱ頭の不思議な雰囲気の少年、谷村 亮太郎は、パーティー会場にいた。
正装に身を包んでパーティー会場に参加――ではなく、異世界で磨いたテクニックを駆使してテロリストの対処に回っていた。
服装も黒いローブ、敵どころか味方でも感知困難なスキルが付与された衣装をに纏っている。
このパーティー会場は藤崎 シノブや谷村 亮太郎などの後ろ盾になってくれる有力者、権力者の集まりだ。
パーティーの主催者はヴァン・テスタロッサ。
同年代の天才少年。
欧州の財団と呼ばれる組織のトップ。
会場の周囲は財団の特殊部隊が潜んでいる。
パワーローダーも待機していた。
厄介なのは不正規なテロ行為だ。
無線機で彼方此方に指示を飛ばしながら亮太郎は敵を無力化。
先日――関西のヴァン・テスタロッサの屋敷に無謀にも襲撃を仕掛けてきた相手を無力化して引き渡し、数々の事件でその実力は証明済みなので、財団の人々は亮太郎の指示に従ってくれた。
ヴァン・テスタロッサと言う自分達の指導者、若き天才と言う前例があったからかもしれない。
パーティー会場周辺は粗方安全確保。
周囲のビルからの狙撃も対策済み。
問題があるとすれば—―
(やはり来たか)
雑居ビルの屋上からパーティー会場となっているホテルの会場周辺にパワードスーツ兵器、パワーローダーが現れる。
全高4mの大きな鎧。
この世界における第一世代型。
大型化したギガスローダーとかではなく、ただ単純に技術力やノウハウが不足していて装甲車に手足をくっつけた様な形状になっているのだろう。
武装は既存の武器の流用。
12・7mmやロケット砲とかで、ビームやレーザー、プラズマなどは無いとは思う。
動力はディーゼルエンジンか、あるいはバッテリー式か。
財団の方のパワーローダーは半永久機関であり、非核三原則には抵触していない。
宇宙刑事や並行世界の戦隊レッドのパワードスーツを部分的に超えているところすらある。
『聞こえるかね、亮太郎?』
「ヴァンか」
ヴァンからメッセージが届いた。
パーティー会場の喧騒も一緒に聞こえている。
パニックにはなっていないだろう。
ヴァンにはそれだけの能力がある。
『君専用のパワーローダーを用意しておいた。よかったら使ってくれたたまえ。場所はホテルの地下駐車場入り口前だ』
「了解」
亮太郎は素早く移動。
せっかくだから使うことにした。
移動中にもヴァンの言葉が流れる。
『このままでは、人類は大罪者として宇宙の歴史に名を刻む事になる。そうなってからでは遅いのだ』
『民衆が今の日本を受け入れると言うなら私は戦争を引き起こすつもりでいる』
『このままでは、世界は日本と言う国を犠牲にしてまた同じ過ちを繰り返すからだ』
『谷村 亮太郎、君が私の事を友と思ってくれているのなら、どうか私とは同じ道を選択しないでくれ』
『人類を心の底から信頼できないと言う気持ちは分る。だが誰かが目指して、理想の先導者にならなければ永遠にその時は来ない』
(まったく、人を乗せるのが上手いんだから……)
普通の人間にとっては難解な言葉かもしれない。
ワケが分からないかもしれない。
でも亮太郎は幸か不幸か分かってしまう。
気が付けばトレーラーの中から一台のパワーローダーが待機していた。
黒をメインに金縁の騎士。
赤いトサカ。
横長の赤いカメラアイ。
右肩部接続されたキャノン砲。
左腕には丸いシールド。
背中には大きなブースターが二つ。
各部にブースターが搭載されているのだろう。
躊躇うことなく亮太郎はパワーローダーを装着。
そして空高く飛翔。
あまり速度を出すと周辺のビルの窓ガラスが割れて被害が出る。
ヘルメットのディスプレイには律儀にメッセージが表示される。
君が敵だと思うのであれば世界すら、財団が相手でも攻撃せよ。
私はそれを支持する。
ヴァン・テスタロッサより。
信頼された物だと思い、谷村 亮太郎はビームサーベルを引き抜き、次々と地上に展開したパワーローダーに斬りかかる。
