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2-29 見透かされつつ、逃しつつ

‥‥‥浜辺にいると、生きとし生けるものを狙って、海の魔獣たちが時々押し寄せてくる。


 海にいるからこそ討伐しにくく、こうやって近くに寄って来てくれると戦いやすいのだが、結構遠い沖合の方では静観しているような類もいるようで、全部を討伐し切れるわけではない。


 魔獣と言っても全部が考えなしという訳でもなく、ある程度の知性を持つのも存在しており、だからこそ襲うべき頃合いを見計らってくるらしい。



 そう、例えば人が寝静まる深夜であれば、すぐに動き出せないだろうと考え、やってくるものたちもいるのだが‥‥‥一応、魔剣士を育てる学園が何もしていないわけもなく、ある程度の夜間の襲撃に対しての対策はされてるし、今年に限ってはさらに運の悪い要素が彼らに襲い掛かっていた。





「そもそも、私は眠る必要が無いので、こうやって出ることができますが‥‥‥ふむ、やはり水着よりも普段のメイド服の方が戦いやすいデス」

「魔剣って、何なのだろうか」

「まず魔剣がメイドになっている時点で何だろうか」

「そもそもメイドが何をどう狂えば、魔獣をここまで殲滅できるのか‥‥‥そこから考えるべきでは?」


 月明かりのもと、絶命して消えていく魔獣たちを見ながら、普段のメイド服に着直して殲滅を行っていくゼナを見ながら、今晩集まってきていた密偵やその他影の者たちはそう口にする。


 実際に目にしたとしても、メイドが次々に魔獣たちを討伐する様と言うのは、異様なものとしか言いようがない。


ビシィッ!!

【グゲェェェ!?】


 手刀で綺麗に首を胴体からお別れさせて、


バギボギゴギィ!!

【ポゲェン!?】

【モゲェェン!?】


 全身の骨という骨を折られ砕かれ捻じ曲げられ、


パァウゥゥゥゥゥゥ!!

【【【ヒゲェェェェ!?】】】


 指先から極太の光線が打ち出され、貫いていく。 


 魔剣でしか絶命できないのだから、魔剣である彼女が魔獣たちを逝かせることが出来る理屈は分かるのだが‥‥‥それでも、ツッコミどころが多すぎるのである。そもそも魔剣と名乗っているのに魔剣要素が皆無と言って良いような部分も多く、どこからどう言えば良いのか分からない。


 悲しいかな、裏社会に潜む者たちがいくら捻ったとしても、流石にこの状況に対応できるほどのツッコミ力は持っていないのである。



「ふぅ、一息付けたところで、今晩あなた方が集まって話をしたいと持ち掛けてきた件に移りましょうカ」

「あ、そう言えばそうだった」

「この魔獣たちにとっての地獄絵図で、忘れかけていた」


 ひとまず今晩の襲撃者(哀れな犠牲者)を沈めたところで、彼らはここに集った理由を思い出し、話し始めるのであった。







「‥‥‥なるほど、前々から気になってましたが、その件に関してですカ。確定とは言い切れずとも、自己保身のために行動に出る者がいる可能性は考えてましたが、予想通りデス」

「ある程度予想できていたと?」

「ハイ。メイド魔剣たるもの、ご主人様の身の安全を守るために様々な想定を行い、対応できるようにすべきという事で、考えている中の一つとして数えていまシタ。こうやって密告されずとも、動きがあればすぐに思い当たるのですが…‥‥まぁ、こうやって直接言ってくれた方が楽と言えば楽なのデス。ご主人様の命を狙おうとする輩の最後は楽にしませんがネ」


 最後にぼそっとつぶやいたゼナの言葉の重みに、ぞわっと悪寒が走る。


 どうなるのか予想できそうなのだが、最低でも消滅などを口にする彼女ならば、もっと悲惨な末路を愚か者どもへ与えることを理解しており、より悲惨なものになると思えるのだ。


 例え、その末路が想像を超えていようが‥‥恐ろしいものは恐ろしい。


 だからこそ、巻き添えにならないためにもこうやって事前に話に来たのだが、どうやら正解だったようである。もしも黙ったまま、同じものとして見られてしまったら、それこそ想像がつかないほどの目に遭っていた可能性が非常に高い。


「ご主人様への危害を加えようとする者たち…‥‥後でゆっくり、手が届くところにくれば、適切に対処(殺処分)しましょウ」

(今絶対、不穏な言葉が聞こえた)

(あ、でもまだ軽い方なのか?遺体がギリギリ残りそうだ)

(それ、軽いのかなぁ‥‥?)


