ランディルの希望
ヴァンパイア城、ラファエラ私室。
コンコン!
「はい」
エルリンが本を読んでいるところ、誰かが訪ねて来た。
ガチャ・・・
扉を空けると、そこにはレミーが立っていた。
「お邪魔しますわよ」
レミーがズケズケとエルリンの部屋に入る。
「どうしたの?レミー」
「調べましたわよ・・・まあ、調べたのはキュルスですけど」
「ええ!・・・何を?」
エルリンは身に覚え全く無かった。
「な!その首、引っこ抜きますわよ!例の魔法使いですわ!」
「ああ!シュトラーダの魔法使いの件!調べてくれたのですか!?ありがとうございます!」
「キュルスにも礼を言っておいて下さいまし!」
レミーはエルリンの部屋にあるワインを、勝手にグラスに注いだ。
「それで、何者なんですか?その魔法使いは?」
「シュトラーダでは、才媛の魔導師と呼ばれていた天才魔法使いですわ」
レミーはワインを一口飲んだ。
ーーーうっ!
「ラファエラ!もっとマシなワインはありませんの!」
「あ、ごめんなさい、持ってこようか?」
「・・・結構ですわ、続けますわよ」
口に合わないワインを、渋々飲みながら話を続ける。
「で、今の二つ名が、ランディルの希望・・・魔物軍からは赤いブリザードと呼ばれてますわ」
エルリンは頭が真っ白になった。
ーーーランディルの・・・希望・・・?
「ランディルの・・・希望・・・」
エルリンが放心状態になっているのを見て、レミーが不思議そうに顔を覗き込む。
「死んでませんわよね?」
目の前にレミーの顔が現れて、エルリンは正気に戻る。
「はっ!ごめんなさい、続きをお願い」
「国王がその名を与えるほどの魔法使い、ということみたいですわね、何でも、魔物の集落を一発の氷魔法で皆殺しにしたとか」
「確かに、あの時の魔力は人族では有り得ない」
「ファフナロッタから聞きましたが、私に匹敵するとか・・・」
エルリンは黙って首を縦に振った。
「その魔法使いについて、他に何か情報はある?」
「ああ〜、確か人間の女で名前は・・・何でしたかしら、確か・・・シャロンとか」
「え!?今、なんて・・・」
エルリンの目つきがさっきとは明らかに違った。
「シャロンと言いましたわ」
ーーーシャロン・・・いや、同名なだけかも
「・・・フルネームは、わかります?」
エルリンはすがるような目でレミーを見つめる。
「気持ち悪いですわ、何ですので、えっと・・・確か、シャロン・マリー、いやモリー、ミリー、そう!シャロン・ミリーですわ!」
エルリンは目眩のような感覚に見舞われた。
「ウソ・・・生きて・・たの」
「あなた、さっきから変ですわよ、糞でも漏らしましたの?」
レミーは訳が分からなかった。
ちょっと言い過ぎたと思ったレミーは、取り繕うように続けた。
「・・・何があったのか話して・・・ん?え?ちょっと、泣いてますの!?・・・私、そんなにキツく言った覚えは・・・」
「生きてたんだ・・・よかった」
「はあ?」
レミーが珍しくパニックになる。
ーーー大魔導師の夢、叶ったんだね、シャロン。




