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呪い姫を抱きしめたら月詠の導師に覚醒したので、王子を〆て姫を救う旅に出ます  作者: 輪三


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止められぬ蛮行

はじめまして。輪三リンゾーと申します。

大好きなハイファンタジー小説を自分で書きたくて初めて執筆しました。

本格的な冒険長編小説を目指しています。

何分初めての試みですが、皆さまに楽しんでいただけるような作品にしていけるよう努力いたします。


『真勇魔討』の物語。今後主人公を代え様々にリンクしクロスするお話です。


 vol.1 『月詠の導師リョーマ 』編です。



                 


「う・・・・・」

 

うめき声が漏れた。

夢か。

身体が上手く動かない。まるで深い水の中で泥にはまり込んでいるようだ。

眼を開く。

視界に飛び込んできたのは、暗い部屋と女性?


「・・・ん!・・・」


オレの首に腕を回すように抱きしめ、股の間に太ももが挟まれている。

月明りが窓から入っているようだが、暗い部屋でオレの間近にある顔に息を飲んだ。

濃紺色の髪は首までの長さだ。高い鼻梁びりょう、ぷっくりとしているが薄い唇、閉じられた瞳。


そして動かない身体でも感じる暖かい体温と女性ならでは柔らかい確かなふくらみの感触。

動かせないながらも、身じろぎが伝わったのか女性が微か動いたのを感じた。

ゆっくりとまぶたが開いていく。


美しい切れ長の眼だ。瞳の色は髪の毛と同じ濃紺のうこんのようだ。

暗い部屋なのになぜかはっきり見える。

ぼんやりをしていたのは一瞬で瞳の焦点があったようだ。


「・・・若様・・・」


がばっと身を起こした女性は口に手を当て、涙を流し始めた。


「若様お気づきに!」


抱きしめられた。


「良かった、本当に・・・・。」


涙を流しながら抱きしめられ、ほおずりをされたり顔に手を挟まれたり額に手を当てられたり、

脈をとったりしている。

アヤメとつぶやいたつもりがひどくかすれて声にならなかった。


(・・・アヤメ、オレにずっと仕えている6歳年上の侍女。そしてただの侍女ではなく、まるで姉のように時には母のようにオレを見守り、仕え愛してくれる人)

オレの声にならない様子を感じたアヤメは


「お水を・・・」


つぶやくとベッドサイドテーブルのコップの水を口に含むと、腕を首の後ろに回しそっとオレの上半身を起こすとキスをしてきた。


「・・!・・」


多分オレは大きく眼を見開いていたと思う。

柔らかな唇からゆっくりと水が流れ込んでくる。

のどにやけに甘く感じる水をオレは飲んでいった。


「もう一度・・・・」


アヤメはそうつぶやくとまた水を口に含みキスをしてきた。

ゆっくりと流れ込んでくるそれをオレは飲み続けたが勢いが少し強かったのか、オレの身体がまだ上手く機能していないのか、口の端から少しこぼれほおを伝ってこぼれていった。

それに気付いたアヤメが唇を離すとこぼれた首筋からほおをペロッと舐めた。


「・・!!・・」


そしてほおにキスをした。今度は本当にキスだと思う。

だって一瞬だがその瞳には妖しげな光を宿したからだ。

だがその後はまるで慈母じぼのような微笑みに変わりささやいた。


「若様、大丈夫ですか、しゃべれそうですか?」


オレはうなずき。


「大丈夫だよアヤメ」


そう告げると身体が動かせることがわかりベッドに手を着いた。


「無理をなさらないでください、若様は全身打撲と骨折、それにひどい肺炎にかかっていて一週間も意識を失っていたのですから」


少しとがめるようにそう言うとアヤメはオレの肩をそっと押さえベッドに押し戻した。


「まだ寝ていてください」


ベッドから降りたアヤメは毛布をオレに掛けなおした。

アヤメの全身が見えた。

すらりと伸びた肢体したいにドキリとした。

黒い下着で彼女の豊かであろう胸のふくらみを隠し、下半身には小さな布地を履いているだけだ。

思わず見てしまったが目を離すことができない。


「皆様を呼んで参ります」


オレを見て微笑んでからそう言うとアヤメはガウンのような物をはおり、帯をを締めながら部屋から出て行った。

暗い部屋のはずなのにその姿が何故かはっきり見えた。

閉められた扉越しに「若様が!リョーマ様がお目覚めになられました!」と言う声が微かに聞こえてくる。


オレはリョーマ・マークス、マークス騎士爵家三男15歳だ。

何でアヤメと寝ていた。

ここは自宅のオレの部屋だ。


「何で・・・・王城じゃないんだ・・・・」


少しずつ記憶がよみがえる。

オレは12歳から近習としてベルレイト王国、第一王子セイドリア・レアル・アークレイン様に仕えることになった。

本来王家の近習には騎士爵の息子がなるのは珍しい。低くても男爵からだ。


しかしオレの家は少し得別だから、繋がりを深めたい王家からの要望だった。

父上はオレが病弱ということにして断ろうとした。しかしすでに騎士になると言い家を飛び出し、騎士団に入っていた長兄のジェイク兄上が王家と繋がりをもっと深めるべきと力説した。


