第二十話 蔵等
日曜日、寝覚めは悪かった。
それが外からの音が煩いためだと分かった時、部屋の扉がノックされた。
「都靄様、入ってもよろしいでしょうか」
城ヶ崎浜のようだ。だがなぜここに?
疑問には思ったが入られるのは困る。
「いや、着替え中だからリビングで待っていてくれ」
「…………」
返事がない。だが動く気配もなかった。
「どうした」
「はっい、いえ、なな何でもございません。ででは待っております」
そう言って離れていった。
別に着替える必要のない俺は、しばらくたってからリビングに向かった。
そこにいたのは、ほとんどの1年7組の女子だった。
安西美香華。岩井琴子。叶鼎。神崎天使。城ヶ崎浜三日月子。杉目天。瀬賀井妹子。土居久子。七瀬せな。拝島好乃。日荒川翆。日比野萌。夢星宇宙。
ここにいない女子は五人だけだ。
姦しいとはよく言ったもので、リビングは阿鼻叫喚の喧喧諤諤、五月蝿並の煩さだった。
だがそれよりも大きな音が聞こえてくるのだが。
俺はこの中で一番話の分かりそうな杉目天に声をかけた。
「おはよう」
「おう、起きたか」
「何やってるんだ?」
「ああ、これか。三日月子が何か急にウェルカムパーティーしようって言うからさ、1年7組のあんたのファンクラブ会員が全員集合したんだ。勝手に邪魔してすまないな」
なぜこの家で城ヶ崎浜がウェルカムパーティーなんてするのだろう。ここは俺の家だから俺が主催者なら分かる。だが主催者は城ヶ崎浜のようだ。彼女は一体誰をどこに呼んだというのだろうか。
だが天に聞いても分からないだろう。
「いや別に大丈夫だ。大丈夫なんだが」
「何か駄目だったか?」
「いや、そうじゃなくてな。どうやって中に入ったんだ」
「それなら城ヶ崎浜のリムジンの運転手が開けてたぞ」
溝部といったか。裏では色々な駆け引きがあるのだろう。
「そうか。それともう一つ聞きたいんだが、外の騒音は何だ?」
「さあ。私は知らないが、重機みたいだな」
「重機?」
それで寝覚めが悪かったのか。何をしているのかは聞かないことにした。
目線を城ヶ崎浜の方に向けると、真っ白なテーブルクロスの上に乗った軽食を食べていた。
その周りを叶鼎がコック姿で回っていた。
しばらく見つめていると目が合い、彼女の方から近付いてきた。
「都靄君、おはようなの」
どこかで聞いたような台詞をどこかで聞いたようなイントネーションでどこかで聞いたような声色で言ってきた。
わざわざここで、そのどこかについて語る必要は無いだろう。俺の学校征服計画には全く関係無い。
「ああ、おはよう」
「都靄君、私、一生懸命にお料理作ったの。食べてくれる?」
微妙に本家とは違う気もしたが、それでもそっくりだった。
「あ、ああ。いいぞ」
なんだか俺も感染してしまったようだ。
もうどうにでもなれ。
朝食を食べ終わり、叶を含めた数人がキッチンで食器洗いをしていた。叶によれば、食器洗い機は信用できないの、だそうだ。ちなみにコックの服は、自分で作ったの、だそうだ。なんだか叶の性格がガラッと変わったな。
その理由を拝島や夢星に聞こうとしたが、はぐらかされた。深い事情があるのか、それとも本当に知らないか。
まあどちらにした所で叶自身が喜ぶとは考え難い。それにわざわざ俺が心配するまでもないだろう。
客間に置いてある宇宙儀の組み立てセットを心の隅に置きながら、姦しい女子たちを見る。そしてこれからどうしようかと内心で溜め息をついた。




