第4話:歪みの中心
第4話です。
クロエとセレナ、初めての共同戦闘回になります。
それぞれの力の違い、そして戦い方にも注目していただけたら嬉しいです。
少しずつですが、二人の関係にも変化が見え始めます。
空気が重い。呼吸が浅くなる。クロエはゆっくり顔を上げた。
「……なに、これ」
空が裂けていた。これまで見てきたものとは違う、ただの“穴”ではない。そこから溢れる何かが、空間そのものを歪めている。
「上位侵食体だ」
ノクスの声が低く響く。「格が違うぞ」
クロエは目を細めた。理解はできない。でも――
「強いのは、わかる」
黒翼がわずかに震える。恐怖ではなく、未知への反応だった。
その時、白い光が隣に降りた。
「……来たんだ」
クロエは振り向かずに言う。
「当然」
セレナの声。冷たく、迷いがない。「対象は優先度変更済み」
クロエは少し笑った。「まだ消す気?」
「必要なら」
短い答えだったが、その奥にわずかな“揺らぎ”。クロエはそれを感じていた。
「……そっか」
言葉より、今は行動がすべてだった。
「来るよ」
空気が裂ける音。形の定まらない“それ”が腕のようなものを伸ばし、空間ごと叩き潰す。
「――っ!」
クロエは飛ぶ。黒翼が空を裂く。その直後、地面が消えた。存在ごと削り取られる。
「……えぐい」
ノクスが笑う。「面白いだろ」
「全然」
クロエは即答する。
その横で、白い光が走る。セレナがすでに動いていた。
「天眼観測」
空間に見えない線が走り、攻撃軌道が固定される。
次の瞬間、“それ”の動きがわずかに鈍る。
「今」
クロエは迷わない。黒が収束し、腕に力を集める。
「――黒翼」
振り抜く。闇が走る。
だが――
「……浅い」
確かな手応えはあったが、“それ”は止まらない。むしろ、傷ついた部分から新たな“何か”が生まれる。
「増えてる……?」
「自己増殖型か」
ノクスの声。「厄介だな」
その時、白い光がクロエの前に展開される。
「下がって」
セレナの声。珍しく強い調子だった。
次の瞬間、光が炸裂する。
「断罪執行」
空間ごと“それ”を削り取る。
だが――
「……消えない」
完全には消えない。
「効いてはいる」
セレナが分析する。「だが、不十分」
クロエは息を吐く。「じゃあ」
黒翼がさらに広がる。
「もっと削る」
その言葉にセレナは一瞬だけ視線を向ける。
「非効率」
「でも」
クロエは笑った。ほんの少しだけ。「それしかないでしょ」
その瞬間、また一つ“何か”が弾ける。胸の奥に熱いものが走る。
「……これ」
クロエは小さく呟く。「楽しい」
セレナの瞳が揺れる。「……理解不能」
だが、目を逸らさない。
「それでも」
白翼が広がる。「排除する」
クロエは頷く。「うん」
黒と白、同時に動く。その背後でノクティアが静かに見ていた。その瞳はすべてを“知っている”ようだった。
戦いはまだ終わらない。むしろ、ここからが本番だった。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
第4話では、クロエとセレナが並んで戦う初めての場面が描かれました。
互いに理解しきれないまま、それでも共闘する関係――ここが大きな転換点になります。
また、クロエの中に芽生えた“感情”。
戦いを「楽しい」と感じ始めたことも、今後に影響していきます。
そして、まだ倒れない“上位侵食体”。
この戦いは、ここからさらに激しくなっていきます。
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