 色々と毒されているような気がしなくもないが、それでも自分達が助かるのであればそれはそれで良い。


 犠牲になるのが愚かな主だとしても、その判断をしてしまったのはその人たち自身の手なので、どうしようもないのである。



「‥‥‥それにしても、ご主人様の両親に関して不明な点が多いのに、よくその人たちはそうかもしれないという想定ができましたネ。情報があったとしても、不正確であれば確定するまで動かないほうが良いとは思うのですガ」

「なんというか、どう説明すればいいのか」

「あくどい事に関しては頭の回転がずば抜けるというか」

「そもそもの話として、可能性があるならば摘み取りたいのだろう‥‥‥青薔薇姫の子供かもしれないという考えになった時点で、徹底排除を望むのだろう」

「青薔薇姫、デスカ…‥‥情報を聞く限りでは、個人的には私の親に近い感じなのに、そんな人間がいたのは驚きますネ」


 魔剣の親って何だ?というツッコミはさておき、一応その情報に関して彼らは伝えることが出来ていた。


 一応、この裏社会に潜むような者たちの中でもその名は通っており、今はいない者だとしても、知っている者たちからすれば畏れる対象でもあるらしい。



「メイド魔剣という時点で人外と言うべき私ですが、聞いただけでも人外過ぎる人だと言いたいデス。魔剣士でもないのに、何をどうすればそんなことが出来るのでしょうカ?」

「分からない。生きた災害だとか、何代か前の長が言っていたなぁ」

「暗躍する者たちからすれば、かってに照らしてくる太陽であり、焼き尽くしてくる地獄の業火でもあると言われていたしね」

「悪事を企む者にとっては天敵で、そうでない者にとっても面倒事をホイホイ引き寄せてきて」

「「「共通して、全員思い出すと遠い目になるからなぁ…‥‥」」」


 そんなとんでもない人がかつてはいたようで、いなくなった今でも被害に遭った者たちは悪夢に時々出てくるので、影響力はずっと残され続けているらしい。


「そしてその人が、ご主人様の母親である可能性ですカ…‥‥んー、何と言いますか、どこからどうツッコめばいいのか悩みますが、まずその人が子を成せたのかという部分に疑問を持ちたくなりますネ。どう考えても、相手の人の方がただ者ではないはずですヨ」

「それは確かに言えている。あんな人を嫁に貰え、いや、婿として攫われるぐらいならばドラゴンとか鬼とか、そう言う類しか無理だと言われるほどだったらしい」

「魔獣がでる以前は、そんな物語にしか出ないような存在がいたらしいけれども、本当にそのような類しか絶対に無理っぽいような…‥‥」


 とは言え、メイド魔剣の主である彼は人間であり、ならばその親もまた人間。


 そう考えると、母親よりも父親の方がより謎が深まるような気がするのだが‥‥‥‥未だに確定したわけではないので、結論付けることはできない。


「いっその事、はっきりしてくれれば話が早そうですが、かといって発覚するとそれはそれでご主人様の周囲が騒がしくなるでしょうし、中々難しいデス」

「既に色々と手遅れな気がするような」

「これ以上、もっと騒がしくなる可能性はあるのか…‥‥」



‥‥‥色々な情報が隠されているのであれば、その情報を探らなければいけない立場にあるものたちは動かないと駄目なのだが、探れば探るほど帰りようのない深淵へ引きずり込まれるような錯覚を覚えてしまう。


 とにもかくにも、今はこの海での試験のどさくさに紛れてやらかそう企む輩たちの情報を伝えて、ある程度の自己保身を行うしかないのであった…‥‥


「一応、完全にはっきりさせる手段は、この試験に来ている別の人がもっているんだよ」

「その人はその人で探りたいけれども、学年が違うせいで中々接点が持てない」

「そもそも、何も接点が無いのにいきなり近づくのは不審だしねぇ…‥‥」

「‥‥‥ならば自然に、まずは確証を得られるように動かせばいいのデハ?いえ、でもそれをするとご主人様のわからないご両親の片親が判明して、より一層面倒ごとに…‥‥むぅ、難しいことが多くて、考えるのが大変デス」


魔剣って、なんだっけ?

その疑問を彼らに残しつつも、そんな想いをゼナは知る由もない。

今の考え事と言えば、その面倒な輩をどうすればいいのかという事と‥‥‥

次回に続く!!



‥‥‥なお、これでまだ徒手空拳(?)であり、武器を持っているわけではない。

実は色々と強化する手段があったりするのだが…‥‥流石に、やり過ぎるといけないので自重しているのである。


「やろうと思えば、巨大メカも作れたりしマス。でも、魔剣としての存在意義を失いたくないのデス」

既に十分、怪しい気がするけれどね?

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