005「アルキメド王立学院高等部」
――アルキメド王立学院
アルキメド王国の現国王ジュリアーノ・アルキメドが首都セントラルに設立した学院でこの国の子供たちは六歳から初等部に入り、中等部、高等部へと進学するのが一般的である。
さて、ここで前にも少し話したが、もう少し詳しくこの世界についての話をしよう。
俺が転生したこの異世界は『フエルユーゴ』という星で、『人間族』『エルフ族』『獣人族』『魔族』と四種類の種族がいるが、実はその中で『人間』がこの大陸の四割を支配しており、次いで支配領域が広い順に『獣人族』で三割、『魔族』が二割、『エルフ族』が一割といったところだ。
二歳の頃、この国の歴史を勉強していたとき、ふと単純な疑問として『物理的、魔法的な力』で考えると人間よりも他の種族のほうが圧倒していたはずなのに、どうして大陸の支配領域を人間が多く支配できたのだろう……と疑問に湧いたことがあった。
すると、師匠がそのことについてこう言っていた。
「単純な物理的・魔法的な力で言えば人間は四種族の中で『一番ひ弱な存在』じゃったが、ひとつ……彼らにはない武器を持っていた。それは『知恵』に優れていたことじゃ。人間は他種族に比べ圧倒的に劣る物理、魔法的な力を卓越した知恵を持って『魔道具』というものを完成させた。これは、人間の知恵が無ければ生まれなかったものじゃ。これにより人間は肉体強化、魔法強化を可能にし、他の種族と同等以上の力を手に入れることとなり、現在の支配領域を獲得したのじゃ……」
現在、フエルユーゴの世界で四割を占める支配領域を持つ俺たち人間族の国の名が『アルキメド王国』であり、王国内には複数の『州国家』が存在する。イメージ的には地球でいうところの『アメリカの州』みたいなものだ。ちなみに俺が住んでいるのはアルキメド王国の辺境地の州国家『アルキメド20』である。州の名前は『アルキメド』という国名の後ろに数字を入れた名前となっている。ちなみにこの数字には意味があり、アルキメド王国の首都から離れているほど数字は大きくなる。ちなみに州国家は全部で20……つまり、父さんが領主として任されているこの『アルキメド20』は首都から一番遠く離れた州……辺境地の州ということだ。まあ、簡単に言うとド田舎ということだ。
あと世界情勢としては、俺たち人間族と一番の友好関係にあるのはエルフ族で、後は一部の獣人と魔族とは仲が良かったりもする……がしかし、基本的に『獣人』『魔族』とは敵対関係にある。また国内情勢においては、首都セントラルに居を構える『上級・下級貴族』と州国家の領主などの一部の者たちがアルキメド王国の王族に対し不満を抱いていることもあり、国内においてもいろいろ不安定な部分も多く、水面下で様々な陰謀が渦巻いている。
こういった世界や国内の情勢については俺は師匠の元でいろいろと教わった。まあ、それもこれも俺が持つ『力』が知られると利用される恐れがあるという話の延長線上でのことだったが。
まあ、そんな『大人の事情』のことを考えると面倒くさく感じるがそれ以上に、俺は『やっと同い年の子たちと会える』という学院生活が始まることへの期待感やワクワク感でいっぱいだった。
――四月 春。
アルキメド王立学院高等部の入学式。
「すご~い、やっぱ大きいね! 高等部は」
「うん、そうだね。私、何だか迷っちゃいそう……」
「あはは、クレアならマジあり得るから気を付けなよ」
「そ、それ、どういう意味よっ!」
「そのままの意味ですよ~」
「う~……リリカ、ひどい」
今日は入学式ということもあって各地から多くの新一年生やその父母が校舎に集まっていることもあり、あっちこっちでワイワイと賑やかだった。
ちなみに、この世界の暦や季節、時間などは日本と同じらしく、学校の入学もこれまた日本と同じで春からとなっている……まあ、国によって季節は異なるけどね。
こういったところはもしかしたら老人の計らいなのかもしれないが、まあ、そのおかげで季節感や時間、物の価値はすんなり理解できたのはありがたい。
「いよいよだな……ダイ」
「これまで学院に行かせてあげられなくてごめんね、ダイ。学院生活楽しんでね」
「ありがとう、父さん、母さん」
俺も皆と同じく、両親が入学式に顔を出してくれていた。
「ダイ。くれぐれも目立つんじゃないぞ」
「大丈夫だって! 俺は厄介事からは離れるようにするから」
「お願いよ……ダイ」
「じゃあ、そろそろ式に行くよ」
「ああ、わかった。しっかりな」
「しっかりね、ダイ」
「じゃあ、行ってくる!」
ダイは両親と別れると颯爽と他の新入生に交じって式典が開かれる体育館へと向かった。
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「新入生諸君っ! アルキメド王立学院高等部へようこそ。君たちは国の宝だ!」
この学院の学院長であり、アルキメド王立学院創立者にしてこの国の第11代国王『ジュリアーノ・アルキメド』の言葉で入学式が始まった。
アルキメド王国第11代国王ジュリアーノ・アルキメドは身長二メートルあまりある大柄な人物で、性格もその体躯と似たように豪快だった。
「私はこの学院を心より愛している。現在の平和はこの学院の卒業生たちの活躍により築かれている。そして、次の平和を担うのは君たちだ! この学院で大いに勉学と魔法・剣術・武術に励み、成長した君たちを見せてくれ。以上っ!」
わああっ!! うぉぉぉぉお~~~!!
