地下?(とある受験生のつぶやき)
2通目の封筒を制服のポケットに捻じ込み、急ぎ足で校門を出た。
昨日呼び出された市立図書館は高校から歩いて7〜8分の距離にあり、今日彼女から呼び出された駅はそこから更に7〜8分、高校から歩いて15分の距離にある。県内各地からこの進学校に通う生徒の多くは電車通学で僕もその一人。
帰り道だから、わざわざ駅を指定することもないと思うけど… 彼女の思惑が気に掛かり、歩みを速めながら駅へ向かう。
それにしても、いつ下駄箱に手紙を入れたのだろう? 一番最初に教室を出たと思うけど… 疑問に思いながら歩調を速めたが、前方に彼女の姿はなかった。
ホームルームの時に彼女はいたよね? 後ろを振り返っても彼女の姿は見えなかった。もしかすると他の道を歩いているのかも?と思い、横断歩道を渡るたびに左右の通りを見てみるが、彼女が歩いている気配はない。
遠くに駅が見え始めると、ロータリーの前で大きく手を振る女子生徒に気が付いた。駆け足で近寄ると彼女が嬉しそうに手招きする。
どんな顔で応えたら良いのか分からず、曖昧な表情のまま『ヨッ』と声を掛ける。
彼女は満面の笑みで応えてくれた。
「来てくれると思ったの。ありがとう」
「あっ、うん」
来るも何も、この駅で電車に乗らないと家に帰れないのですが…
「こっち、こっち」
彼女は駅の改札には向かわず、僕の制服の袖を摘んで駅前商店街の方へ歩き始めた。
この商店街も以前は賑わっていたと思うけど、地方都市の過疎化なのか、郊外に出来たショッピングモールの影響があったのか分からないが、僕が高校に通い始めた頃にはシャッターの閉まっている店が多く、一年生の時に文化祭の準備で買い出しに訪れた際には必要なものが揃わず、結局ショッピングモールまで買いに行った記憶がある。
そんなガランとした商店街を、彼女は脇目も振らずに歩いていく。
「どこへ行くの?」
「もうちょっとだから、ついて来て」
そう言いながら『ニコッ』と笑顔を付け足す美少女クラスメイトに、逆らう術はない。
寂れた通りをしばらく歩いて行くと商店街が終わる交差点の角に、昭和の時代に建てられたような古びた3階建のビルがあり、彼女は建物の前で立ち止まった。会社の事務所が入っていたビルだと思うけど、今は看板も取り外されて空きビルになっている。
「着きました」
確認する様に僕の顔を覗き込み、また制服の袖を摘んでビル正面の脇にある地下へ続く階段を降りて行く。
彼女が袖を強く引っ張っているわけではないが、何かに吸い寄せられるように僕の脚は薄暗い階段を降りていった。
(つづく)




