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あかだま相談所怪奇譚  作者: もふやまもこ
第一章 椿と狐と相談所
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異端者・斎藤京介とこっくりさん⑧

「僕が、取り憑かれている?」


呆然とオウム返しをした僕に小坂さんは大真面目な顔で頷き返した。しかし彼女自身は話す気は無いようで、すぐに大欠伸をすると校長机 (仮)まで歩いてそのまま突っ伏してしまった。


「ワタシ疲れたから君から話して」


「あいよ! さいとーくん……京介って呼んでもいいか?」


「いいですよ」


そんじゃ京介で。と言った糸先輩は一つ咳払いをしてから僕と目を合わせた。


「京介、“あかだま相談所“でバイトしねぇ?」

「え?」

「ふぁ!?」


この短時間で意識を手放しかけていたらしい小坂さんがぎょっと起き上がった。

「何馬鹿なことを言ってるの糸! というかいきなりそれ!? ただでさえ君だけでも怪奇現象にかかわるのは危険だって知ってるよね? わざわざ人数を増やすだなんてバカげてる」


(閻´ω`)「でもさぁ、この町最近怪奇絡みの事件たぁくさん増えてるよ? 糸くんの言う通り一人二人増やしたほうがぼかぁいいと思うね~」


 呑気な声をあげながらゴムボールが足元まで転がってきた。「たまには閻魔も良いこと言うな!」と糸先輩が食い気味に賛同する。


「じゃあ君が地獄の管理をもっと厳しくすればいいじゃないか!」


(^ω^閻三閻^ω^)「仕事の間にこっちの世界に行く事を楽しみにしてるヤツらが多いの知ってるっしょ? それに悪霊捕縛ならうちの死神(ぶか)はよくやってくれてるよ〜」


 いつの間にか発言元の糸先輩そっちのけで大人 (?)二人が言い争いを始めてしまった。当の糸先輩は「いい子だなぁヒトダマは〜」と呑気にパステルカラーの人魂を撫でている。触れるとは知らなかった。そんな彼に箱山さんがひっそりと禁断の質問を持ちかけた。


「……あの、センパイ。さっきから“地獄の管理“とか、“うちの死神“とか言ってますよね…………まさか…………」


「あぁ、俺らの間で“閻魔大王“って呼ばれてるやつだ。時々あの姿でこっちにちょっかい出しに来てはいつの間にか消えてる」


 地味にショックだったのか、箱山さんは無言でノータッチだった目の前のお茶を一気に飲み干した。ヒトダマが慌ててふよんと寄ってきてお茶のおかわりを注ぐ。

 一方僕は、張本人である自分を置いてどんどん大きくなっていく話に耐えきれず手を挙げた。「ハイ斎藤くん!」と糸先輩がノリよく僕を指す。


「そもそもあかだま相談所、ってなにをする場所ですか?」


「あ、そーいや忘れてた。まぁ基本的には、死んで心残りがあって幽霊になっちまったヤツらの心残りを解消して輪廻(りんね)の輪に返す。あとは妖怪とか都市伝説が原因で困っている人がいたら和解出来るように仲介する、とかだな!」


「……つまり『怪奇現象の原因』と『現世の生きモノ』を繋ぐ相談所、ってことですか?」


 噛み締めるようにそう呟いた僕に糸先輩が大きな笑顔を浮かべ、逆に小坂さんは胡乱そうな目でガシガシと頭を掻いた。


「ド零感(れいかん)の人がこういう仕事に関わるとろくな事はないよ。怯え てこっちの仕事が上手く回らなくなる」


「稲荷だって今は祓えるだけだろ? それでも仕事は出来てるじゃねぇか」


「む……それはワタシが慣れているからで……」


「それに京介は肝がつえーんだと思うぞ。俺、こっくりさんに遭ってあんなに冷静なヤツ初めて見た。今だってあのイカレゴムボールとかヒトダマにビックリしている訳でも怖がってる訳でもねぇし、元々十体くらいの幽霊に取り憑かれてたのに体にも異常ねぇじゃん」


 図星を突かれたように小坂さんは眉を寄せ、「う……」と呟く。そんなことより聞き捨てならないことを聞いた気がした。


「あの、僕が憑かれてた幽霊の事なんですが」


「うん、今も憑いてるけどな」


そんなに何度も追い打ちをかけなくてもいいと思う。

「十体、って嘘ですよね……?」


「嘘じゃないわ」

「いや、嘘じゃない」


 女性陣二人から声が上がり、がくりと肩を落とす。さすがに多すぎやしないか。


「私、入学式の時に気分が悪くなっちゃったの。斎藤くんは同じクラスで私の後ろの席に居たのよね? 多分それが原因だと思うの。自己紹介の時も……。だからついいつも避けてしまって……ごめんなさい」


「僕を嫌ってた訳では無いんだね? それなら良かった」


 ほっとした顔の箱山さんに続いて小坂さんが口を開く。


「君が図書室に来た時、周りに悪霊がうろついている気配があったから二、三のタマシイを祓っておいた。さっき君をここまで運んで来た時にほとんどは祓ったよ」


「それを聞いて安心しましたけど……ほとんど、ってことは」


「そ。一体だけあんたにしぶとくくっ憑いて離れねぇヤツがいる。いやぁイケメンモテ男は違うねぇ」


 楽しそうですね先輩。こっちは全然楽しくありません先輩。口を開きかけたその時、先輩に見つめられている事に気が付き固まった。いや、見つめているのは僕の後ろだ。大きな黒い瞳が細められ、不気味な暗さが妙に増す。…………嫌な、予感がした。



「まったく、なぁんで小学校の女教師がいたいけな男子高校生に取り憑くほど恨みを持ってるんだか……」



何でもないようなその言葉が耳に入った瞬間、自分の表情が消えたのが分かった。

あと一話で一章完結します!(これは本当です! 本当ですからね!!!) いやぁ連載楽しい。

一章完結後は登場人物まとめとかプロローグを載っけようと考えてます。全体的に長編になりそうですが、読んで下さると嬉しいです。これからもよろしくお願いします!

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