土竜討伐
おはようございます
まず最初の依頼に出かける。
土竜討伐だ。
土竜はこの国、『エルシュタイン帝国』の内部、この場所始まりの村から帝都へ近づくとその途中にあるタナ砂漠に生息して居る。
始まりの村と近くの森以外を訪れるのは初めてのことなので純粋に楽しみだ。
Bランクの魔物となると、生息して居る絶対量がかなり少ない。
自力で探すのは困難になってくる。
と言うことで、こういう討伐依頼では依頼人の元に赴き、発見場所など詳しい情報を聞くのだ。
強い魔物ほど自分の縄張りを大切にしている傾向が強いしな。
早速今回の依頼主、タナ村の村長の所に向かう。
タナ村は砂漠と隣接して居るため、暮らすことが困難なのだろう。
人の密度は然程濃くなく、むしろ薄いまである。
ただでさえ暮らすのに、普段はあまり出現することの無い魔物が出て、しかもそれがBランクの大物なのだ。
村の雰囲気がこんななのも仕方ないかもしれない。
そもそも、ここら辺付近には魔物も住みやすい環境では無いためあまり出ない。
と言うことで、この村にはお囲いの冒険者という人物が居ない。
冒険者は基本自由な職なので国の中なら何処でも冒険者として活動できる。
が、しかし大抵の村ではその村出身でずっとその村に居るつもりの青年が一人や二人は居て、村に訪れた危機をその場しのぎで応援が来るまで待つ役目をしたりする冒険者が居たりするのだが、この村にはそれが無いのだ。
この村の経済は砂漠のオアシスにしか生えないと言われる結構人気の果物と、同じく砂漠にしか生息しない珍しい糸をだす蚕で作った特別製の絹で成り立っている。
村一つを成り立たせるためには少し少ない。それは、その産業がかなりの成績を残して居ることを示唆するものでもあるのだが。
しかし、今回に関してはこの経済の軸が二つしかないという弱点の方が働いてしまった。
二つしかない軸のうち、一つでも崩壊してしまえば、経済の崩壊は最早必須。
オアシスに行くのには当然砂漠を通らなければならないわけで、縄張りを外回りに遠回りして行くという方法もあるが、それも絶対に成功するわけでは無いのでリスクが大きすぎる。
つまりは、オアシスにしか生えないと言われる果物を取ることが出来ないのだ。
今は、何とかしのいで居る様だが、いつまでもつか…。
と言うことで、早速村長の元へと向かう。地図は事前に渡されて居る。
何事もなく村長の家に着く。と言っても家と想像してのは俺だけだった様で、着いたのは村長ん家ではなく、町役場のような所だった。
確かにこの時間から村長が暇してたら、世も末である。ここの村長はしっかり働いている様だ。
受付のお姉さんに村長に会いたい旨を伝える。その時に依頼届けを見せるのを忘れない。
ギルドに紹介されて来たことをアピールしなければ、通してもらえないかもしれないのだ。
それを見て、お姉さんは何故か訝しんだが通してはくれた。
村長は最上階、つまり4階に居るらしい。
4階にはいかにも村長の部屋と言った、一番豪華な扉があった。
ノックをするとどうぞ〜と言う、気の良さそうな返事が返って来る。
その返事を聞いて俺たちは扉を開ける。
村長さんは、普通に椅子に座っていた。
豪華だったのは扉だけで、流石に辺境の土地、そこまでお金は無いのだろう、作りは他の部屋と変わらず質素な感じだった。
「それで?ご用件は?」
村長さんが尋ねるので、俺たちは土竜討伐の依頼を受けたことを説明する。
すると、
「はて?先ほどもそう言ったお客様がいらしたので、土竜の位置を教えて早速向かってもらっているのですが。」
それはいったいどう言うことだ?
