第6話 取 説 ~コピードールの使い方はこちら~
6話です。
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「お前は将来指揮官になるんだろ!指揮するならまずは部下を掌握しろ!今は教育の場だから何も言わなくても状況を理解して皆が動く。しかし実際はそんな事はありえない!今よりもっと過酷な状況で疲弊もしている、銃弾や爆音が響いてるかもしれない。だからこそ今しっかりやるんだ。」
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(……ん、朝か。懐かしい教育を思い出したな。)
ある程度年数を重ねた自衛官にもなると、起床ラッパが無くとも自然に6時になると目が覚めるようになる。庄野もその一人であり、6時ピッタリに起床し、いつもと変わらないようにベッドを綺麗にしてから早朝の軽い駆け足を行う。健康といえばそうなのだが、庄野の場合は職業病に限りなく近い状態にある。
駆け足が終わると、コピードールとの日課を始める
(さて……あれから1ヶ月。色々出来るようになったが、基本基礎を忘れてはならない。基礎からしっかりと反復演練だ。)
「集合ッ。呼ばれたら反応するように。ななよん、きゅうまる、ひとまる。」
「キュッ!」「キュッ!!」「キュッ!」
「ななよん、前へ。」
「キュッ。(他に比べて年期がある声で鳴く)」
「休め。」
「キュゥ。」
「きゅうまる、前へ。」
「キュッ!!(他に比べてデカイ声で鳴く)」
「休め。」
「キュゥ。」
「ひとまる、前へ。」
「キュッ!(他に比べて若い声で鳴く)」
「休め。」
「キュゥ。」
「『複製』」
「キュッ!」「キュッ!!」「キュッ!」
空に向かって3匹の鳴き声が響く。何も起こらない。
3匹の頭に「5.56mm弾」と書かれたメモ帳の切れ端を置いてみる。何も起こらない。
「弾を複製しろ」と具体性を持って命令してみる。何も起こらない。
その名の通り、コピードールにはコピードールだけが使える『複製』という魔法を覚える。しかしながら、庄野はその使い方が分からないままでいた。
(アルフさんと姫様にコピードールの事を聞いたが……『同じものを作る事が出来る』としか言ってなかった。それ以上の事は分からないらしい。そもそも、コピードールは珍しい魔物で、使い魔として扱ってる人間が少ない。それもあってか、複製という魔法の存在は知ってても、魔法そのものの使用方法を分かっている人が少ないそうだ。どうしたもんか……。)
「キュゥ……」
「あぁ、すまん。飯の時間だったな。行こう。」
コピードールに餌(=その辺の草)を与えながら、庄野は西の都で様々な仕事をこなす事で生活をさせてもらっている。農作業の手伝いから、家屋の壁の修理まで、人手不足となっている場所で様々な作業を行うのが日課となっている。
陸上自衛隊だけは海自、空自と異なり『なんでも屋』のような所がある。武器を扱った訓練はもとより、人名の救助、不発弾処理、食事や風呂の提供まで様座な業務をこなす必要がある。そのため、一人の隊員が色々と出来たほうが効率がいい、と考えてなのか、陸自隊員は多様性のある人が多い。庄野もその一人である。
空き時間になると、庄野はアルフに『訓練をしませんか』と声をかけるのも日課になっており、アルフが気だるそうに断るのも日課となっている。
「何回も言ってるけどね……?訓練、もう何年もしてないからねぇ。そもそも、魔法で戦うのに体鍛えてどうするんだね。何かしら理由をつけて体動かしたいんなら、あっちの家で色々と困ってるらしいから、面倒見て欲しいね。じゃ、頼むねー。」
庄野に適当な仕事を押し付けては、どこかへ消えていく。結局、取り残された庄野は別の仕事に向かい、終わったあとに一人で訓練を行う事が日常となっていた。
(……この世界の住民は皆が魔法で戦う。だから訓練が必要無いという認識を持っている。考えが甘すぎる気もするが……多分、平和な世の中であるから重要じゃないんだろう。楽観視をすることは悪い事じゃない。俺が変に口出しして関係を悪化させるのも良くない。穏便に済ませるためには、俺がアルフさんと訓練をしなければ良いだけの話なんだが……この世界にいるなら、いずれは魔法を使う人間と戦うことになる可能性がある。魔法について理解はしておきたい。やはり、出来るなら一緒に訓練をしたいんだが……。)
「はぁ、参ったな……ん?」
「キュー。」
どうしようかと悩み、項垂れる庄野のズボンの裾をコピードールがガジガジと噛んでいた。
「わかった、わかったよ。ほら、あっちで掃除の仕事を貰ったから移動するぞ。」
「キュッ!」
庄野が歩き始めると、コピードールは庄野の後ろを1列に並んで付いて来た。
(いつも思うが、指示がなかったらド○クエみたいに並んで付いてくるんだよな。命令に忠実で、指示以外の事は決まった行動しかとらない。まるで新隊員の陸士みたいだな。
コピードールの事はまだ分からないことばかりだ。食事に関してはこの辺に生えてる草なら何でも好んで食べ、近くにある川の水を動けなくなるまでがぶ飲みする。もっと色んな事を知っていくうちに複製の魔法についても理解できるのだろうか……。)
庄野は一度考えるのを止め、テキパキと仕事にかかっていった。
「お婆ちゃん、こんに感じで良いですかね?」
「庄野さん、ありがと。ほら、お駄賃あげる。」
「気持ちだけで結構です。その代わり、よろしければコピードールの『複製』について教えてください。」
「若いのに謙虚なんだから……でもごめんなさいね。魔法については分からないの。」
「そうですか……ありがとうございます。また困ったことがあれば呼んでください。」
(さて、次の仕事に行こう。
……コピードールの運用が上手く出来てないのは指揮をしている俺の責任だ。もっと明確に指示をする文言を決めて置いたほうがいいな。いや、まずは使い魔について勉強が必要か。大きな図書館でもあれば……)
次の仕事に行こうとしている矢先、ガチャガチャと鎧の音をたてながら老兵が走ってきた。
「はぁっ、はぁっ、し、庄野さん。来てもらえますかね。あなたの力が必要でねぇ。はぁっ。ぶ、武器を持ってきてくださいね。全部ね。あなたが持ってきたやつね。」
「アルフさん、まずは落ち着いてください。焦りは混乱を、混乱は謝った行動に繋がります。」
アルフは庄野に深呼吸を促され、ゆっくりと呼吸を繰り返し、徐々にいつもの調子に戻っていった。
「すまんね。……今、サリアン王が主催してる闘技会があってね?異界人が闘技場で戦う大会でね、すっごい使い魔を従えてる異界人が出ててね。」
「そんな大会があるんですね。」
「そうね。でも、参加者が思ったより集まらなかったみたいでね。王が突然、優勝賞品にサクラ姫との婚約を許すって言い出しちゃったのね。で、飛び入り参加有りでめちゃくちゃになってね。でも、サクラ姫はそんな理由で結婚なんて望んでないね。
庄野さん、姫様の為に止められないかね?」
「え……えぇ!?」
状況を理解できていないまま、庄野は持ち込んだ装備を準備した。
(非常呼集がかかったみたいだ。……89式小銃、9mm拳銃、弾倉、ナイフ、防弾チョッキ、鉄帽、皮手。準備よし。
俺に出来ることは何もないかもしれない。全くの役立たずで終わるかもしれない。でも、やれるだけの事をやるしかない。俺は自衛官であり、彼女の騎士だ。ここでも日本でもやることは一つ、守るために戦うだけだ。)
庄野はアルフと共に闘技場へと向かった。