情報をより多く引き出したいので命まではとらないでおく。
それに爆発を引き起こしての二次災害が予測できないのが怖いのもある。
両腕、両足を斬り飛ばし、行動不能に追い込んでいく。
残像、分身が発生する程の超スピードで動き、敵も味方をも置き去りにする速度で敵だけを無力化する。
気が付けば敵の指揮車両もタイヤを破壊し、行動不能に追い込んでいた。
『聞こえますか—―谷村様』
と、ここでオペレーターの女性の声が聞こえる。
白髪で眼鏡を掛けた真面目そうな感じの美人な感じだ。
『その機体で戦闘機を撃墜せよとの事ですが……パワーローダーでそんな事が可能なのですか?』
「可能だよ」
どうやら敵は戦闘機すら投入してくるらしい。
自分達の利益、不利益のためならここまでするとは。
レーダーにも表示されているが、亮太郎の探知、感知スキルの方が正確だ。
敵戦闘機の数は五機。
自衛隊もスクランブルで出動しているか、何かしらの理由で対処不可能、もしくは迎撃不可能か。
『マッハ2、3、4……尚も速度上昇中!! 凄い—―マッハ5、6――普通の人間ならとっくに即死している筈なのに……』
「敵戦闘機の数は五機。軽空母が一機。全てを終わらせる」
戦闘機の機種は最新鋭のステルス機であり、軽空母の離着陸にも対応している機種。
Fー35。
それも垂直離着陸機能が搭載されたB型。
日本の自衛隊にも配備されている奴だ。
最近のテロリストは軽空母とか最新鋭の戦闘機とか持っているらしい。
そんな金があるならもっと他の事に使えよと言いたくなる。
そうこうしているウチに接敵。相手方の無線も傍受。
『何かが高速で—―弾道ミサイルか!?』
『それにしては反応が小さい!!』
『自衛隊は出動しないんじゃなかったのか!?』
『落ち着け!! 日本の平和ボケどもの手じゃない!! 恐らく財団の—―』
先頭の戦闘機の一機が理不尽な死の予感(*谷村 亮太郎のスキルによる精神干渉)を感じてベイルアウト。
続いて戦闘機本隊の十数メートル以上の鉄の塊を右肩のビームキャノンでチリ一つ残さず灰にする。
戦闘機の残骸を地面の市街地に落下させればそれで被害が出るからだ。
ビームの濁流に吞み込まれた敵の一機、ロボットアニメに出て来る人型機動兵器ぐらいの翼を持った鉄の塊は搭載していたミサイルやジェット燃料が誘爆する形で大爆発を引き起こした。
それでも亮太郎は欠片一つ残さないようにビームの照射を続ける。
高高度から落下した物体は例え破片サイズであっても銃から発射された弾丸と変わらない。
万が一に地面に落ちて被害が出るのは亮太郎としても心苦しいからだ。
『何だ今のは!?』
『ブレイク!! ブレイク!!』
『レーザーか何かか!?』
『何が落ち目の斜陽国家だ!?』
現在の谷村 亮太郎の機体はマッハ10を超えている。
それでいてUFOのような、人知を超えた鋭角的な軌道で射撃ポジションを取り、発射。
今度は二機同時に巻き込むように。
魔力付与を載せて確実に消滅させるように発射した。
圧倒的な死の予感を感じた戦闘機パイロット二機はそのままベイルアウト。
『戦闘機を二機纏めて!?』
『腕の方も凄腕かよ!?』
テロリストの戦闘機が二機纏めて光線の濁流の中に消えた。
残る敵は二機。
逃げようとそれぞれ別のルートで逃亡する。
「逃しはしない」
『うわあああああああああああああああああああ!?』
現代の友人戦闘機はマッハ2かそれ以上だせれば速いと言われるレベルだ。
相手はマッハ十(時速換算、約一万二三五十キロ)以上――尚も加速を続ける人型の怪物。
どんな超一流の戦闘機乗りでも、Gでペシャンコになって即死するのが普通だ。
だが操縦しているのは谷村 亮太郎。
異世界帰りの勇者であり、生身で五十m級の巨大な化け物を倒すレベルの怪物なのだ。
『引き受けるんじゃなかった!! こんな仕ごとぉ—―』
最後の一機が恐怖に駆られてベイルアウト。