とりあえず、此方としてはしっかりとギルドの紹介で来たのだ。
その事を依頼書を見せて証明する。
「これは、確かに…。そういえば、先程の方からはそういった書類は見せていただいておりませんな。早く土竜について解決していただきたいと焦っておりました故。申し訳ありません。土竜について解決した暁にはしっかりと報酬の方は払わせて頂きますので。よろしくお願いします。」
書類を見て、村長さんは呟く。それから言い訳ともとれる事を言った後に、俺たちに深々と頭を下げた。
確かに土竜の事に関してはこの村にとって大問題なので、少しパニックになってしまうのもわかる。
もし俺がその立場だったら、そうなって居ただろうから。
仮にも村長とあろう物がそれでどうすると思わないこともないが、しかしそこまで頭を下げられては何も言えない。
NOとは言えない日本人なのだ。
少し、先客とやらが気になるが、土竜の目撃場所を聞き出し、早速だがそこへ向かうことにした。
目撃場所は、町の出口を少し北へ進むとある。
完全にオアシスへの道だ。
土竜は、地中に住んでいるため探すのは困難だ。しかし、地中に住んで目が退化してしまった分、耳が極端に進化しているので、縄張りの上で、大きな音を発生させると、直ぐに出てくる。
だが、この手段は最後の手段だ。この手段で見つけた場合、最初からものすごく怒っているので、取り逃がした時に近くに居た人或いは近くの村に被害が及ぶ可能性がある。
なので、本来の見つけ方は縄張りの範囲の地面を全て踏んで歩くことだ。それをすると、足音が少し違う場所がある。そこの下には空洞があるので、そういう所に土竜の巣があることが多い。
俺達もその方法で探している。知っている魔物ならば俺が匂いで探せば良いのだけれど、残念な事に土竜の匂いは知らない。
縄張りの範囲は相当広いので、気が遠くなる様な作業だが、仕方ない。
地面を踏むのに、丸一日或いは丸二日。
Bランクの依頼を3日以内にクリア出来れば、良い方だと言えるだろう。
太陽も沈み始め、砂漠にも少し涼しい時間がやって来たかと言った時間の事だった。
そう遠くはない場所で大きな音がした。なにかが爆発した様なそんな音。そう、前世で例えるならば爆竹や花火の音。
そんな音がしたかと思えば、次に
「ギャルルオオオオオオオオオオオオオオオオ」
と大きな咆哮が聞こえた。
何者かが、大きな音を出し土竜を怒らせてしまった。
一瞬の事だったがそれ位の事はわかった。
一体誰が…ここらへんには土竜注意のおふれが出てるはずなのに。
思案するが、やめる。今は土竜の元へ行くのが優先事項。
俺達は土竜の元へ走り始めた。
咆哮が聞こえた場所に着くとすでに3人が戦闘にはいっていた。
やはりと言うべきか、土竜はかなり怒って居た。
今土竜の相手をして居る3人は、身なりが結構良く、装備にお金をしっかりとかけていて、動きもそこまで悪くない。
しかし、悪くはないがよくもない。火力もないし、かと言って技術が特別すごいわけでもない。
少し冒険者業に慣れて来た、ぐらいの3人組だ。
そう言ってしまうと、俺たちなんか冒険者的にはひよっこのペーペーだし、技術なんてリオンしか持ってないけど、土竜位なら彼らよりもしっかりと倒せそう。
それもこれもナミやリオンの潜在能力による物なのだが…。
3人組は安定して土竜を相手して居るが今の土竜は激怒している。
何をしてくるか分からない。イレギュラーな事態にも対応しなければならない。
3人組も自分達の身を守る位は出来るだろうが、最悪なのは怒った土竜が自我を失って村を襲うことだ。
この場でしっかりと倒しておく必要がある。
助太刀するタイミングを見計らって俺達も戦闘に移る。
「助かった!君たちは?」
新たに3人加わったことで怯んだのか土竜が少し距離をとった。
その隙を見計らって一人の青年が声をかけて来た。
フルメタルの全身鎧で、なかなかに重そうな防具だ。手には大きな槍を持っている。特別何かある武器では無さそうだが、しっかりとした作りの武器であることは素人目にも分かった。体つきも装備や武器をきちんと扱えるように鍛えているのか、かなりがっちりしていて3人の中では最も筋肉質の様だ。
「俺達は土竜の討伐の依頼を受けてギルドから紹介されて来た者だ。そう言うお前達は何なんだ?村長の所にも来ていた様だし、さっきは土竜相手に大きな音で威嚇はするし、他の人に迷惑がかからない様にしろよな。」
俺達の正体を明かすと、少し顔が青くなった気がするが、どうでもいい。
柄にも無く説教みたいになってしまった。説教って意外と難しく思った事をしっかりと口に出せなかったけれど、彼らもしっかりと反省しているみたいだ。
と言うより、3人のうち2人はよく言ってくれた、と言った顔をしている。
顔から察するに、真ん中の少女に付き合わされて居たのだろう。御愁傷様だ。
俺の説教に、申し訳なさそうに奥のローブを纏った青年が答えた。
「全く、おっしゃる通り。我々も姫の冒険癖には困っているのです。危ないといつも申しているのですが…。騎士団長や宮廷魔道士長に怒られるのはいつも下っ端の私たちだと言うのに。」
防具は、本当に防御力があるのか不安になるローブだけだ。宝石の様な物がはまった大きい杖を持っていて、見た目からして魔法を使いそうだ。
ローブとかにも魔法に関するスキルとかがありそうだが、流石にこの状況で鑑定をする余裕はない。
しかし、言葉から察するに真ん中の少女に引きずり回される哀れな2人の下っ端と言った具合だろうか。
2人があまりにも哀れなので、俺は少女に語りかける。
「俺はなぁ、お前がどれだけ偉いのかは知らない。だけどなぁ、この世界にはお前だけじゃないってことだけは言えるよ。もう少し周りを見てみろよ、お前を一生懸命心配してくれてる奴がいるだろ?お前に迷惑かけられてる奴もたくさんいる。お前は一人じゃ無いんだから、俺だって彼らだって居るんだから、だから周りをもっとみようぜ。」
今日はよく説教をする。俺が大人になったみたいだ。
俺が言った事に後ろの2人はうんうんと頷いていた。
そんな中で少女はうつむきながら聞いていたがだんだん震え始めて、次第には
「うるさいうるさいうるさいうるさい!お父様にだって怒られたこと無いのに!!!!私にだって考えがあるんだ!」
と言って走っていってしまった。
おい、ちょっと待て。そっちには土竜…。
「危ない!」
俺が気づいたのは、土竜の大きな爪が少女に迫っていく瞬間だった。
おやすみなさい




