生きている限り
数日が経った。
多過ぎる捕虜を受け入れる為、人間牧場の第2集落を本格的に立ち上げる事になった。
エルリンがその状況を視察して回る。
「リン、やはり、捕虜の考えも1枚岩ではないようですね」
ファフナロッタが周りを見渡しながら話す。
「自力で寝床と食事を用意する、それが今までよりいいと思うか・・・かしらね」
エルリンが小屋を建てる、元兵士達を横目に言った。
「あ!リンだ!ヤッホー!」
エルリンは聞き覚えのある声がする方に目をやる。
「見て!この小屋、あたし一人で作ったんだよ!」
アストリッドがハシゴに登って、手を振っている。
「あ!こら!モリスのオッサン!助けてやったんだから、チャッチャと働け!」
アストリッドが、元部下と話をしているモリスを怒鳴りつける。
「いや!働いてるよ、話くらいさせてくれ!」
モリスは必死で弁解する。
「アストリッド、そんな言い方しちゃ駄目よ!」
その様子を見て、エルリンがアストリッドを注意する。
「は〜い」
アストリッドが不服そうに返事をする。
「モリス、ちょっといい?」
エルリンがモリスに声をかける。
「あ、あなたは・・・リンとか言いましたか?」
「私はラファエラよ」
「!・・・あんたが、あのラファエラか!?」
モ白い仮面の殺人鬼の素顔に、モリスが驚愕する。
「どう?ここでの暮らしは?」
エルリンはモリスに笑顔で訊ねた。
「あ、ああ、その、皆、まだ勝手がわからないんだ」
「そうでしょうね」
「死ぬより、シュトラーダに帰るより、こっちがいいのではと決めた者ばかりだが、不自由さには、なかなかなれないようだ」
モリスは頭を掻きむしりながら話す。
「う〜ん、まあ、シュトラーダに帰りたくなったら、帰ってもらって構わないわ、シュトラーダで普通に受け入れてもらえるか、知らないけどね」
エルリンは冷ややかな目で応えた。
「言っとくわ、前向きにここで暮らすなら、自由にしてもらって構わない、だけど厄介事を起こすなら容赦なく排除する、それが嫌なら、しっかり元部下を纏めなさい」
エルリンがモリスを睨みつける。
「わ、わかっている」
モリスが怯えながら返答する。
「こんなこと、私が言うことじゃないんだけど・・・」
「はい?」
モリスが不思議そうな顔で返事をする。
「あなた達は、立派だった、シュトラーダにこんな手強い部隊がいるなんて、思ってもみなかった」
エルリンなりの精一杯の敬意を込めて言った。
「はは、まさか、敵将にこんな形で褒められるとはな・・・ピーハインならなんて言うかな、フフ」
モリスは失笑した。
「ピーハイン・・・彼は、すごく強かったわ、危なかった」
「・・・才媛の魔導師と呼ばれる魔法使いが現れなければ、あいつがランディル希望と呼ばれていたかもしれない存在だった」
「そんな戦士が、捨て駒扱いなんて・・・」
エルリンは眉をひそめた。
「それが、今のシュトラーダだ、生きている限り戦わされる、だから帰りたくない兵士がこんなにもいる」
モリスは唇を噛みしめる。
ーーーシャロン、あなたも嫌になったのね・・・