機体本隊は光の濁流、亮太郎の加減抜きの最高出力の一撃で吹き飛ぶ。
これで5機全機撃墜。
脱出した5人のパイロットをすぐさま近づいてアイテムボックスのアーティファクト内に確保、収納する。
依頼主について口を割らせる必要があるからだ。
『じょ、状況終了――素晴らしい戦果です—―』
あまりにも非現実的な戦渦にオペレーターの表情がよろしくない。
この世界において、まだパワーローダーと言う兵器は生まれたての兵器なのだ。
戦車で空を飛んで最新鋭ステルス戦闘機の背後、至近距離について撃墜するぐらいにあり得ない戦果に感じられたのだろう。
どっかの特〇野郎〇チームだか、G.〇.〇ョーと化している世紀末世界をエンジョイしているような自衛隊ならやりそうだが。
学徒動員で最前線送りにされたニュー◯イ◯軍団な少年少女の方はパワーローダーで陸上戦艦沈めてたし。こっちも大概頭おかしい。
ちなみに上記二つとも別々のとある並行世界の出来事だ。
『あの、どちらに向かわれるので?』
「敵の空母を抑える—―あれだけ派手に暴れたんだ。少しは貸しを作っておきたいだろう?」
『単独で空母を制圧するんですか?』
「航行システムを無力化し、脱出艇も破壊し、後は生身で乗り込んで自爆システムの類などを無力化する。ヴァンには金を貰っているからね。それぐらいはするさ」
『まるでゲームだか漫画だかのスーパーソルジャーですね……』
戦争が起きたら一人で戦争を終わらせられそうな勢いである。
などと言っている間に海上に浮かぶ軽空母を視認。
今は夜中で海上に光源は少ないが、谷村 亮太郎の魔法とスキルの前ではそのハンデは通用しない。
戦闘ヘリやミサイル艇の姿もあるが構わず突っ込む。
人間に近いサイズのマッハ十以上で飛び回る存在は現代科学を以てしても迎撃は困難である。
ヘリは搦手でパイロットに催眠術を掛けて軽空母に着陸させる。
ミサイル艇も武装とスクリュー部分をビームサーベルで切り裂き、此方も催眠術で無力化。
軽空母の甲板を破壊し、脱出艇も破壊、スクリューを破壊して行動を停止。
そのままパワーローダーを脱着、アイテムボックスの中に閉まう。
軽空母に着陸したヘリのローターを斬撃を飛ばして斬り飛ばした。
甲板に出て現れた兵士を魔法で眠らせる。
やはり催眠魔法は便利だ。どんなに屈強に鍛え上げられた人間でも地球人は基本、催眠魔法には抗えない。
「さて、こっからは生身のお仕事だぞっと」
超人染みた跳躍能力を見せ、軽空母のブリッジのガラスを破って中にいた船員を催眠魔法で無力化する。
船長らしき男の身柄を確保できたのは大きい。
後は手早く各施設の船員に催眠魔法を掛けて無力化していく。
☆
Side ヴァン・テスタロッサ
=夜・パーティー会場=
茶色い髪の白人の少年、見た人間に年齢以上の貫禄を感じさせてしまう。
整った顔立ちで落ち着いた佇まい。
周囲の人間には不可能を可能にするような印象を振りまいている。
実際、ただの十代の少年が欧州の都市伝説に出て来そうな組織のトップなどにはなれるワケがない。
荒事に放り込まれた時も窓ガラスの傍により、一人騒動を見下ろし、冷静さを保ってアレコレと指示を飛ばしていた。
避難はしないのかと言われて「これで死ぬようなら私はそこまでの人間です」と言って拒否した。
その落ち着きぶりがこの場に居合わせた権力者、有力者たちの心を掴んだ。
アレコレと指示を飛ばしつつ、今回の騒動に巻き込んだお詫びや閉幕の代わりにピアノで一曲披露する場面もあった。
最後にヴァンは「この国のために、この世界のために戦い続けている人々がいます。彼達を手助けするために力をどうか貸していただきたい」と頭を下げた。
☆
Side 谷村 亮太郎
=関西・早朝・琴乃学園=
後始末をヴァンに引き継いだ段階で谷村 亮太郎はスグに琴乃学園にトンボ返りした。パワーローダーも返却してある。
やはりと言うか今回のテロの黒幕は日本政府の暗部、過激派とも言うべき勢力だった。
