守りたいもの
「以上が敵の戦力です」
人間牧場の管理棟にある会議室で、ファフナロッタが偵察成果の報告を行なった。
レミーは目を瞑って報告を聞いていた。
「兵力は7000程、到着は明日の昼間・・・」
レミーはしばらく考えると、目を大きく見開いて言った。
「楽勝ですわね、死体の山にして、送り返してやりましょう」
「レミー、日中ではブラッドナイトは外に出られないし、ブラッドサッカーも弱体化するわ、プロトヴァンパイアも数名しか活動出来ない、それで勝てるの?」
エルリンは自信満々のレミーに訊ねた。
「そうですわね、まともに戦えるのは10名程度ですわ」
「キャハハ!楽しそうだね、リン」
アストリッドが嬉しそうに、弾んだ声で言った。
「楽勝という訳には行きませんが、何とかなると思います」
ファフナロッタは何か思い当たる節があるようで、レミーの意見にある程度賛成の意向を示した。
「まず、森の地形を活かしての敵の分散、同時にトラップも設置、出来るだけ敵の進行を遅らせられますわ」
レミーが言うと、ファフナロッタが後を続ける。
「分散した敵戦力を少しづつ減らしながら時間を稼ぎます」
「何とか日暮れまで粘れば、我々の勝ちですわ」
レミーが説明の最後を締める。
「予想では、5時間程です」
ファフナロッタが補足するする。
「5時間も、10人足らずで耐えられると?」
アンスが険しい表情で意見する。
「例の守備隊を投入すれば、明日の作戦が楽になります」
ファフナロッタが追加の案を出す。
「これから守備隊の準備と、トラップの仕込みを行いますわ」
レミーが目を細めて、強い口調で言うと、言葉を続けた。
「今回の作戦には、シュナイゼル様も協力して下さる事になってますわ」
レミーの言葉に会議室の全員がざわつく。
「6元始が……動くの?」
エルリンは思わず息を呑んだ。
ーーーそれほどまでに深刻な状況なのね
「問題は・・・」
レミーが騒然とした空気を引き締める。
「ランディルの希望ですわ、奴が出て来たら、戦況がひっくり返りますわ」
会議室に緊張が走る。
「大丈夫です、森の中では範囲魔法の効果も半減し、少人数での急襲には対応し難いと思います」
ファフナロッタが緊張を和らげる。
ーーーシャロン、出てくるなら、私はあなたと・・・。
エルリンが思い詰めた表情で考える。
「・・・」
アストリッドとレミーが、エルリンの表情を伺う。
「ラファエラ、ランディルの希望が気がかりなのはわかりますが、ここを守ることを最優先にして下さいまし」
レミーがエルリンを睨みつける。
「・・・もちろん、それが最優先よ」
エルリンは苦笑しながら返事をした。
ーーーシャロン、私はあなたに殺されても構わない、だけど、守りたい物もあるの・・・。




