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血塗られた運命に抗うべく、俺はひたすら繰り返す  作者: 小麦粉
第一章

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死の真相 Ⅱ



 俺はすぐさま仲裁に入るため、二人の元へと駆け寄った。


「今すぐ優月から離れろ!」


 罵声を浴びせていた女は、優月の胸ぐらを掴みながら屋上の端へと追いやっていた。


 優月は苦しそうにもがいている。

 もう喋ることすら困難な状態だ。


 謎の女はこちらに気付くと、深い溜め息を吐きながら口を開く。


『はぁ、邪魔が入りましたか……』

「彰人君……逃げて……」

「やめろ……優月に何の恨みがあるってんだ」

『屋上は立ち入り禁止だったはずですが』

「そんなの関係ねぇ、さっさと離れろって言ってんだ!!」


 女がこちらに振り返る。

 俺はゾクっと身震いしてしまった。

 顔面を覆い隠す不気味()()

 幾度となく殺人鬼に切り刻まれた記憶が蘇る。


 だが、コイツは俺を斬った殺人鬼ではない。

 背丈も違うし着ている服も女性用だとはっきり分かる。


『はぁ、ほんとウッざい餓鬼ね……少々面倒ですが、校則を破る悪い子には躾が必要ですよね』


 すると、仮面の女が突然何かをぶん投げてきた。

 ……飛び道具か?!


 いや、ただの鉛筆だ。

 凶器でも何でもない。


「そんなもん軽く振り払ってやる」


 俺は手で顔面をカバーした。

 

 本来なら文房具程度で致命症を負うことはない。

 だが予想とは裏腹に、鉛筆は俺の指を貫通して背後のパイプ管まで貫いていた。


「なっ……ぐっ……なんて強度だよ……」

「彰人君っ!!」

『あらまぁ残念。アナタの顔面を抉るつもりだったのだけど、少々ズレちゃいました』


 ……何だコイツの力。

 筋力がどうこうの騒ぎじゃない。

 ただの鉛筆がボウガン並みの威力に変化した。


 背後のパイプには黒光りした鉛筆の先が突き刺さっている。

 この破壊力……人間の脆弱な身体を貫くなんて造作も無いだろう。


 普通の人間じゃない。

 これがミカの言っていた異能力者(ギフター)だってのか?!


『あまり騒ぎを起こすのは本意じゃないので、さっさとこの雌豚を始末して本来の業務に戻りましょうか』


 痛みが激しい上に出血も酷い。

 今俺がやられれば、優月は確実に屋上から突き落とされて命を落とす。


 俺はジリジリと距離を詰めて隙を伺う。

 こうなったら一か八か。


 どんな異能か知らねぇが、俺だってスポーツを嗜んでいた身だ。

 女に力で引けは取らない。


「うぉぉぉぉおおお!!!」


 俺は突進した。

 作戦もへったくれも無しにタックルをかまそうと試みたが、モノの見事に避けられてしまう。


『近寄るな……穢れが移る……』


 仮面の女が優月を手放した。

 同時に数歩分あとずさる。

 少なくとも俺の猪突猛進な攻撃に怖気付いたって感じではない。


『アナタ……何者かしら』

「優月っ! 今の内に早く逃げろ!!」

「う、うん!」


 優月はすぐに俺の背後へと移動する。

 

 最悪の事態は免れた。

 何故だか奴は俺と距離を取って警戒している。


「酷い怪我……私のせいで……」

「大丈夫だって……こんな傷少し舐めときゃ治るから……」


 正直言ってかなりヤバい状況だ。

 このまま血を流し続ければ百パー死ぬな。


 逃げるにしたって屋上の入り口は丁度対角線上にあって距離がある。

 奴の攻撃は必中クラスの遠距離攻撃だ。

 簡単に逃してはくれないだろう。


 せめて優月だけでも逃がせれば勝機はある。


「彰人君……もしかしてそのお守り……」

「あ、あぁ。今日優月と遊びに行く約束してただろ。だからスマホに着けてきたんだ」

「なんか青く光ってるよ」

「えっ……ほんとだ。光ってる」


 俺はスマホをポケットから取り出した。


『ち、忌々しい愚物を出さないでもらえるかしら』


 なるほど。

 奴が恐れているのは俺ではなく、何の変哲もないこのお守りか。


 現状突破の方法はただ一つ。

 意味不明に光っているお守りを盾にして、俺が囮となるしかない。


「優月、合図をしたら直ぐに屋上の入り口まで走れ」

「でも……でもそれじゃ彰人君が……」

「俺なら心配いらないから。校内に戻って助けを呼んできてくれ」

「そんな……彰人君を置いて……」

「大丈夫。すぐ戻ってくるから」

「……」

「行けっ!! 振り返らずに走るんだ!!」

「っ……!!」


 もう二度と優月を犠牲にした歴史は作りたくない。

 ここで死ぬのは俺だけで充分だ。


 もう一度奴に近付いて差し違えてでも優月が逃げる隙を作る。


 ほんと、こんなことじゃ積極的に人と関われないじゃん。

 また最初からやり直しかよ……まさに自己犠牲だな。


「行くぜ!」

『今度は外しませんよ』


 仮面の女は複数の鉛筆を取り出して投げ付けてきた。

 一本は優月に向かっている。

 俺は足に最大限の力を込めて跳躍し、身代わりとなって威力を半減させた。


『バタんっ……』


 屋上の扉が閉められる。

 どうやら無事に逃げられたようだ。


「ざまぁねぇな、犯罪者」

『はぁ、ほんと面倒な事になりましたね』

「俺……もう死ぬから……最後にアンタの名前……教えろよ……」

『はぁぁぁ? 冥土の土産にでもするつもりです?』


 ヤバい……意識が消えかかってる……。

 せめて名前だけでも……。


『――――じゃ、さようなら……八神彰人君♪』


 優月……必ずまた戻ってくるから……お前は何としてでも……生き延びろ……。



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