第54話 再 開 ~庄野哲也の日課~
「行ってきます」
「ん、気を付けて行くね。」
身体も本調子になり、庄野は外へ出て日課の訓練へと赴く。
彼も一応、サクラ姫の騎士であるが都の入り口の警備と称して付近で訓練を行っていた。
(さて・・・ん?)
都を出ると、平原には大量のスライムがウヨウヨと現出している。
(魔方陣は封印したはず・・・それなのにスライムが大量発生している。自然な発生とは考えにくいな。とりあえず、駆除しとくか。)
庄野は何も持っていない状態でまるで拳銃を持っているかのように構える。
右肩にはコピードールが乗っており、複製をすると拳銃は庄野の右手の中に現れ、そのまま射撃を行う。
(今まではコピードールから受け渡しで拳銃をもらって撃っていた。そのロスを限りなく削減する方法がわかった。俺の手首から肩のどこかにコピードールが触れていれば直接手の平に複製が出来る。これを利用すれば拳銃でも上手くやれば連射が出来る。
デメリットとしては、体格の大きいきゅうまるを担ぐのはなかなか辛いって所だな。
・・・ちょっと、試してみるか。)
ふぅー、と深呼吸をして空の手を構える。
拳銃が現れると同時にスライムへと連射をする。
(・・・連射すると命中精度は酷いもんだな。30発撃って当たったのは5発ってところか。撃ちながら照準を合わせるのではなく、引き金を引ききる前に照準を合わせられるように・・・。)
「キュウ・・・」
「疲れたな。よし、帰ろう。」
屋敷に戻ると食事を速やかに終わらせると事務仕事を行う。
西の都はサクラとアルフ、他数人の使用人だけで全て対応しており人材不足である。
それを庄野はサポートしている。
「サクラ姫、先日お話しした件ですが、」
「・・・てつや様にお任せします。結果だけ教えて下さい。」
「あ、はい・・・。」
「・・・。」
(・・・ずいぶんと、嫌われたものだ。前は真剣に話し合いをしてくれたのだが、そこまでか。俺が任されてる仕事も少々ミスしても大きな影響の無いものだから構わないのだろうが・・・。)
そんな日々がしばらく続いた。
雨の日も、風の強い日であってもただただスライムを撃ち続け、たとえサクラに酷くあしらわれても一切嫌な顔をせず励んでいた。
そんな風に扱われた事もあってか、庄野は射撃訓練にのめり込んでいた。
(・・・30発中、30発命中。連射しても当たってはいるが、反動を利用して照準している所がある。
ダメだ。狙いは相手の行動に合わせて撃たなければ。自分の癖に合わせて撃ってたら意味がない。定点に連射してもぶれない照準をしないと・・・。)
士気旺盛と言えば良い響きであるが、現実を忘れるためにのめり込む彼の姿は狂気を感じさせるものがあった。
ある日の朝も日課のため庄野は外へと出た。
(・・・ん?何だ?
今日はやけに物資を運んでいる馬車や天馬が多いな。)
地上には街道をまるで行軍をしてるかのように何千と人が、空には百を越える天馬が木箱や袋をサリアン城へと運んでいるように見える。
庄野は射撃訓練を中断し、屋敷へと戻ろうとすると出発しようとするサクラとアルフに鉢合わせする。
「あ・・・てつや様。その・・・。」
「庄野さん。お声がかかったね。サリアンに一緒に行くね。」
「わかりました。すぐに準備して向かいます。」
(拳銃、ナイフ、水筒とエンピ・・・何があるか予想がつかない。携帯用の食料を数個だけ持っておこう。)
荷物をまとめると3人はサリアンへと向かう。
「何用で呼ばれたんですか?」
「魔王がわざわざ各国に『明後日サリアンを襲う』と手紙を寄越したんだね。本当か嘘か、どちらにせよ奴さんの狙いはサリアン、兵や物資を集めるなら今しかないね。」
(まぁ・・・杉村ならやりかねんな。あいつは派手好きでそういう事はとにかく回りに発信しないと気が済まない目立ちたがり屋だ。
・・・だが、あいつはバカじゃない。確実に勝てる算段があるからこその作戦だろう。)
サリアン城へと着くと、3人は会議を行う広間へと連れていかれた。
各国の代表であるデル、ボラブ、リーの3人が揃っている。
庄野達が部屋に入ると話が始まった。
「・・・今朝、シダレ様の机の上にあった。文面は恐らく皆と同じだろう。」
「おぉ!!ガラ王にも来たぞ!『明後日、6時頃にサリアンを全力で潰す。御覚悟を。』とあったぞ!どうする!」
