第二十四話 果たし状
「おはよう」
「おはようございます」
「おっ……は〜」
「お、おはごまいます」
この前出鼻をくじかれた角で杉目四人が待ち伏せをしていた。
「おはよう」
他に誰もいないことに安堵しながら挨拶を返す。
四人は俺の左に横一列に並びながら学校に向かう。こうやって見ると本当に容姿が似ている。
「お姉ちゃんが昨日は失礼しました」
昭がいつかのように謝ってきた。バナナの皮のことだろう。
「大丈夫だよ、こうやって無事に登校できてるからさ。それにしても晴ちゃん、登校できるようになったんだね」
「はい、元気になりました」
晴はうつ向きながら小さく言葉を返してきた。
ところで。
さっき見た時は誰も近くにいなかったはずなのだが、今誰かの視線を感じていた。
バッと振り向いたが見付ける事はできなかった。
「どうしましたか?」
「いや、なんでもない」
あの視線に殺気が込もっていたのが気のせいであってほしいものだ。
昼食は岩井と城ヶ崎浜の二人が作ってきた二つのお弁当を食べた。二人が睨み合っていた気もしたが、どっちも美味しいと言っておいた。
そして授業はとばして放課後。
果たし状
それが下駄箱に入っていた。内容は、体育館裏に来い、という典型的なもの。
お前らいつの時代だよ、と言いたくなった。
だが特に断る理由も無いので、一緒に帰ろうとしていた妹子ちゃんとは別れて来てみたのだが。
「○×ゲーム?」
「そうだ。俺と○×ゲームで勝負しろ」
ということらしい。
一応ルールを聞いてみたが、やはりあの中々勝てない、それでいて負ける事は絶対にない3×3の○×ゲームらしい。
「ところで、何で○×ゲームなんだ?」
「その理由は、聞くな」
ああ、いじけちゃった。
「と兎も角、時間も無い。さっさと始めるぞ」
「はいはい」
何か、もう何が何だか。何で何なんだろう。何でもあり、何だろう。
机を挟むように椅子が二脚、なぜか置いてある。わざわざ教室からここまで持ってきたのだろう。
彼が一つの椅子に座ったので、俺はもう一方に座った。
結果は分かっている。引き分けだ。
ジャンケンで俺が先攻になった。
まずは順当に真ん中に○を書く。相手は俺から見て右下に×を書く。続いて俺は左上に○を書く。相手が右中に×を書く。俺が右上に○を書く。相手が中上に×を書く。俺が左下に○を書く。
「ま、負けた」
で、俺はなぜそんなにうちひしがれているのか気になるものの、これ以上の不毛な勝負を避けるためにそそくさと帰宅したした。
ちなみにあの男、クラスメイトの中澤次郎である。江ヶ崎萌とよく話していた一人だ。
そういえば、果たし状を出した理由を聞くのを忘れていた。
まあ大体の所はわかる。嫉妬だろう。
家に帰ると、玄関前に妹子ちゃんが立っていた。その隣には天もいる。
「遅かったね、都靄君」
「まあ、ちょっとな」
説明するのも面倒なので適当に流しながら扉を開けて、
「おかえりなさいませ、ご主――」
閉めた。うん、いい運動になった。
「それじゃあ、外で飯食うか」
頭の上にクエスチョンマークのある二人の手を取り、歩き出す。二人の顔が赤くなったのはなぜだろうか。
兎も角、歩き出――
「ちょっと待って下さいよ。無視する事はないじゃないですか、ご主人様」
――そうとすると、さっき見たような見てないような女子が追い縋ってきた。
仕方ない。応対しよう。
「で、勝手に人の家に上がり込むのは犯罪だ。不法侵入だ。分かるか?」
むすーっとする彼女。
ちなみに今の状況はこうだ。手が二人と繋がったままの俺を、彼女は前から抱き絞めながら見上げている。
「ご主人様。いえ、東条君。これだけは言わせて頂きます。クラスメイトに向かって何ですかその口のききかたは」
ブロンズの髪に碧の瞳。俺はなぜ最初に名前を聞いた時に思い出さなかったのか、今更ながら後悔していた。
日荒川翆。東条家に先祖代々遣える日荒川家の一人だった。




