第6話 アイドルとヒートテック、俺のダンディズムは凍えない
これは俺の青春の一ページを彩った彼女についてだ。俺の永遠のアイドル、中嶋美都。
あ、もちろん愛しているのは由紀子一人だ。
その青春時代のアイドルが、亡くなったんだ。それを知った時、俺の心には風が吹いたんだ。冷たい風がな。
ダンディズムを貫いている俺は、人前で涙を見せることなどあってはならない。
改めて彼女の訃報がTVニュースで流れた時、目から何かよくわからないものが出た。
だが、涙ではない。
これは青春の幻影、そう結晶なんだ。
そういえば昔、中嶋美都のドキドキ❤︎ハイスクールにハマってたな。
紫音が呆れた顔で俺を見ている気がするが、気のせいだと思うことにした。
「なあ、紫音」
「何?」
「中嶋美都って知ってるか?」
「……ん、誰それ?」
「父さんの好きだったアイドル」
「ふーん」
興味なさげに聞いているように見える。そう、実際に紫音の目線はまったくこちらを向いていない。俺よりSwitch2に夢中になっている。
「そのアイドルがな、こないだ亡くなったんだ……」
紫音が一瞬俺を見て、また目線を戻した。
「……そっか、たしかニュースで見たな、昭和の歌姫だっけ?」
紫音が小さく相槌を打つ。
「わかるか?紫音!!あんまり母さんに言うと、母さんヤキモチ焼くかもしれないからなぁ……はは」
「それに……お前も母さんも使ってるやつだから、気をつけないとダメだぞ?」
「は? 何が?」
紫音が不思議そうな顔で俺を見る。
「お前たちも着てるだろ?ヒートテック!気をつけないとな、ヒートテック!」
「…………」
紫音が俯いた後「……ブハッ」と噴き出した。
「それを言うならヒートショックだろっ!」
「え?」
「ヒートテックで人が死ぬとか、UNIQLOの信用落とす気か?」
「てか、UNIQLOを愛する全国民に謝れ!」
「ほんと、父さんって……ブハッ」
ああ、紫音が笑っている。最近は笑顔を見ることが少なくなったから。
「てか、大事な人をネタにすんな!」
父さんは別にネタにしたつもりはない。
怒っていたらすまない、中嶋美都。
君と同じ時代を生きられて、本当によかった。
君の歌が大好きだった。俺の青春をありがとう。
フォーエバー、中嶋美都。
俺の中で、君はいつまでも生き続ける。
そして、紫音の笑顔をありがとう……。




