2人目の従業員
星の導き亭。
ラナが来て3週間が経った。
シャロンは今日も大忙しで料理を運んでいる。
料理。
接客。
料理
接客。
洗い物。
掃除。
「ラナ〜、もうちょっと仕事して欲しいなぁ〜」
シャロンがさすがに休憩ばかりのラナに、注意をする。
「ごめんシャロンさん、これでも努力してんのよぉ〜」
「ウソつけ!」
シャロンがラナを睨みつける。
「イシシ〜、休憩入りま〜す」
ラナが店の裏に行こうとする。
「こらー!」
シャロンがラナの手を掴む。
そんな日々が続いた。
ある日、夕食が終わった頃、シャロンはヘトヘトで、裏のゴミ捨て場にゴミを捨てに出た。
「ん?」
どうやら、ヴィルナが誰かに肩を貸しているようだ。
「ヴィルナさん、どうしたの?」
「この娘、助けてやって!」
おぼつかない足取りで、フラフラになっている。
短い金髪の若い女性で、剣を腰にぶら下げているが、泥だらけである。
その女性をヴィルナとシャロンで店に運んだ。
「しっかり、大丈夫?」
シャロンが顔を覗き込んで訊ねる。
「な〜に〜、その汚い女〜」
ラナが勝手に酒を飲みながら見ている。
「ラナ、布を水で濡らしてきて」
シャロンがラナを睨みながら言う。
「あいよ〜」
ラナが渋々動く。
「お腹空いてない?何か食べられる?」
シャロンがその女性に訊ねる。
「・・・ごめ、ん、なさ、い、この借り、は・・」
「気にしなくていいのよ、ヴィルナ、ちょっとこの娘、見ててくれる?」
シャロンはパンとスープを持ってくる。
シャロンがスープを冷まして、女性の口に運ぶと、震える手で自らゆっくりと食べ始めた。
少しお腹が満たされて落ち着いたのか、そのまま眠りについた。
「ヴィルナ、この娘をどこで?」
シャロンが、毛布を持ってきたヴィルナに訊ねる。
「路地裏で倒れてたんだよ」
「傷があるわけでも無いし、病気でもない、ちゃんと食事して睡眠を取れば大丈夫よ」
シャロンは賢者なので、簡単な診察くらいは出来る。
「こいつ、何か知ってる気がすんのよねぇ〜」
ラナがマジマジと女性を見る。
「しばらく寝かせてあげましょう」
シャロンが優しく呟く。
次の日の早朝。
シャロンは女性の横で、椅子にもたれて眠っていた。
「あの、あのぉ~」
その声でシャロンは目が覚める。
シャロンの前には昨日助けた女性がヨロヨロしながら立っていた。
「え!?大丈夫なの?いいから横になってなさい!」
シャロンが女性に手を貸して、寝かせる。
「こ、こんなに親切にして頂いて、ありがとう、ございます、この恩は・・・」
女性がか細い声で礼を言った。
「気にしなくていいのよ、何か食べれそう?パンとスープならあるけど」
シャロンが優しく微笑みながら言う。
「いただきます」
女性は出された食事を、すごい勢いで口に詰め込む。
「そんなに慌てて食べなくても」
シャロンは少し安心した。
ーーー昨日よりも良くなってる
女性は食べ終わると、立ち上がって頭を下げた。
「私、カタリナと申します!せめて、お世話になった分だけでも、ここで働かせて下さい!」
「う、うん、とにかく、体調が良くなってからね」
シャロンは笑顔で応える。
「わかったわ〜」
酔い潰れていたラナが目を覚ますと、何か言いたげな表情をした。
「あんた、リーナ・ハルレットよね〜、その腰のエストックに蜂のマーク・・・スズメバチのリーナ、元殺し屋〜」
ラナがドヤ顔をする。
「そう言うあなたは、確か、酔っ払いのラナ・ケルトナーだっけ?」
カタリナは顔を上げると、ラナを睨みつけた。
「!酔っ払いじゃ無いわよ!いや、酔っ払いだけど、じゃなくて!迎え酒のラナよ!」
ラナは立ち上がって激昂する。
「どっちにしてもダサい」
カタリナが軽くいなす。
「まあまあ、ケンカは止めなさい、とにかく!カタリナは早く万全の体調にならないと、あと、裏に井戸があるから、後で体洗って来なさい」
「ふん!」
2人が顔を背ける。
ーーー気のせいかしら、この2人、気が合うように見えるけど・・・
シャロンはそう思った。




