第29話 雪降る国の一大行事~石の上にも五年~
アリスたちは、馬車の襲撃事件によって、ギルドから一時待機命令が出されたが、新しい宿に荷物を置き、外を散歩していた。
「ちょっと、ロック!待機命令出されているのに、勝手に出歩いて大丈夫なの?」
「ちょっと、出歩くだけだって。それに、そんなん待っていたら日が暮れちまうぜ。」
「コンナ、オトナニハ、ナリタクナイ。」
「うるせぇ!俺はやりてぇことがあんだよ。いいから、付いて来いって。」
ロックは強引にアリスとニルを北の国雪まつりの会場に連れて行った。
「よっしゃー、ついに来たぜ。雪まつりー」
周りに、グリフォン、ユニコーン、巨城などの形を模した完成度の高い雪像に囲まれながら、ロックは自分たちに用意された持ち場ではしゃいでいた。
「ねぇねぇ、雪に、はしゃぐ三十路ってどう思う?」
「ハッキリ、イッテ、キョウフスラカンジル。」
「おい、聞こえているぞ。」
ロックは初めての雪まつりにはしゃぐ気持ちを抑えつつ、アリスたちに命令した。
「できるだけ多くの雪を集めてこい。ここに巨大雪だるまを作って、会場中の全員をワッと驚かせようぜ。」
ロックは氷よりも澄んだ目で、アリスたちを見つめた。
(こうなったら、とことん付き合うしかないね。)
(ウン、キガスムマデ、ツキアウ)
アリスとニルは雪を順調に調達し、雪だるまの下段部分が完成した。
「よし、思ったよりでかくできたな。」
ビルの三階ほどの高さは優に超えた巨大な雪玉が場違いのように、雪像の並びに並んでいた。
「コロガラナイカ、シンパイ」
「大丈夫だ。アリスの計算で百人押しても転がらねぇように作ってあるぜ。」
「アリスノ、ケイサンナラ、アンシン」
「もし、俺が計算してたら?」
「ソッコク、コワス」
「なんでだよ!」
「ねぇ、ニル君、ちょっとあそこにいっぱい雪が積もっているよ。一緒に行こう。」
アリスはニルの手を引っ張り、彼を雪の溜まった場所に案内した。
「ニル君、・・・えぃ」
アリスが雪の玉をニルに投げる。
「グェ」
ニルの顔面に雪玉がクリーンヒットした。
「ヤッタナー」
ニルもすかさず反撃するが、上手いこと避けられてしまう。
「フッ、私は昔ドッチボールの女王って呼ばれていたのよ。そんな玉当たるわけ・・・ひぁっ。」
ニルの適当に投げた雪玉がアリスの体に命中した。
「もー、許さないから、えぃ、えぃ」
二人は雪を集めるという目的を忘れ、雪合戦に熱中し始めた。
一方のロックはというと、雪玉のアリスから見えない位置で雪を固めていた。
「おい、ロック、ロックじゃないか!」
ふと、後ろから話しかけられロックは振り返る。
「まさか、お前は・・・!」
ロックの胸が一瞬だけ強く脈打った。
「五年ぶりだな、覚えているだろ俺のこと、だってお前の兄貴なんだから。」
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