第3話 Aランクパーティ狩り、開始~虎の威を借る狐狩り~
「パーティの討伐クエスト自体は珍しくないが、ここまで格上の討伐を、それもFランクで受けられるなんて・・・」
ロックは羊皮紙をなめまわすようにジロジロと眺めた。
「このAランクパーティ、一体何をやらかしたんです?」
アリスの問いに、受付嬢ミリナは困惑を隠さず、声を潜めた。
「・・・実は、ギルドの内部情報を外部に流し、報酬と引き換えにクエストを代行させていた不正が発覚したんです。現在捜査中ですが、ギルド長の見立てでは『連中は実戦経験が浅い。名ばかりのAランクなら、Fランクでも数で押せばいけるだろう』とのことですが・・・」
ミリナは納得のいかない表情で、二人を真っ直ぐに見据えた。
「私は現場に長くいます。強い者とそうでない者の違いはわかります。彼らは間違いなくBランク相当の実力はあります。お二人には、決してお勧めできません」
「やります」
アリスの声には、迷いがなかった。
「おい、正気か!?」
隣でロックがビクンと跳ねる。
「はい、正気ですよ」
「ふざけんな! 身の丈に合わねぇクエストは死ぬだけだぞ!」
「成功すれば、ボーナス込みで一気にDランクまで昇格できる。私の師匠には時間がないんです。のんびりイチゴを摘んでいる暇なんてない!」
アリスの瞳に宿る、氷のように冷たく、それでいて燃え盛るような決意。
ロックは毒気を抜かれたように頭を掻いた。
「……クッソ。言った以上、お前にも死ぬ気で頑張ってもらうからな」
「もちろんです」
二人は受注申請を済ませ、出店が立ち並ぶ賑やかな街へと繰り出した。
「とは言ってもよ、西の国は広いんだぜ。都合よく見つかるわけ……」
「ロックさん」
アリスの足が止まった。
賑わいの中、反対側から歩いてくる三人組。
(青いイヤリングをした赤髪の魔術師。金の鎧を纏う勇者。そして、黒い鉢巻を巻いた禿頭の格闘家)
すれ違い、数歩。
アリスは弾かれたように振り返った。
「間違いない。あれ、今回のターゲットです!」
アリスは迷わず、彼らが消えていった真っ暗な路地裏へと突っ込んだ。
「ま、待て! アリス!」
ロックも走り出すが、足元の石に躓き、僅かに出遅れてしまう。
「はぁ、はぁ……おい、アリス! どこだ!」
ジメジメとした暗がりの路地裏に踏み込んだとき。
そこには、追いかけていた三人組の姿も、そして先に入ったはずのアリスの姿も、忽然と消え失せていた。
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