関西における自分達の勢力が急速に削がれて危機感を覚えたから見せしめとしてテロを引き起こしたと言うのが彼達の狙いだった。
既にガーディアンズも動いている。
捕らえた人間には全員暗示を掛けて正直に全てを話すように仕向けてある。
また今回も首謀者の口座、隠し財産の類は全て接収しておいた。
万が一、刑務所で殺し屋を雇われても厄介だからだ。
念のため監視はつけてはいるが、念には念をいれてと言う奴である。
こう言う大して能力もない癖に人間の屑としては一人前の奴に限って、どうして金を持っているのだろうか。
正直亮太郎派頭を抱えたくなる。
同時に日本と言う国が何時まで経っても良くならない理由を垣間見た気がした。
全てを終えて関西に戻ってきた頃には深夜だった。
夜も遅い。
夜中に家へこっそり帰るのもアレなので名日本橋の事務所で休んだ。
日本橋は何だかんだで空港とのアクセスが便利な外国人が多い繁華街だ。
少し離れた場所には治安が悪い地域がある街でもある。
夜中は治安が悪い。
最近は大事件が頻発していて警察などが厳重にパトロールしている。
そのパトロールの中にメイド喫茶の屈強なオカマとかが徘徊していて、悪い男判定を食らった男は食われてしまう。(意味深)
新手の都市伝説か何かかな?
(時間もアレだし、アーティファクト内で休むか)
事務所に入り、せっかくなのでアーティファクト—―外観はガラス詰めの超精巧な建築物があるジオラマを使ってズルをした。
そのジオラマ内部で現実世界との時間の流れを調節して十分な休息を置く事にした。
衣服は近くのコンビニで購入した下着類にクラフトスキルで作った精巧な琴乃学園の制服のレプリカを身に纏い、脱いだ衣類は魔法を掛けて新品の状態にする。
料理スキルで朝ご飯と昼ご飯を作る。
出来る男の条件は色々とあるが、強くて家事洗濯をこなせる男が出来る男だと亮太郎は思っている。
平成第一期シリーズのライドセイバーの影響だ。
とは言っても、料理も出来て家事も出来て仕事もこなせて強いライドセイバーはそんなにいなかった。
該当者は二人ぐらいだろう。赤いカブトムシの奴はニートだったし。
亮太郎も一般人の戦隊ヒーローのイメージが初代ゴレ〇ジャーとダイ〇マ〇辺りの混合になってるみたいに、そう言うステレオタイプ的なイメージを抱いているのであろうかと思いつつ学校に登校する。
=朝・琴乃学園教室=
琴乃学園の教室。
色々あってスター扱いの谷村 亮太郎は同じく学園のスター扱いで異世界帰りの勇者であり、リアルライドセイバーとして色々と活躍している藤崎 シノブと声を掛けられた。
本人はあまり外観は気にしていないが、ラノベの正統派(悪く言えばテンプレ)主人公と言った感じに容姿は整っている。より詳しく言えば中性的な顔立ちな感じの少年である。
最近目立つようになってから亮太郎ともどもよくモテる。
「谷村さん? 大丈夫だったんですか?」
「まあ、なんとかなかったけど一人で何とかなったよ」
事件規模を考えれば誰も殺さずに済んだのが奇跡みたいなもんだ。
その一点だけは誇っていいかなと亮太郎は思い返す。
「これ絶対谷村さんですよね? かなり目立ってますよ?」
「あ~確かにね」
スマホの画像では次元の最中と思わしき画像が出回っている。
都内で大規模テロを引き起こし、戦闘機を纏めて塵一つ残さず吹き飛ばしたり、海上の軽空母を拿捕したり色々したのだ。
マスコミもネットもまたしても大騒ぎだ。
今度は首都圏でテロであり、自衛隊や警察のいい所は何にもなかった。
少女A事件の時と同じく公然の秘密コースだ。
連日ネットに怨嗟の声を投稿している公務員の皆さんもまた眠れぬ日々が延長されるのだろう。
このままだと過労死で国家の中枢が崩壊してしまうのではないだろうかと心配してしまう。
かと言って安易に手助けするとつけ込んでくる奴が絶対に出て来るので(まあ、仕方ないね!!)と心の中で同情するだけに留めておいた。




