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置物
あたしは部屋の隅っこに置かれた座布団の上で、黒井サンジさんの背中を見ている。
サンジさんはずっと執筆中だ。
暇だったので、その背中に話しかけた。
「あのぅ……」
「置物が喋るな」
後ろ姿のまま、厳しい声が飛んできた。
「気が散る」
だんだん自分の格好が恥ずかしくなってきた。
全裸にピンク色のリボンだけというのはじつは恥ずかしい格好だったのだと、今さらながらに気づいた。
「帰らせてください」
筆が止まったのを見て、あたしはサンジさんにまた話しかけた。
「この邪魔者めが」
「邪魔ならいないほうがいいでしょ?」
「そうはいかん」
サンジさんがこっちを振り返った。楽しそうな顔をしていた。
「君は大切なファンからの贈り物だ。粗末にしては罰があたる」
「だからそれは……」
「私の役に立ってくれないか」
「役?」
「ああ」
サンジさんの顔が笑いで歪むのをあたしは見た。
「気分転換に良いことをしよう」
そう言うと着ていた作務衣をするすると脱ぎはじめた。




