第58話 没落貴族の昔話~釣った人魚に餌はやらん~
早朝、ロックは海岸に来ていた。
「おーい、来たぜ。」
(あっ、ロック!)
アリエラはロックに近づこうとするが砂に尾びれを取られ転びそうになる。
「おっと」
ロックはアリエラの肩を掴み、彼女を支えた。
「あぶねぇ。いくら地面が砂とはいえ、転ぶと危ないからな。」
(う、うん)
アリエラはロックの顔をまじまじと凝視した。
「ん、俺の顔になんかついてるか?」
(な、なんでもない。)
アリエラは顔を背けた。
「フーン、そっか。じゃぁ、これから何して遊ぼうか?」
ロックは相変わらずの鈍感さでアリエラに接する。
「水切り・・・をやるには石が無いし、かくれんぼ・・・をやるにも隠れる場所が少ない、鬼ごっこ・・・は明らかにアリエラが不利だ。うーん」
(ロックの話・・・、ロックのお話が聞きたい。)
アリエラは目を輝かせる。
「いいのか?俺の話はつまんねぇぞ。それに、別に面白い話なんて、魔犬に尻噛まれながら川に飛び込んだ話しか・・・。」
(昔のお話、ロックの過去の話聞かせて。私も話すからさ。)
アリエラは前のめりになってロックに詰め寄る。
「まぁ、アリエラがそれでいいって言うんだったら・・・コホン」
ロックはわざとらしく咳ばらいをする。
「えぇっと、どこから話せばいいのかな?」
(どこからでもいいよ。)
アリエラは岩に寄りかかり、ロックの話に耳を傾ける。
「ん、じゃぁ、そうだな、俺は一年前まで王国で一番の貴族、アーサー家の次男だったんだ。当時は、それは、それは大きな屋敷に、たくさんの召使い、豪華な食事付きの何不自由ない生活を俺達は送っていたんだ。」
(へ~、意外!)
「だろうな、今の俺からは想像できないだろうよ。っで、その日常が崩れ去ったのが今から一年前、俺達の一族に関して新聞社がとある記事を載せた。」
「『アーサー家が世界で流行っている致死率100%の伝染病、石化病の病源であった。』ってな。もちろん、デマだ。しかし、俺達の一族は遺伝子的な特性によって体を自分の意志で石化させることができる。そのことを根拠として、俺達の一族は、他の貴族や民衆から反感を買い、今や俺と俺の兄貴は王国を追放され、王国に残された妹もあっちでひどい扱いを受けている。」
(じゃぁ、ロックは王国に戻りたいの?)
「いや、戻りたいわけじゃない。別に、俺は今の生活に不満はねぇ。ただ、・・・」
ロックは空を見上げる。
「妹が病気なんだ。」
アリエラは砂に目をやる。
(そう、なんだ・・・)
「今すぐ、命に関わる病気って訳じゃねぇみたいだが、医者曰く、十年生きられたらラッキーらしい。」
(妹さん、可哀そう)
「そうだな。だから、俺は俺達をはめた黒幕に復讐するためにここで牙を研いでいるって訳だよ。」
(それが、ロックがこの国に居る理由?)
「まぁな、そんなとこだ。」
「さっ、俺の昔話はこれでおしまいだ。次はアリエラの番だぜ。」
(うん、わかった。私のママとパパは人間に殺されたの)
かなり強烈な一言から彼女の過去が語られる。
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