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ギルドに入ると酒の匂いが、むわんと漂ってくる。
「お! アドじゃねえか! 今日はどうしたー! ほれ、こっち来いや!」
今日も賑わってるなーなんて思っていたら、一人の冒険者が僕に気付いて声をかけてきた。
「アクスさん! お久しぶりです! 今日は登録ですよ!」
「お…お前まじか! 遂に登録できる歳になったのか! はっはぁ! こりゃめでたい! おらぁ! お前たち聞いたかあ!?」
酔っ払った大男、アクスがそう声を張り上げるとあちこちから、アドおめでとう! うちのパーティ入るか!? 祝酒だ! と言った声が聞こえてくる。
「アド人気ですね」
小さい頃から通ってるからね。若い人だと結構知らない人もいるけど、ここを拠点としている歳いった人達とは大抵知り合いだ。
皆に後でねって言いながらカウンターに向かう。
「アド君おめでとう! 遂に登録できるのね! 将来有望な子が入ってくれて嬉しいわ!」
「リリーさんありがとう」
お祝いの言葉をくれたのはギルド職員のリリーさん。リサよりも少し歳上だが、ウェーブのかかった黒髪の綺麗な人だ。
「じゃあこの用紙に記入お願いね。あと一応身分証も。それとそっちの子は? お友達? 登録するのかしら?」
リリーの言葉的に、リサを僕と同じくらいの子と勘違いしているのか…。リサの眉がピクッと動く。
「いえ、私は付き添いですので」
「そう? じゃあアド君身分証お願いね」
来た。身分証…。
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氏名/アドヴェンス・ローレル(12)
身分/イグドラ王国民・(ローレル公爵家次男)
技能/イグドラ語、礼儀作法・(剣術)・(下位四大属性魔法)・(罠術)・(予測)・(光魔法)・(闇魔法)・(小剣術)・(体術)・(火魔法耐性)・(水魔法耐性)・(風魔法耐性)・(土魔法耐性)・(炎魔法耐性)・(氷魔法耐性)・(雷魔法耐性)・(地魔法耐性)・(光魔法耐性)・(闇魔法耐性)・(音魔法耐性)・(呪魔法耐性)・(毒耐性)・(麻痺耐性)・(睡眠耐性)・(石化耐性)・(魅了耐性)・(技能複製付与)・(暗視)・(野営術)・(回復魔法)・(探知魔法)・(強化魔法)・(隠密術)・(全身体機能上昇)・(全筋力上昇)
非表示(天職M/冒険者)
天職S/貴族
非表示(天技M/冒険者)
天技S/技能辞典
犯罪歴/無し
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名前以外は見せたくないところは非表示にできるので、家名のローレルだけ光の魔法で屈折させ見えなくして提出する。
それと名前や天職、扱える武器などを書いて提出する。
「あら…アド君の天職…」
「うん。冒険者に向いてないんだよね。でも諦めないよ」
「そうよね。一度アド君が冒険者の人と訓練してるの見たけど、結構強かったし、期待してるわ」
やっぱりちょっとがっかり…というか同情された。天職/貴族で冒険者になる人はやっぱり稀なのだろう。たいした技能を覚えられないからな。
リリーさんが手元の道具でなにやら文字を打ち込んだりし、一枚の分厚いカードを手渡された。
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氏名/アドヴェンス(12)
ランク/10
犯罪歴/無し
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「アド君は知ってると思うけど、一応説明するわね?」
「はい」
「まずランクは十級が一番下で一級が一番上よ。依頼は掲示板で探してね。基本的にソロならランクの一つ上まで、パーティならパーティ内にいる一番ランクの高い人の二つ上のものが受けられるわ。パーティを組む時はギルドで登録の必要があるから気をつけてね」
「はい」
「それとランク五級以上になったら強制依頼とか指名依頼もあるわ。まあアド君はまだ先の話だけどね。掲示板の依頼には討伐依頼と納品依頼、雑用依頼、常設依頼があるわ」
討伐、納品、雑用、常設。全て文字通りだ。
「このギルドカードには周囲の魔素の動きを記録する機能があるわ。つまり、君が倒した、もしくは倒すことに貢献したってのはこっちで把握できる。だから不正はできないから気をつけてね。ランクは討伐した魔物の数や種類、達成した依頼の数や難易度を鑑みて昇給させるわ。ランク五級からは試験もあるわ」
うんうん。知ってる内容だ。
その後も注意事項だのを説明してもらい、これで終わりっていう時、ギルドの二階からアクスさんよりも筋骨隆々なおじさんが降りてきた。
「いつもより騒がしいと思ったら…アドが登録に来たのか」
「おう! ギルマスも乾杯しようぜ!」
アクスが乾杯にさそう。そう。筋骨隆々のおじさんはこのギルドのギルドマスターだ。
「ああん? あー…それも悪かねぇが…アドちょっと上の部屋に来い。話がある」
「話…何だろう?」
「アド。どうしますか?」
「うん? 行くよ。リサも一緒に行って大丈夫なのかな?」
「アド。その嬢ちゃんも連れてきて構わんぞ」
僕の声が聞こえたのかギルマスがそう言ってくれた。
「わかりました! じゃあ行こっか。リリーさんありがとう」
「ギルマスに虐められたら言うのよ? 私がガツンと言ってあげるからね!」
「あはは。大丈夫だと思うけど…ありがとう」
ギルマスの後を追いかけ、二階にある個室に向かった。




