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悪魔公女Ⅱ ~ゆるふわアクマ旅情~【書籍化&コミカライズ】  作者: 春の日びより
第二部 第四章・素晴らしき腐った世界 【異世界テス編】

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4-13 迷子になりました ④

 続きです。

 

 



 やっぱり見覚えがある。こっちの世界ではない。聖王国(実家)があるアトラでもない。

 と言うか、めっちゃ魂的な“繋がり”を感じている。……もしかして。


「……ギアス?」

「ふぉっふぉっふぉ、さすがでございます、お嬢様」

 ンマァ、何てことザマショ。良く見たら柚子のお祖父ちゃんそのままじゃないけど、面影ありまくりじゃないですかっ。

 どうしてそうなった? いつの間に【人化】なんて覚えたのっ?

 しばらく連絡が付かないと思ったら、この子達、何をやってるのっ? あ~……今のギアスだと“この子”って言いにくいわぁ。


「まぁまぁ、良いではございませんか。私など四度目の人生ですが、今の私にとってはユールシア様は“主”で“お嬢様”でございますよ」

「まぁそうなんだけどね……」

 私も今更、柚子としての意識を持てとか言われても難しい。それでも今のギアスだと命令とかしづらいのも感じている。

 お目付役を付けられたお嬢様の気分なのです。

「それと、今の私は凜涅(リンネ)様の執事という“設定”でございます。凜涅様のご指示でユールシアお嬢様をお迎えに上がりました」

「設定……」

 って、……え?

「もしかして、リンネも人化なんかしちゃっているんじゃないでしょうね? いや、リンネはそろそろ依り代を得たほうがいいんだけど、……あれ? それじゃ恩坐くんはどうなってるの? ……まさか、」

「ふぉっふぉっふぉ、その話はまた後で。今は時間がありませんので、出来ればユールシアお嬢様のお力で、難民どもの癒しをお願い出来ませんでしょうか?」

 ……ども、って。なんとなく悪魔らしくてかえって安心した。


 私もそうなんだけど、人間の属性を持っていると精神生命体の【悪魔】っぽい制約なんかは緩いけど、人間の常識で行動してしまうこともある。

 それでも一番優先されるのが“食欲”だったりするから困ったものなのです。


 どうして時間が無いのか知らないけど、別に難民さん達がここに居るのなら、癒してあげるのに問題はない。

 元々そのお仕事で来ている訳だし、名を売っておくことは悪いことじゃない。

「そう言えば、森で誰か(・・)を狙っているような人間の集団を見ましたね。誰に害を為そうとしたかは存じませんが、最近のユールシアお嬢様は少々、ご自由に為されすぎているかとお見受けしますが」

「うっ…」

 少々痛いところを突っ込まれた。

 アトラではお父様やお母様達が居て、地球では柚子の家族が居た。

 一応、色々と気を使って慎ましく生きていたんですよ、私は。

 それがここ【テス】だと誰かに気兼ねしなくても良い状況なので、気が緩みがちになっちゃうのです。

 ちょっとやりすぎて色々と敵を作りすぎたかも……。

 ここでもどんな敵がいるか分からないので、気をつけましょう。私は清く正しく悪魔として生きるのです。

 ……ギアスって、本当に“お目付役”として寄越されたんじゃないのよね?


   *


「…『光在(ひかりあ)れ』…」


 神聖魔法の光が柔らかく周囲に広がり、病気や怪我をした子供達を癒していく。

「わぁ……」

「うごけるっ」

「……苦しくない」

 ギアスに案内された公民館のような場所に寝かされていた子供達は、不思議そうな顔で起き上がり、喜びの笑顔を見せてくれた。

「こ、このお方が、みんなを治してくれたんだよ」

 少しだけ緊張しているように見える村長さんの言葉に、数十人の子供達の瞳が向けられ、私は視線を合わせて微笑む。

「もう痛くない?」

「うんっ、へいきっ」

「おねーちゃん、ありがとーっ」

 キラキラした無垢な瞳と笑顔が大変可愛らしい。

 子供達は素直でいいわね。……私に怯えないから。なのに大人達は私が姿を見せてから視線さえ合わせてくれない。

 ギアスとは普通に接しているのに、どういうことでしょう……?


「あ、あの……お嬢様、その…」

「あら、どういたしました?」

 おどおどと話しかけてくる村長さんと顔役さん達に、私も半分以上意地になって優しく接してあげる。

 あ、……そう言えば、こういう場合って聖教会でも“お布施”という名目で多額の治療費を請求していましたね。

 ちなみに今の私はお金に困っていない。

 セイル国から活動費のような物も貰っているけど、頭皮の治療とか、異世界の魔法陣の図式とかを売っているので、王都に屋敷を買えるほどのお金はあるのです。

 セフィラに出会って新しい商売のアイデアも思い付きましたしね。……ふふふ。

 こういう部分に柚子の感性が出ているのかしら?