オレも望んではいなかったが、王子と繋がりを持てば家勢かぜいが上がり、姉上の縁談なども有利になると兄に言われ近習になることを決めた。

父上も3年ほどなら人生勉強になるだろうとしぶしぶ認めた。


だが・・・・

それはイジメつくされる地獄の日々だった。

そもそも他の近習達は王子が5歳の時から仕えていた。12歳というのは仕えるには遅すぎた。

まず黒髪黒目という見た目が気にいらないと言われた。


クソ真面目で面白味が無い奴と言われた。

そして何より身分の低さというのはどうしようもなく、他の近習仲間も王子自身にも冷たく陰湿にあたられたんだった。


言葉遣いがなってない、仕草に優雅さが無いなどと言われ殴られるのは日常で、いくら改めても認められることは無かった。

それでも誰よりも早く起き支度を務めたり、他の近習達から仕事を押し付けられても不平も言わずに務めた。


オレはあの日、無謀むぼうなことをしようとする殿下達を止めようとしていた。


約200年前に封印した魔王が復活して5年。各国で国選勇者、勇星教団という勇者を信奉する教団の教団勇者、果ては腕に自信がある冒険者などが僭称せんしょうする自称勇者など世界中に勇者があふれていた。

その中で聖導師に選ばれ導かれた『真の勇者』が魔王を打倒できると言われていた。


そして魔王を封印した『真の勇者』は世界中から栄誉と賞賛と『すめらぎ』家という名誉家名が送られ莫大ばくだいな富を得た。

魔王が復活してからというもの、次の『すめらぎ』の名誉と富を得ようと、真の勇者になって魔王を討伐する、『真勇魔討しんゆうまとう』という思想が世界中を席巻していた。


そして殿下もその勇者に憧れる1人だ。それもかなり重篤じゅうとくな・・・・・・。


「殿下無茶です。ダークカーズヒュドラは厄災級やくさいきゅうの魔物です。約定通りに周辺国の騎士団と冒険者ギルドとの共同作戦にて討伐とうばつすべきです!」


魔王が復活してからというもの、魔物が狂暴化し各地で被害が増えていた。

このベルレイト王国でも、周辺国をまたがるようにあるドーゴ大湿原より発生したダークカーズヒュドラが暴れていて被害を出していた。

厄災級と言われた魔物、数国での討伐することは決定事項のはず。それを単独で討伐なんて出来るはずが無い。


「何だと我らがモンスターごときに敗れると申すか!」


「そうだ我らを愚弄ぐろうするか」


「我ら殿下の剣となり盾となってヒュドラを打ち破りましょうぞ」


「しょせんこいつは身分の低い騎士爵家の者、高貴なベルレイト貴族の考えなど理解できないのです」


近習達が口々に罵声を上げる。


「皆、よく言った。軟弱なこやつに貴族のほこりを教えてやれ」


そう言って10人がかりで道場で打ちかかられた。


まあこれはいつものことだ。

オレは小さい頃から東方から伝わる刀術を爺に仕込まれた。その教えは厳しかったが、とても面白く筋が良いと言われた。

普段ならギリギリで間合いを調節してかわしてひどく打たれないようにできた。

王子ともう一人を除いて近習達の技量はそこまで高くない。

爺に鍛えられたオレには強く感じなかった。

しかし初出仕の時、送ると称して城にまで着いて来た兄に言われた。


「自分の身分を考えろよ。剣術の稽古で打ち込むことは禁ずる」


身分の所為で打ち込むことは許されず普段から受けやかわすに終始していた。

だが数日前からひどく体調を崩していて、高熱が出ていたが休むこともできず無理を重ねていた。

上手くかわすことができずにダメージを重ね倒れこんだ。

ここぞとばかりに容赦無く打ち据えられて、最後には殿下の長靴で頭を蹴られ踏まれていた。そしてあのように言われたんだった。


「お前のような弱くて使えない奴はいらん」


冷たい目でこちらを見下ろしていた。


「これより厄災級ダークカーズヒュドラの討伐に参る。私が勇者に選定される第一歩だ。『真勇魔討しんゆうまとう』皆の者、力を貸せ!」


「はい!やりましょう」


「我らが殿下をおささえ致します」


「お任せください!」


近習仲間が声を上げる。


「リョーマ、只今を持って貴様の近習の任を解く。とっとと山に帰れ」


それを聞いた近習仲間の嘲笑ちょうしょうが聞こえたところで意識を失った。




もし本作を「応援したい!」と思ってくれる方がいらっしゃれば、ポイントやリアクションや感想など

をいただければ、励みになります。


よろしくお願いいたします。

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