こだわり
2人のエルフの少女が花畑で遊んでいる。
「エルリン!これあげる!」
ミルトリアがエルリンの頭に花冠を被せる。
「うわぁ!綺麗!ミルトリアはすごいね!」
エルリンは満面の笑みを浮かべる。
2人のエルフの少女が木剣で打ち合いをしている。
「エルリンは大振りだなぁ、私達はエルフなんだよ」
ミルトリアがエルリンの木剣を難なく捌く。
「だって!大きい武器の方が、強くてカッコいいもん!」
エルリンが大きな木剣を力任せに振り回す。
2人の成年したエルフの女性が、切り株に座って話をしている。
「ええ!?ライアールと結婚!」
エルリンは目一杯の驚きを見せる。
「う、うん来月、式を挙げる」
ミルトリアは照れながら言った。
「ライアールの家は医者だし、この村では繁盛してるから、玉の輿だね!」
エルリンが茶化すように言う。
「エルリンは能天気だね・・・あのね、エルリン、私、結婚したら、ライアールと一緒に村を出るの」
ミルトリアが言いにくそうな表情で話す。
「え?・・・あ、まあ、そうだよね、ランドールはその、良くないしね」
エルリンが淋しそうに呟く。
ーーーミルトリア、淋しいけど、幸せになってね。
みんな、離れて行くのね、ミルトリア、ロゼッタ・・・。
エルリンは朝食の美味しそうな匂いで目を覚ました。
朝、人間牧場の管理棟。
エルリンがお尻を掻き、アクビをしながら、食堂にやって来る。
「おはようございます、リン・・・何ですか、だらしないですよ」
ファフナロッタが食事の用意をしながら、エルリンの態度を注意する。
「体中が痛くて・・・うわぁ、美味しそう!」
エルリンは肩を押さえながら椅子に座る。
「アストリッドとアンスは?」
エルリンは料理をつまみ食いしながら訊ねる。
「あ!リン、駄目ですよ!・・・捕虜が増えて忙しいんです、リンも早く用意して下さい」
「そうだったわね、早く食べないと」
「それと、レミーはどう?」
「レミー様は・・・自室に籠りっきりです、ワインをお持ちしたのですが、返事もしてくれません」
ファフナロッタがスープをエルリンに差し出す。
「そう・・・あのレミーが・・・」
「仕事前に、リンも一度様子を見に行ってもらえませんか?」
「わかったわ」
エルリンはものすごい早さで食事を平らげた。
「リン、体に悪いですよ」
ヴァンパイア城、レミー自室前。
コンコン!
エルリンはレミーの自室の扉をノックする。
「レミー、起きてる?」
しばらく待ったが返事が返って来ない。
ーーー辛いのね、時間が必要かしら
「ラファエラ様」
廊下を歩いて来たキュルスが、エルリンに声をかける。
「ああ、久しぶりね、キュルス」
エルリンがキュルスに手を上げて挨拶する。
「少し、話せますか?」
「え、ええ」
2人は食堂でお茶を飲みながら話をすることになった。
「ペコルニアさんが死んだと聞きました」
キュルスが神妙な面持ち話を始める。
「ええ、残念だわ」
エルリンは伏し目がちに応える。
「ペコルニアさんはレミー様の最初の下僕なんです、今でこそ、私やファフナロッタさんがいますが、それまではずっとお二人で旅をされてました」
「旧知の仲だったのね」
「それだけでなく、共に苦労もされています、ヴァンパイアはどこに行っても討伐対象ですから」
「・・・そう、ね」
エルリンが紅茶を一口飲む。
「レミー様、いつもあんな感じてすが、仲間と認めた相手にはとてもお優しい方なんです、これは内緒ですが、ラファエラ様のこともいつも心配なさってますよ」
「ぶっ!・・・ええ!?」
エルリンは吹き出しそうなところを必死でこらえた。
「ランディルの希望、シャロン・ミリー、ずっとお気になさっているのでしょう?」
キュルスがほくそ笑む。
「・・・・」
エルリンは何も言えなかった。
「レミー様の命令で、シャロン・ミリーの事を調べていました」
「それで昨日は居なかったのね」
エルリンが驚いて、少し声が大きくなる。
「本来、あなたに直接お話出来ませんが、状況が状況なだけに、お話します」
「シャロン・ミリーは生きています、今、ブルディナ地方にいるようです」
「・・・ありがとう、キュルス、本当にありがとう、それが聞けて嬉しい」
「レミー様にも言ってあげて下さいね」
「ええ!」
エルリンは首を縦に振る。
「ラファエラ様は、シャロン・ミリーに会いたいのですか?」
キュルスがエルリンを見つめる。
「多分・・・そうね」
エルリンは窓の外を見ながら、遠い目をした。
「あなたにとって、大切な人なのですね・・・でも、それはこの国を離れてでもしたいことなんですか?」
キュルスがエルリンを睨みつける。
「・・・ごめん、どうしても、ケリをつけないといけない気がするの」
「・・・わかりました」
そう言うと、キュルスは食堂を出ていった。
「キュルスはおしゃべりですわね」
レミーが食堂の奥にある厨房から出てきた。
「レミー、あ、その、気分はどう?」
エルリンはとっさに言葉を選んで絞り出した。
「ゴリラが私に気を使うんじゃありませんわ」
レミーはテーブルにワインとグラスを2つ置くと、椅子に腰掛けた。
「あ、あの、ペコルニアの事、本当に残念だったわ、私の力が至らないばかりに」
「あなたのせいではありませんわ、私が人間をナメてかかったのが原因ですわ」
レミーはエルリンのグラスに、ワインを注いだ。
「そんな事より、あなた、どうしますの?ランドールの希望を追いかけますの?」
レミーは自分のグラスにも、ワインを注ぎながら言った。
「ここに居たい気持ちもあるけれど、これは私のこだわりなの・・・」
「・・・あなた、死ぬ気ですの?」
レミーがワインを一口飲むと、エルリンを睨みつけた。
「・・・シャロンの母親を、守れなかったの」
エルリンはワイングラスを持ち上げて、グラスを見つめていた。
「それがどうしましたの?」
「え?」
「・・・まあ、いいですわ、あなたの好きになさいな、私は止めませんわ、ゴリラが居なくなってせいせいするくらいですわ」
レミーはワインの瓶を持って立ち上がり、食堂を出ていった。
ーーーごめんね、レミー・・・




