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疾風の再来

エルリンが森を駆け抜ける。

「予想どおり、敵は三方に分かれたわ、ファフの部隊は右翼、アストリッド隊は左翼、私は中央を引き受ける」


「ファフナロッタ了解!右翼を足止めします」


「キャハハ!ボッコボコにしてやるわ〜!」


「アトリ、あなたの任務も足止めですよ」

ファフナロッタがアストリッドを注意する。


「ちぇ〜!」

アストリッドは口を尖らせて言った。


「リン、中央の戦力は、実質あなた一人です、気をつけて」

ファフナロッタがエルリンの身を案じる。


「ありがとう、ファフ・・・」

エルリンはギフトヴィントミューレを強く握りしめる。


ーーー行くわよ!我が家を守るために!シャロン、来るなら来なさい!



シュトラーダ軍、右翼部隊。

「グリーク中隊長、あれを・・・」

「ん?」

グリークは全軍停止の合図を送る。


「まさか・・・ヴァンパイア軍にあれ程の戦力があるとは」

グリークが驚きを隠せない様子を見せた。


「ざっと700・・・」

副長が静かに報告する。


兵士達に緊張が走る。


正面の木々の隙間には、待ち構えている数百の民兵。


その先頭に立つ赤い髪のプロトヴァンパイア。


「あれは、ヴァンパイアか?昼間だぞ!いや、そんなはずは・・・弓兵隊、射撃用意!」

グリークが弓兵に合図を送る。


ファフナロッタが手を挙げて合図をする。


「撃てーー!」


次の瞬間、周囲が煙に包まれて、ヴァンパイア軍が見えなくなった。


「なんだと!?全軍、警戒態勢のまま待機!」

グリークが大声で指示する。


「しかし中隊長、このままでは日暮れまでに鉱山に辿り着けません、奴らはそれが狙いでは!?」


「ぐぅ~!ならば、警戒態勢を維持しつつ、微速前進!」


シュトラーダ軍が煙に包まれたヴァンパイア軍を警戒しながら、ゆっくりと前に出る。


「!魔力反応、魔法が来るぞ!」

前衛の兵士が叫ぶ。


「散開、回避行動!」

グリークが大声で指示を飛ばす。


煙の向こうから雷撃が走る。


数名の兵士が感電し、煙を上げて倒れる。


続いて矢弾が数発飛んでくる。


「手数が少ない・・・なんだ?」

グリークが反撃の少なさに違和感を持つ。


ーー今のは、まさか幻影の魔法?それに目眩まし、やはりただの足止めか、ならば!


「槍隊前へ、突貫する!恐れるな、先程の兵力は幻影だ!進めぇ!」

グリークが突撃を命令すると、兵士が一斉に走り出て突撃する。


「うおおおおおお!」

咆哮を上げて、シュトラーダ軍が突き進む。


兵士達が煙を抜けた瞬間、足場が無くなり、落下する。

「うわぁぁ!」

悲鳴を上げながら落とし穴に落ちていく兵士達。


「モートン、ヤネット、初陣でこれは過酷ですが、私が教えたことを思い出して下さい、行きますよ!」

ファフナロッタが茂みに隠れて、人間のモートンとヤネットに檄を飛ばす。


「中隊長!落とし穴です!」

ギリギリで落とし穴を回避した兵士が叫ぶ。


「なにぃ!そんな古典的なトラップに!」


落とし穴から聞こえる悲鳴が、森に響く。


「陣形を乱すな!警戒態勢を維持!急襲に注意しろ!」

グリークが部隊を必死で立て直そうと叱咤する。


「中隊長!後方より敵影3体!・・ぎゃあああ!」


ファフナロッタの両手ダガーが、血飛沫と共に華麗に舞う。


ーーーリン、あなたの築き上げたこの集落、この命に代えてでも!


「ファフナロッタさんにいいトコ見せないとな!」

モートンがバンドアックスを両手に、兵士達に向かっていく。

「モートン!ファフナロッタさんはあんたには分不相応よ!はぁぁぁ!」

ヤネットが両手のアイアンクローで兵士に挑んでいく。


「モートン!ヤネット!お願い!」

ファフナロッタが2人に指示を出す。


「やるぞ!ヤネット!」


「ええ!モートン!」


2人は背中を合わせると、そこからまるで息の合ったダンスを踊るかのように、回りながら敵をなぎ倒していく。


「モートン、ヤネット、100点満点です!」

ファフナロッタが、2人の切り開いた道を、風のように突き進む。


ーーー目標は、指揮官!


「中隊長を守れ!」

副長が叫ぶ。


「その首、もらい受けます・・・」

ファフナロッタが華麗に宙を舞いながら、横回転する。


「がはぁ!」

ファフナロッタの赤い魔法のダガーが、副長の右手首をきり落とすと、回し蹴りで副長を蹴り飛ばす。


「おのれぇ!」

グリークがバスタードソードで、ファフナロッタに切りかかる。


ファフナロッタが一瞬だけ視線を逸らす。


モートンかヤネットがグリークを庇おうとする兵士を遮りながら、バスタードソードの軌道を逸らす。


その隙をついて、ファフナロッタのダガーが、グリークの額に突き刺さる。


「あが・・・」

断末魔を上げて、グリークが倒れる。


「中隊長!」

兵士達が悲鳴に似た声を上げる。


「撤退!」

ファフナロッタがモートンとヤネットに号令をかける。


シュトラーダ軍は大混乱に陥り、エルリンの作戦どおり足止めされる事になった。


戦場から撤退したファフナロッタ達は、一旦茂みに身を隠した。


「とりあえず、これでしばらく足止めが出来たけど、次が大変ですね、2人とも、気を抜かないで・・・それと、初陣とは思えない働きでしたよ、2人とも」

ファフナロッタは鋭い目つきのまま、小さな声で言った。


「どこまでもついていきます、ファフナロッタさん」

モートンがデレデレした態度で返事をする。


「うう〜、ファフナロッタさんに褒められるなんて光栄ですぅ〜」

ヤネットが涙を流して喜ぶ。


ーーーリン、気をつけて、敵は間抜けじゃない。

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