プロローグ
メジャーリーグが30球団から32球団へと拡張及びリーグや地区が再編されてから十年の時が経った。
創設初年度からポストシーズンに進出する新たな強豪となったシャーロット・ウィナーズとは対象的に、ポートランド・ルーキーズは未だ勝ち越したシーズンが無いどころか、昨シーズンはメジャーワーストとなる30勝132敗と屈辱的な記録を樹立。
今シーズンもさらなる記録更新に期待されるチームは創設したばかりなのに早くも再建十年目を迎えた。
ルーキーズではなくルーザーズと揶揄され、マイナーリーグ、それもトリプルAではなくシングルA以下のチームがメジャーに紛れ込んでいると酷評されるのは日常茶飯時。
トレードやFAなどで有望選手は次々へと放出、選手たちも日に日にやる気を奪われていき怠慢プレーも珍しくない。
当然、ファンも愛想を尽かして逃げていき球場は常にガラガラ――それが今のルーキーズだ。
そんな中、日本から二人の救世主候補が海を渡ってくる。
一人は日本最強右腕と称され昨シーズンは先発投手として30試合に登板し、防御率は脅威の0.00という異次元の数字を叩き出した若き天才投手――勝星勝利。
もう一人は打席に立てば三振かホームランの二択しか存在しない両極端の大砲――打神三振。
どちらの選手もメジャー最弱であるルーキーズが獲得出来たのは奇跡と言っても過言ではないだろう。
特に勝星に関しては西海岸の金満球団や東の名門はもちろん全球団が獲得に乗り出すのは必定。
十年総額七億ドルは当たり前、中には十二年で十億ドル以上を提示する球団もあったが、彼が選んだのは協定で定められた最低年俸に毛が生えたような額しか提示できないルーキーズだった。
なぜ彼を正当に評価しないチームを選んだのか?
誰もが気になるその答えは至極単純だった。
――強いチームの強打者と対戦したい、どうせ勝つなら弱いチームを勝たせた方が面白いだろう?
そんな彼は不敵な笑みを浮かべて続ける。
――この俺に負けるという選択肢はない。たった1点で良い、それさえあればチームを勝利へと導いてやる。
入団会見でそんな強気の発言をしていた彼はその約一ヶ月後、メジャーデビュー戦の記念すべき初球を軽々とスタンドへと運ばれるのだった。
《用語解説&設定》
・ポストシーズン→主にPSと略される。シーズン終了後に行われるリーグ優勝をかけたトーナメント戦のこと。
・トリプルA、シングルA→マイナーリーグの階級のこと。トリプルAはメジャーの直下、シングルAはトリプルAより2つ下の階級。
・トレード→球団同士の都合によって選手同士を交換すること。
・FA→フリーエージェントの略。選手があらゆる球団と選手契約出来る権利のこと。
・防御率→投手が9イニング(9回)を投げた場合に平均して何失点するかを示す指標。先発投手がシーズンを通して投げ抜き防御率0.00、つまり自責点0というのは過去に例がない。
ポートランド・ルーキーズ→ウェストリーグ北西地区
シャーロット・ウィナーズ→イーストリーグ南地区




