涙の向こう
「リン・・・・リンってば!」
アストリッドが大声でエルリンを呼ぶ。
「あ、ごめん、何?アストリッド」
「最近のリンは変だよ!ずっとボーッとしててさ!相手してくれないと、つまんないぃぃ!!」
アストリッドは地団駄を踏んだ。
「ごめん、本当にごめん、後で一緒にクッキー作ろうか」
エルリンは何とかアストリッドの機嫌を取ろうとする。
「クッキー作る!でも、何で今日もシュトラーダの戦争見てるだけなの?」
「ごめん、アストリッド・・・どうしてもこの目で確かめなきゃいけないことがあるの・・」
エルリンが険しい表情で語る。
アストリッドは空気を察して、それ以上は聞かずに黙っている。
ーーーリン、涙流してないけど、ずっと泣いてる、でも、あたし、何もできない・・・。
「ん?」
エルリンが何かに気付いた。
「アストリッド、ちょっと付き合って!」
「アハ!うん!リンに付き合う!」
アストリッドは満面の笑みを浮べながら、エルリンの後を付いていく。
魔物軍の一部が、何かを追いかけている。
追いかけられているのは・・・ルホルバンの男。
元妖精が人族の仲間入りをした種族である。
人間の半分くらいの身長で、とても素早く、姿を消す能力も持っている。
ルホルバンが森に逃げ込んだ瞬間、エルリンが茂みの中から叫ぶ。
「こっちだ!」
ルホルバンは警戒して、エルリンを睨みつける。
「ケガしてるわね、こっちに来て」
エルリンが優しく声をかける。
その後ろには魔物が追いかけてくる。
「アストリッド!あいつらをお願い!」
「キャハハ!任せて!リン!」
アストリッドが魔物と蹴散らしていく。
ルホルバンにエルリンは回復魔法をかける。
「これで大丈夫・・・」
エルリンが笑顔で言った。
「・・・・お前ら、何者だ?」
ルホルバンがエルリンに訊ねる。
「私達はヴァンパイア軍よ」
「なに!?」
ルホルバンは腰のダガーを抜いて、威嚇する。
「行くところが無いなら、一緒に来ない?」
「何が目的だ!」
「・・・私も、元シュトラーダ軍よ」
「・・・」
「私はリン、リン・ファー」
エルリンは手を差し出す。
「フン!どのみち、あんたが救った命なんだ・・・・好きにしろ」
「名前、聞いてもいい?」
「俺は・・・アンスだ」
「そう、アンス、よろしくね」
エルリンはアンスと握手をした。
ーーー今日も会えなかった・・・シャロン。




