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第6話 なんでやのー! ウチの初体験ーっ!!

1話3分と言いつつ、今回も5分モノに……


 俺たちは早速、魔王討伐の準備を始める事にした。


 俺が住んでいるのは、石積みの建物に武器屋、道具屋、魔法アイテム屋といかにも冒険者の町だ。

 まずは市場に行って、狩ったウサギモドキを売り払った。この町は決まった時刻、町の一角で市場が開かれるのだ。


 道は夕暮れ前ということで、帰路につく者が増えてきている。もっぱら冒険者以外のこの地に住んでいる人々だ。

 冒険者たちの中でも町に戻ってくる者たちは、もう少し後、暗くなり始めた頃に帰ってくる。そして夜になると、冒険者たちのドンチャン騒ぎで賑やかになるのだ。もちろんそこを狙っての市場もある。


 俺はそんな町の隅っこの隅っこで、その日暮らしの簡易宿泊所のような所で寝起きし、掛け持ちバイトをして暮らしていた。



 夕方前のまだ明るい道を歩く俺とチャイム。そして、俺の肩の上に腰掛け、落ちないように髪の毛を掴んでいるファーファ。


「これから、どうするん?」

 ファーファが興味深そうに、町並みをキョロキョロしながら話しかけてきた。

「冒険者ギルドに行って、登録しないとな」


 ファーファは妖精の姿のままだ。曰く、

「この世界やと、妖精は珍しぃ言うても、普通に居ておかしないからなー。ウチの身体、半分無くなってるし、人間サイズになるよりこのサイズの方が維持が楽やねん」

 それにな、と目を輝かせるファーファ。

「人間サイズよりも装備も食料も少しでエエからね! エコな省エネボディーってとこやん! ようできた話やー!!」

 結構打算的ですよ、クソ神の秘書だけあって。



「それにしても、結構なお値段で売れましたね」

 チャイムが、えへらーと嬉しそうに話しかけてきた。

 元の世界(いまのにほん)的に表現すると、ステンレスの物干し竿を抱えたコスプレ小学生のように見えるが、これでも立派なプリーステスである。


「だろ? あのウサギモドキは、ああ見えて凶悪モンスターでな。めったに獲れないんだよ。腐りにくいモンスターだし、旨いしな」

「スゴいですっ! プラウドさん、そんなの狩れるんですか!」

「いや、罠に偶然かかってただけだ。あいつとガチで戦ったら、運が悪けりゃ首跳ね飛ばされて即死するからな」

「……見た目、かわいいウサギなんですけど……」


 見た目かわいいウサギが、どんな即死攻撃をしかけてくるのか。実は俺も知らない。あくまで聞いた話だ。俺みたいな運動音痴、避ける間もなく首が跳ぶ。どの道攻撃方法なぞわからんままだろう。


「何度も言ってるけど、俺はバイトばっかりでひっそり暮らしてきたからな。運動音痴で戦闘なんてまともにしたことないんだぞ。そんなのでも?」

「ウチにまかして! ウチの力でキミも一流の戦士に早変わりやーっ!」

 ……大丈夫か? まあ、クソ神直付きの秘書のようなものらしいのでアテにしているが。




 冒険者ギルドは、この町でも大きな施設の一つだ。ギルド自体の窓口だけでなく、酒場、食堂、簡易宿泊、その他諸々の複合施設になっている。

 俺たちはその裏口から中に入った。


「おー? ウド、今日は皿洗いバイトの日じゃなかったろ? 宿泊所の掃除の方か?」

「お、オヤッさん!?」

 しまった。いつものクセで……。


 大声で親しげに話しかけてきたのは、ひげ面の巨躯で毛むくじゃらのオッサン。料理長だ。元は結構な冒険者だったらしいが冒険の中で料理に目覚めたらしく、引退した後にギルド付属の食堂兼酒場の料理長をしている。

 いつも片手にフライパン、もう片手にはタバコと酒瓶を器用に持っていて、ムチャクチャだがなぜか味は絶品の料理を作るので、色々な意味でオカシイ人物である。


「おお! どうした、えらいベッピンさん二人も連れてっ! 目覚めたか? オイ!?」

 ガハハと笑いつつ、酒臭い息で俺の背中をバシバシ叩く。

「ちちちがうわっ! 今日は冒険者ギルドに登録にきたんだよ!!」

 料理長は、おお? と不意を打たれたような顔をした後、持っていた酒瓶を煽ると

「そうか、目覚めたかー」

とニヤリと笑って、俺の前を開けてくれた。




 冒険者ギルド。

 今までは村人Aとしてひっそり暮らしていたが、冒険者として動き始めるなら各地のギルドサービスを受けられるようにしておいた方が無難だ。そして、なによりも身分証明として登録しなければいけない。この町だけの生活ではなくなったのだ。


 冒険者ギルドのネットワークは凄まじい。ありとあらゆる所に関連施設があると聞く。そして、ギルドに登録するということは、この世界の冒険者にとってある程度信用のおける身分証明となる。


 ギルド受付の窓口に行き、冒険者登録の申請をする。窓口のお姉さんはいつもの美人さんだ。

「こんにちは、ウドくん。今日はバイトだっけ?」

「いや……今日は窓口の方で……冒険者登録してください」

 華やか美人さんとは妙に緊張して、いまだに上手くしゃべれない。

「え? ウドくん、冒険者になるのっ!?」

 驚いたお姉さんが開いた口に手をあてる。。

「ウドくん、マジメだから。大丈夫?」

 なんだそりゃ。

「戦いとかケガしたりとか、危ないよ? あ。聖バッファの神官さんと一緒に?」

 後ろのチャイムに気が付いた。そして、

「妹さん?」

 そうか。そう見えるのか。そう見えるよなあ。

「いえ、仲間です」

「へえ、いい子と知り合いなんだねー」

「え。いや、アイツとはなんでもなくて!」

「仲間じゃないの??」

 思わず否定して混乱させてしまった。



 別室で魔法具を使っての撮影などなどの登録作業をし、無事登録は完了した。

 チャイムは既に神官としても冒険者としても登録済みで、ファーファはペットとして登録しないつもりだったが――


「なんでやのー! ウチの初体験ーっ!!」

 泣き出した。


「なんやのん! ウチの人権を認めへんつもり? あ! あれやろ? いざとなったら見世物屋に売り払うつもりやろ? いや、いかがわしいお店とか? あかんよ! キレイやー言うても、ウチまだ未成年やしっ!」と、ふにゃふにゃ照れながら文句を言い出したので、黙らせるためにも登録する事にした。


 ギルド受付のお姉さん達がファーファを見るなり

「え? なになに!?」

「ぃやあぁぁぁぁーーーーーッッ!!」

「綺麗ーーーーーーーーッッ!!」

と、わらわらと集まってきて、お祭り騒ぎになったのだが、

「なんやのん、オネエサンたち、妖精みたことあらへんのん? 要請してくれたらいつでも呼んできたるよ! 妖精だけに!」

というファーファの一言で、静かになったのは見なかったことにしたい。頼むから、今後の冒険者生活に差し障るようなことはするな、アホ妖精。



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