探す
時間は容赦なく進んでいった。
あれから、豊島さんは目に見えて忙しくなった。
引き継ぎ資料の作成。 後任者との打ち合わせ。 本社と出向先を行き来する日も増えたらしい。
一緒に飲みに行く時間もないと八代さんが愚痴っているのを、百花ちゃん経由で聞いた。
行きや仕事帰りに偶然会うことも減った。
以前なら『今から本屋に寄ります』 『私もです』
そんなやり取りから自然と顔を合わせることがあった。
けれど最近は違う。
『今日から出向先です』 『しばらく帰りが遅くなります』
そんなメッセージが増えた。
休日も同じだった。
予定を合わせようとしても
『すみません、その日は研修です』 『まだ出向先です』
なかなか噛み合わない。
もちろん連絡が途絶えたわけではない。
以前おすすめした本の感想を送ってきてくれる。
見つけた面白い記事を共有する。 たまに他愛ない雑談もする。
スマホを開けば、そこには変わらず豊島さんがいる。
それなのに。
会えない。
それが、こんなにも落ち着かないものなのだと思い知った。
昼休み、ふと休憩室の時計を見る。
仕事帰り、駅の改札へと幾度も視線を向ける。
休日、共に過ごした所で立ち止まり辺りを見渡す。
気づけば、そこに豊島さんがいるかもしれないと探している自分がいた。
運よく会えた日は、それだけで嬉しくて。
以前と何も変わらない会話をして。
以前と何も変わらない顔をして。
別れた後に、ほんの少し足取りが重くなる。
残された時間は、もう多くない。




