杖になってやる
エルリンが森の開けた場所に、ギフトヴィントミューレを杖のようにして一人で立っている。
「トラップの調整は完璧だ」
アンスがどこからともなく現れて、エルリンに話しかける。
「ありがとう、アンス、心強いわ」
エルリンがアンスに笑顔を向ける。
「い、いや、なに、密偵と罠設置は、得意分野だからな」
アンスが赤面しながら応える。
「・・・・みんな、無事かしら」
エルリンが呟く。
「お前は自分の心配してろ!」
アンスがエルリンを叱咤する。
「そう、そうよね・・・」
エルリンが遠い目をして頷く。
「・・・ここだけの話で聞くけど、お前さあ、何でそんなに生き急いでるんだ?」
アンスはエルリンを見ずに話をする。
「・・・そう見える?」
「ああ」
森の静けさと、木々のざわめきだけが流れる。
「ちょっと、疲れたのかも・・・失うことに・・」
エルリンは目を瞑り少し上を向く。
風が美しい金色の髪を撫でていた。
「長寿だから、余計に背負い込んでるってか?・・・まあ、確かに、辛いよな・・・」
そう言うと、アンスはチラリとエルリンを見た。
ーーー普通に生まれてりゃ、男共も放っておかねぇくらい美人だし、幸せになれたかもな・・・
「そうだなぁ、これからは俺が杖になってやる!お前がやりたい事は、俺がいくらでも手伝ってやる!安心しろ、チビだけど腕には自信あるぜ!」
そう言ってアンスは大笑いする。
「ほんと?」
エルリンが真顔で目を潤ませてアンスを見る。
「あ、ああ、大マジだ」
少し照れくさそうに頭をかく。
「だから、一人で全部抱え込むな。」
「あ〜!何か少し気が紛れたわ!ありがとう、アンス!」
エルリンが満面の笑みを浮かべて、アンスを見つめる。
「よ、よし!ちょっくら、敵の様子でも見てくるか!」
アンスは音を立てずに走り出す。
「気をつけて!」
エルリンがアンスの背中に声をかけると、アンスは右手を一瞬上げて合図し、森の中に消えていった。
ーーーシャロン、あなたは来ているの?
それからしばらくすると、アンスから通信が入る。
「リン、来るよ」
「わかった」
エルリンはそう返すと、無機質な白い仮面を付けた。