「どうするもこうするも・・・良いところに軍司がいるじゃねえか。専門家の意見を聞こうぜ?」
視線が庄野に集まる。
「・・・あまり期待はしないでください。元同僚ってだけで、行動パターンまではわかりませんよ。とりあえず、貰った文書を見せてください。」
3人がそれぞれ文書を机上へと置く。
文書の大きさや字体、内容は全く同じであり変哲の無い手紙であった。
文書の一部分を除いては。
(・・・トンツーか、これは。紙を3枚並べると文章になるようだな。)
「どうした?何かあるのか?」
「紙の下の方の模様だな!丸とヨコ線があったな!不思議な模様だが、何かあるのかぁ??」
「・・・その顔、暗号だな?何てかいてあるんだ?」
(・・・ドウジツ、トキ、0600、モンノマエ、ヒトリデコイ、タゴンムヨウ。)
「俺へのメッセージでした。内容はよくわかりませんでしたが、本気で来ると思います。」
「何でそう言いきれる?」
リーが質問を投げ掛ける。
「欺瞞って可能性だってあるだろ。来るって確証はあんのかよ。」
「最初は欺瞞と思いました。でも、次は違うと思います。」
「おいおい。次って言っても、前回にマジックゴーレムは大量に出てきて、それらはほぼ全部殺ったんだぜ?あれから期間は立ってるんだ。やるなら前回の時だろ?」
「俺もそう思います。やるなら前回の出現時に連携して攻撃、でもやらなかった。
・・・やらなかったんですよ。
それは・・・憶測ですが、あの大量に出現したのは『実験』だったと予想してます。大量のマジックゴーレムを1度に魔方陣から出現させられるかどうか。その実験をしていたとするなら、」
「待て!その予想が確かなら・・・。」
デルの顔が一気に青ざめる。
「・・・明後日、もっと大量のマジックゴーレムが来ます。杉村達の攻撃と共に。」
『静か』という言葉を説明するために作ったのではないかという程、場が凍りつく。
「とにかく、準備だぁ!ガラの守りは国王直々にやってくれる!俺はサリアンの守備に全力を注ぐぞぉ!」
「・・・へっ、それもそうか。ソーラも同じだ。カエデ嬢ちゃんが何とかするだろうよ。」
「・・・助かる。守りを固めて、魔王の侵攻を防ぐ!いや・・・ここで戦いを終わらせるぞ!」
城内は各国の兵隊が物を運び、武器を整え、守備のための配置を確認したりと大忙しである。
サクラは回復全般、アルフも城壁の構築の大役を任されておりデルから指導されている。
やることを終えて、作戦を告げられていない庄野は見張り台でぼんやりと外を眺めていた。
気がつけば夜が更け、辺りを月が照らしていた。
(・・・杉村なら、何で来る?あんな89式小銃を産み出した。もしかすると、やつは自由に兵器を作れる魔法を使えるのかもしれない。そう過程するなら何が出て来てもおかしくない。
87式、79式による遠距離からの対戦車ミサイルか?
12.7mmを天馬に装着して空から襲撃か?
そもそも車両は作れるのか?だとしたら・・・。)
「眠れねぇのか?」
「リーさん。ちょっと考え事をしてて。」
「さん付けは辞めろや、歯痒い。」
「わかりましたよ、リー。」
「・・・なぁ、お前はずっとここにいるつもりか?」
「何もなければここにいたいです。」
「良い待遇受けてねぇだろ。最近はサクラお嬢と上手くいってねぇって聞いたぜ?」
「・・・いつか、分かってくれます。」
「いつか、ね・・・。カエデ嬢ちゃんも俺も、いつでもお前さんを待ってるからよ?色々終わって気が向いたらいつでもソーラに来な?そんだけだ、じゃな。」
「お休みなさい。」
(移住か。考えたこともなかったな。・・・。)
翌日、準備は順調に進んだ。
そして、運命の2日目。
庄野は各装備をして門の前にたっていた。
(0558。2分前。・・・1分前。・・・何だ?)
ゴォォォ、と強風と共に黒いもやが現れると中から見慣れた迷彩服を着た男が歩いてきた。
「よう、杉村。呼ばれた側が話を切り出すのも変な話だが、話すことは無いぞ。」
コピードールを肩にのせ拳銃を構える。
「はっはぁ!久しぶりだな!庄野ぉ!!
奇遇だな、俺もだ、語るこたぁ何もねぇ!
挨拶代わりだ!死ねぇ!」
どす黒いオーラを纏った89式小銃を構え、発砲した。




