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あかだま相談所怪奇譚  作者: もふやまもこ
第一章 椿と狐と相談所
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異端者・斎藤京介とこっくりさん④

「お!京介やっと帰ってきた〜」


「おかえり京介きゅん♡ やっぱりイケメンは目に良いわー」


「きゅんって何? ただいま」


こんな感じで、僕は普通に学校生活を楽しんでいる。そこそこ愛想も良く我ながら顔も悪くないので、僕を含めて四人のいわゆる『一軍』という立場のグループに属している。

ノリで生きている連中だから話は非常に中身がない。だけどこういう所に身を置いていた方が楽だしやりやすい。


「ねえねえねえキョースケ君、こっくりさんやらない?」


「いきなりだね天海……どうして?」


「京介は知らねえと思うけど、この町ってソーユー都市伝説とか多いんだ。ま、俺は見たことねぇけどな」


都市伝説、か。ふと図書室にいた少年の暗い瞳を思い出す。


……『図書室の黒目の少年』とか。


……いやいや流石に違う、よね?


「もし会ったら、俺らでばーっとゴーストバスターズしちまおうぜ!」


ぱこん!


そう言ったリョーヘイの頭をアヤカの丸めた教科書が襲った。


「もう!男子はこれだから乱暴でやだなぁ…あのね、こっくりさんで呼び出される精霊?が、恋の神様なんだって〜!」


「乱暴なのはどっちだよ……」


教科書に襲われたリョーヘイのぼやきを華麗に無視し、アヤカは顎をひいて僕を見つめた。


「へえ、アヤカ好きな人いるの?」


「うん…いるよ?」


可愛らしく小首を傾げて上目使いに僕を見る。僕も恋愛経験が無いわけじゃないから意味は分かるが、今はそういうことに飽き飽きしている。適当に撒こう。


「そっか。アヤカは可愛いからきっと叶うよ」


とにこり。


「京介ぇ! この鈍感野郎!」


「さっすがキョースケ君! クールでやっさしいと思ってたらまさかの天然系イケメン! 属性多いね〜〜」


鈍感野郎はどっちだよ、と言いたくなるリョーヘイとイケメン鑑賞に目がない天海。そして僕に恋しているらしいアヤカ。悲しいことにこの三人がイツメンになりそうだ。


ふぅ、と自分の席に戻ろうとした時。


「……さ、斎藤くん」


「えっと……箱山さん? どうしたの?」


箱山さんは、自己紹介の時から何故か僕を怖がっているクラスメイトだ。まさか彼女から話しかけてくるなんて。


「こっくりさん、やるの?」


「うん、やるけど……?? あ! 箱山さんも入る?」


「いやっ! あ、あの……そうじゃなくて。」


なんて言えばいいのか、と視線をうろうろさせている。こっちに目は合わせてくれないようだ。


「あのね。この町、本当に出るんです。幽霊とか、妖怪とか、都市伝説とかそういうの。」


「……」


「だから、本当に、」


「そっか! なら楽しみだな!」


「え」


「一回もそういうもの見たこと無かったし。」


「……でも、」


「心配してくれてありがとう。でも、本当に酷い事態になったら逃げるから。ね?」


こっくりさんは多分成功しないだろう。何故彼女が恐怖対象(理由は分からないけど)の僕を心配しているのは分からないけど、とりあえずフォローはしておこう。


「………………」


「あ、もう授業だ! 箱山さんも席につこう?」


「……本当に、」


俯いていた彼女が きっ と顔を上げた。

栗色の胸までの長さのツインテールがふわっと揺れる。緊張しているらしくぎゅっと眉を寄せているが、なかなか可愛い顔立ちだ。

右になきぼくろのある、ぱっつんの前髪から覗く目が、やっと僕の目と合った。



「本当に、やばいと思ったら……この町にある椿を触ってください。」



「…………えっと、」


椿。ツバキ科ツバキ属。普通は冬から春に咲く花だけど、この町では不思議なことに特産品らしく年中咲いていると聞いた。雪に映える鮮やかな紅色がうつくしいが、花ごと地面に落ちる姿がどこか不気味な、あの椿。


予想もしていなかった発言に目を(しばた)く。

そう思っていたのが伝わったのか、箱山さんは慌てて弁明した。


「あの、その、変な奴って思うかもしれないけどお願いします、覚えておいて……」


「……分かった! 箱山さん心配症だなあ。」


でもありがとね、とやや引きつった顔で笑いかけた。なぜ椿。先生を呼ぶでもなく用務員さんを呼ぶでもなく、椿。謎だ。箱山さんはやはりちょっとおかしいんだと思う。


さて、放課後まであと二時間。

怪奇現象起こそうとしたら流石に長すぎたよ……

前置き長くてすみません、どうかお付き合いください

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