誤解?(とある受験生のつぶやき)
彼女から『叔父さん』と呼ばれる男性は暫く咳き込んだあと、ようやく息が落ち着きテーブルにある彼女が持ってきたペットボトルのお茶を鷲掴みにしてキャップを開け、ゴクゴクと飲んで一息ついていた。
「それ、彼のために持って来たんだけど」彼女が少し膨れっ面をして言う。『僕のため』と言うのが、ちょっと嬉しい。
「ココの冷蔵庫に入ってるから俺のモノなの。お前は何で彼に『一緒に暮らそう』とか言ったわけ? 男子高校生が聞いたら誤解するだろう」
誤解?『一緒に暮らす』は、勘違いだったのか。
「だってさぁ、説明し始めると長くなるでしょう? 時間が無かったから結論だけ言ったの」
彼女はこれが素なの? 学校にいる時とは随分イメージが違うけど。
「結論は間違っていないけど、そこに辿り着くまでの経緯があるだろう? 今日は時間があるよね? 本人をココに連れて来たわけだから。(彼女「あります」)じゃあ、彼にちゃんと初めから説明しないと。この世界も最初が大事だからな。社会はそんなに甘くないぞ。いつまでも学生気分でいると痛い目に遭うぞ」
『叔父さん』という人が言っていることは間違ってなさそうだけど、来年大学入試に合格して初めて生徒から学生になるわけで、まだ学生気分も分からないのですが…
「分かりました。最初から説明します」
彼女が僕の隣に座り、僕の方を向いて口を開く。顔が近いけど…
「では説明します。ことの始まりは2年前の文化祭に遡ります」
2年前の文化祭? 1年生の文化祭で何があった?
彼女が少し勿体ぶった口調で話を始める。
「1年の時、同じクラスだったよね?」
「覚えてる。2年で違うクラスになったけど」
「よく覚えていました。エライ!」
この子は僕をおちょくっているの?
「それでね。1年のクラスで文化祭の時、何をやったか覚えてる?」
それは忘れようにも忘れられない青春の黒歴史。あのせいで高校に入ってから新しい友達も作らずに、数少ない同じ中学の連中としか今も連んでいないから。
「覚えているよ。誰かが『クラスで映画を撮ろう』と提案して、みんなも何となく賛成して『何にする?』となって、クラスでシナリオを公募したけど結局、誰かが言い始めた伝説の『涼宮ハルヒの憂鬱』に出てくる『涼宮ハルヒの溜息』のような映画を撮ったんだよね」
「良く覚えてるねー。私は『ハルヒっぽい映画を撮った』くらいしか覚えていないよ。それで、その時のことなんだけど」
その時のこと? 覚えているけど思い出したくない、黒い思い出。
(つづく)