ジュリアーノ国王の力強い言葉に鼓舞された生徒たちは大きな喝采と歓声を送った。まさに、国民から広く支持され愛されている国王の人柄溢れる挨拶だった。
「続いて、アルキメド王立学院生徒会長ジュリコ・ウェンポートの挨拶です」
「「「「「きゃ~~! ジュリコ様~~!!」」」」」
次の挨拶をする生徒会長の名前が挙がると、その生徒会長が舞台に姿を現した途端、会場から女性の黄色い歓声が上がった。
「新入生の皆さん、入学おめでとう。私は生徒会長ジュリコ・ウェンポートです」
「「「「「ジュリコ様ーーーっ!!!」」」」」
確かに、生徒会長ジュリコ・ウェンポートのその端正な顔立ちは女性でなくとも目を引くほどだった。
「この学院での三年間はあっという間に過ぎると思います。それだけやることも身に着けることも多いからです。ですが、同時にこの学院での三年間は一生の内に一度しか味わえない時間です。だから、どうか一日一日を大事にしてください」
きゃ~~~っ!! パチパチパチパチ~~~!!
生徒会長の挨拶には女性の喝采と歓声がかなりの比率を占めていた。まあ……当然だろう。
それにしてもこの生徒会長……顔だけでなく能力も高いことが一目見てわかった。さすがは『生徒会長=学院一の実力者』ということだけはある。
「顔も実力も人気もあるなんて……そっちのほうがよっぽどチートじゃね?」
そんな少し腐った言い草を小声でした俺であったが、しかし、初めて学校に通う俺としてはそれすらも新鮮で楽しくて仕方なかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
入学式が終わった後、俺たちは自分の教室へと移動。各クラスで自己紹介が行われた。
「は、はじめまして! 私の名前はクレア・フィオーネです。これから一年間……」
クラスでは一人一人が自己紹介をしている。皆、こなれたようにサクッと挨拶しどんどんと進んでいったが、俺の中では初めてのことであり、また、一度はしてみたかった『イベント』のひとつだったので一人緊張していた。
そして、俺の順番が回ってきた。俺はこの日の為に家でずっと『自己紹介』の練習をしてきた……抜かりはないっ!
そう自分を鼓舞させ、俺は第一声を上げる。
「は、ははは、はじゅめましてぇ~~!! ボ、ボク、あ、いえ、私……あ、お、俺は、ダ、ダダダ……ダイオウガ・エスティオットと申しますっ! 初めての学校でいささか緊張しておりますが、こ、今後とも何卒、よ、よろ、よろよろ、よろしく、お、お、おなしゃすっ!!」
くすくす。
……撃沈。
かくして俺の『高等部自己紹介イベント』は無残にも大敗北を喫した。
一人、自己紹介で大失敗し落ち込む中、生徒の一人がダイを見つめていた。
「!?……は、初めての学校? ま、まさか、あの人が……」
そう言いながら、その生徒は一人考え込みながらダイをずっと見続けている。その人物とは、
「どうしたの、クレア? 何、見てるの?」
「え? あ、ううん……な、何でもないよ、リリカ」
金色の瞳と眩い水色の長い髪が男女関係なく釘付けにする美少女……クレア・フィオーネだった。




