第4話 アリス、決死の逃亡 ~一寸先は闇でも、闇雲に進む~
アリスは服の袖の上から縄で腕を後ろに縛られ、口を猿轡で声を封じられ、ギルドから少し離れた仄暗い建物の廊下を後ろを歩く三人の男女に促されるがまま歩いていた。
(後ろにいる彼らが今回の討伐対象ね。まぁ、このザマじゃ、私の方が討伐されても、おかしくないけど。)
アリスは自嘲気味に笑った。
「さっき、魔法の杖をなくして、本格的な戦闘はできないからさ。この子のことは私に任せて、あんた達はもう一人の厄介そうな方を頼むよ。」
そういうと、パーティの一人のリーダーと思しき赤毛で長髪の女魔術師が、アリスを狭く、薄暗い部屋に押し込んだ。
部屋は、どうやら尋問部屋らしく、ドアから最も離れた部屋の角には、地面に固定された薄汚れた三角木馬が圧倒的な存在感を放っていた。
(ウェ、この部屋臭い。)
アリスは鼻をつまもうとしたが、腕を後ろで縛られているせいで、できなかった。
(この縄、一本一本は中指ぐらい細いのに、何重にも巻いているからか、結構きついわね。)
「そんな、顔しても縄は外さないわよ。」
(あれ、顔に出てた?)
アリスは間抜けな顔すると、女は鼻で笑い、乱暴に猿轡をとった。
「でも、これだけは外してあげるわ。魔法を使おうとしたら、直ぐ戻すけどね。」
(や、優しい!)
「さぁ、吐いてもらうわ、あんたと一緒にいた男の弱点とギルドがどのぐらい情報をつかんでいるかをね。もし、言わなかったら、どうなるか分かるわよね。」
そういうと、女は洗面器にたっぷりの水をアリスの前に突き付けた。
(やっぱり、優しくない!)
「あの男の弱点は?どんな人なの?」
「分かんない、あの人のこと全然。」
「誤魔化しても、無駄よ。」
そういって、女はアリスの髪を掴み、顔面を冷たい水に押し付けた。
(そういえば、思い返してみれば、確かに私ロックさんの弱点とか、好きなものとか、どんな人なのかとか、全然知らないや。えっ、よく考えたら、知りもしない人が、私と王都に行ってくれるって、私信じているの? 本当にそれでいいの? そんなんで、これからやっていけるの?)
水中で、意識が遠のき始める
(違う、違う。)
「もういいわ、用済みよ。」
女はより強く顔を押さえつけた。
(彼は少なくとも、最初は口約束だったパーティ加入をちゃんとやってくれた。加入前に逃げたって、よかったのに。逃げなかった。だから、私も彼を信じることから逃げない。そして、最後まで、足掻く。)
アリスは水中で途切れそうな意識の中、歯を食いしばり、女の脛を蹴り、彼女がひるんだ衝撃で洗面器は倒れた。
(これはチャンス)
アリスはドアに駆け寄り、手探りで後ろに手を回したまま、ドアノブをつかんだ。
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