 でも、こんなお金のなさそうな人達から、お金を取るつもりなんてありませんよ? やんわりと微笑んでいる私に、村長さんはゴクリと唾を飲み込んでから、意を決したように口を開いた。

「……光の天使様を引っ込めていただけますか?」

「……分かりましたわ」


 ここに来て最初に子供達を癒そうとした時、一部の人達が、自分達を先に治せとか、来るのが遅いとか、怪我が悪化したから賠償しろとか言い出したのですよ。

 文句を言う元気があるのならいらないでしょうに……。

 ギアスが、まだ残っていましたか……とか言っていたので、こんな人達がもっと居たのでしょうね。

 まぁそれでも、私は“優しい”ので平等(・・)に癒してさしあげましたわ。

 ちゃんと【祝福の宴】を使って。

 あ、そうそう、私の使う【祝福の宴】は、通常のものとは少々違っているみたいなのです。

 通常の【祝福の宴】は、多数の人達に同時に【加護】を与え、その恩恵の一部で傷を癒し、身体を強化して徐々に病魔を退ける。

 けれど私の【祝福の宴】は、膨大な魔力を癒しに注ぎ込んで、その余剰魔力が光の精霊を具現化して、暴走(・・)した光の天使が大量の【加護】を与えるのです。

 初めて使った時のように、弱っている人間ばかりなら、癒されるだけなので問題はないのですけど、下手に健康な人の場合は、某有名栄養剤の一番高い奴をジョッキで一気飲みするくらいの効果が出るのです。

 そして文句を言えるほど元気があった人達は、とても健康(・・)になって鼻血を吹き出しながら床でピクピク痙攣しております。

 それを見て光の天使達がまだ元気が足りないのかと、彼らに纏わり付くように飛び回って、さらに祝福を振りまいている悪循環っ!

「……不幸な事故でしたわね」

「いや、早く止めてくださいっ!」

 遠くを見ながら呟いた私に、とうとう村長さんがツッコミを入れてきた。


   *


 それから私とギアスは、村人総出のお見送りを受けながら出立しました。

 お布施ではありませんが、子供達から【供物】化したお芋も貰っています。

 あんまりお芋ばっかりだったので、替わりに乾燥したワカメを1トンばかり置いてきました。これで栄養のバランスも良くなるでしょう。

 そろそろアトラ産のワカメが少なくなって、地球(テラ)産とテス産のワカメが主流になってきましたが、“大宇宙の真理”の一つとして、どの世界でもワカメだけは変わらないので問題ありません。

 ドレスのポッケから無限にワカメを出す様子に、また少し怯えられたりもしましたが私は元気です。

 蒸かしたお芋に塩気のあるワカメは合うと思うのですよ。


「それでギアス、その“誰か”を狙っているらしい森にいた人間達って、誰の手の者か分かったの?」

「はい、どうやら彼らは、ギルドを介さず金で雇われた冒険者崩れのようでした。依頼人はフードで顔を隠し、名を名乗らなかったようですが、まだ若い女と言うことです。ただ…」

「ただ?」

「今にしてみると、どうしてその“お願い”を聞いてしまったのか、わからないと」

「……ふぅ~ん」

 ますます怪しい(・・・)な。貴族の小娘一人、単独ならどうとでもなると思ったのでしょうね。

 問題は、どうして私を排除しようと思ったのか?

 確かに私は目立った動きをしているけど、あくまでセイル国が認めた【聖女】としての枠を出ていないと思うのだけど……。

 冒険者崩れでどうかなると思ったのなら、悪魔だとバレているとは思えない。それとも力量を試された? それとも【聖女】の存在自体が邪魔だったとか?

「情報が足りないわ……」

「ですなぁ。【悪夢】であるファニー殿が居れば、また違うのでしょうが」

 あの四人って、離れてみると有能だって気付くのよね。

 近くにいると問題ばっかり起こすのに……。


 あれ……? 私の護衛騎士団も友人達も、私が関わっていない時は結構まともだったような……。

 いえ、多分気のせいね。うん、きっとそう。


「それとリンネ達のことなんだけど……」

「ふぉっふぉ、その事もございましたな。凜涅様は、ユールシアお嬢様がお求めになっていた、ある情報を…」

 ボンッ。

「…………へ?」

『ガウガウ』

「ちょっとぉおっ!?」


 唐突にギアスがテディベアに戻ってしまった。

 思わず抱き上げて揺すってみたけど、ギアスは『ガウ?』と可愛らしく首を傾げるだけで、先ほどまでの“出来る老執事”の面影はどこにも残っていなかった。

 無駄に可愛いのが憎たらしい。

 リンネ達はどうなったの? ある情報って何っ?

 時間がないって、人化を保っていられる時間がないってことっ?

 そりゃまぁ人化をしているにしては魔力が【上級悪魔(グレーターデーモン)】から変わっていないから、おかしいとは思っていたけどさっ。

「最初に言ってよぉおお」

『ガウガウ』

 ガックリと項垂れる私をよそに、ギアスは短い手足を動かして大きな木に駆け寄り、見つけた血のように真っ赤なキノコを頬張りながら、そのうちの何個かを私に差し出してくれた。

 いや、そんな見るからにやばそうなキノコはいらない。

『ガウ』

「…………」

 くっ、美味しいじゃないかっ。


 色々言いたいことはあったけど、その鬱憤はリンネと会った時に取っておく。

 そのまま私は『森の中をテディベアに案内される女の子』と言う童話のような、やたらとファンシーな状況で進んでいった。

 実際は北国の寒々しい森の中を時速300キロで走りながら、出会う魔物を片っ端からギアスが貪り食うという、とんでも絵面だったけど。


 そして数時間後……私達は闇の勢力に占領された城に辿り着いた。

 

 

 そう言えば、ある物を埋められた場所に咲く花は、真っ赤になるという話がありましたね。


 ギアスはお爺ちゃん執事です。人化した姿は戴いたコメントを参考にさせていただきました。


 次回、再会 ……までいけたらいいなぁ

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― 新着の感想 ―
どの世界でもワカメだけは変わらない > え〝!? そんな設定が!? ワカメとは一体なんなんだ!? もしかすると、そこにこの世の真理があるのだろうか?
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