第5話 解 説2 ~異界人の末路~
5話です。4話の後編です。
老兵は庄野の方に顔を向け、にたりと笑った。
「……知ってたのかね?」
「今知りました。確証は無かったのですが予想はつきました。」
「ほぉ……なるほどね。いつから疑問に思ったんだね?」
「西の都の雰囲気です。異界人がここに住んでいて、その文化が残ったものでしょうが……その、残りすぎなんです。」
ふーむ、と首を傾げ、老兵は質問を続ける。
「それでどうして『出ていく』って発想になるんかねぇ?」
「サリアン王がいる城下町には、俺の故郷にあったような物はありませんでした。でも、こっちにはそういった文化が残っている。つまり、異界人は城下町ではなく西の都に長い間住んでいた事になります。そしてサリアン王とお会いして異界人の処遇を決める時、何かルールに乗っ取って決めているように感じました。そこから考えるに、ルールで振り分け、文化が定着するほど異界人は定期的にここに辿り着いているという事です。」
「なるほどねぇ、それで?」
「定期的に異界人が来訪しているのに、今は西の都に異界人はいない。そう考えると亡くなったから、出ていったからの二択しかありません。そして、西の都には俺の故郷にあった死者を祀るような墓が無かった。だから……確認したかったんです。質問の仕方が良くなかったのは謝罪します。」
庄野はペコリと頭を下げた。老兵は庄野の話を聞き終わると『なるほどね』と何度も呟きながら、部屋の隅にある椅子に座った。
「で、ワシがばらしたわけだねぇ。……他に何か聞きたいことはあるかね?」
「出ていった理由は……彼らの使い魔や、本人の能力が原因ですか?」
庄野の問いに、老兵の表情が曇る。
数秒の空白の後、老兵はゆっくりと口を開いた。
「……断片的な情報だけでここまで……あんた、只者じゃないね。
あんたの察した通りね。ここでは異界人に対する使い魔や魔法力による差別が横行しているね。それはこの国、この世界最大の問題だねぇ。異界人だって来たくてこの世界に来た訳じゃないね。しかも、よくわからないでついてきた使い魔のランクや望んでいないのに付与された能力で勝手に評価されて、納得いかないよね。西の都はそういう差別を受けた異界人が流れついて、能力の低さに打ちひしがれ、居場所を失うね。最後に、彼らは自由と母国を求めて……悲しい話だねぇ。かつての英雄のご子孫達を酷い目に合わせてるなんて……」
「答えにくい質問にありがとうございます。」
「構わんね。さて……そろそろワシは戻ろうかねぇ。」
老兵は大きなため息を吐くとゆっくりと立って部屋のドアに手をかけた。
(異界人に対しての振り分け方法……使い魔の数や魔力で力量を判断する雑な制度。かつての英雄が一変して冷遇され排除される。まるで……まぁ俺には関係の無い問題だ。)
「改めて、これからよろしくね。 あぁ、名は『アルフ』だからね。みんなアルフおじさんと呼んでるけど好きにしていいからね。」
「ありがとうございました。アルフさん。」
アルフはヨタヨタとした歩みで部屋を出ていった。
(不思議な爺さんだ。今度色々と教えて貰おう。さて……どうしたもんか。)
コピードール達は部屋に入るとベッドの上でゴロゴロと転がり、そのまま眠ってしまった。
(おいおい……俺の寝床なんだけどなぁ……。
……正直、不安だな。俺も先人達と同じようにここを出ていきたくなる程に追い込まれるのだろうか。……まだ始まったばかりか。気にしてもしょうがない。おひめさんにも『ゆっくりやっていこう』って言われたばっかりだ、焦らずにいこう。まずは地盤を確立して戦力化を図るか。)
異界人、かつての先人達の末路を知った。それは寿命でもなく病に倒れるものでもなく、居場所を求め、元の世界への帰り道を探していたのか。
庄野は自分の今後に多くの不安を抱えながらも現状の改善に尽力を尽くす事を決意した。




