第4話:観測の外側 《セレナ視点》
第4話です。
今回はセレナ視点から、クロエという“予測不能な存在”の異質さが描かれます。
同時に、観測側にもわずかな違和感が生まれ始めています。
物語の裏側と、本質に少し触れる回になります。
ぜひ最後まで読んでいただけたら嬉しいです
静寂。白で統一された空間。無機質な壁と規則正しく配置された光源――そこは、白翼教団の観測室だった。
セレナ・アルヴィスは静かに目を開く。
「……演算、再開」
淡々とした声の裏で、膨大な情報が流れる。戦闘記録、行動ログ、未来予測――すべてが計算され、空間に浮かぶ無数の光点は“可能性”を示していた。対象は黒翼契約者、クロエ。
「排除成功率――」
一瞬、計算が止まる。
「……算出不能」
あり得ない結果だった。誤差も例外もないはずの計算で、結果が出ない。再演算しても同じ結果が返ってくる。セレナの瞳がわずかに揺れる。
その時、小さな音がして振り返ると、白い梟ノクティアがいた。静かにセレナを見つめる。
「……補助を」
セレナの言葉に、ノクティアが羽を広げる。
その瞬間、空間が歪み、視界が変わる。無数の線が絡み合う未来の中で、ただ一つ――クロエの位置だけが黒い空白として欠落していた。
「なぜ」
返答はない。しかしノクティアはわずかに首を傾け、まるで理解しているかのように振る舞った。
「……お前は、ただの補助機構ではない?」
セレナの声に、ノクティアの瞳が光る。黄金ではなく、深い闇のような色に。一瞬だけ、存在が“別の何か”に変わったかのように見えた。
セレナは息を飲むが、次の瞬間には元に戻っている。
「……錯覚」
しかし、心の奥には小さな違和感――“ノイズ”が残った。その直後、警報が鳴り響く。
「侵食反応、急上昇」
ランクは「未定義」。
セレナはゆっくり立ち上がり、白翼を展開する。ノクティアが肩に乗り、その瞳はどこか楽しげに光っていた。
場面は崩壊した街へ。空は大きく裂け、異形の“それ”が現れる。これまでの侵食体とは異なり、形は定まらず、存在そのものが歪む。重力さえ狂わせる圧力を放つ。
クロエはそれを見上げ、黒翼がわずかに震える。
「来たか」
ノクスの低い声。
「“上位侵食体”だ」
その瞬間、白い光とともにセレナが静かに着地する。クロエと視線を交わす一瞬の沈黙。
「共同戦闘、継続」
セレナが告げると、クロエは短く「うん」と返す。それだけで、十分だった。
空がさらに裂け、“それ”が動き、世界が歪む。黒翼が広がり、白翼が応える。その背後で、ノクティアが静かに目を細め、誰にも聞こえない声でつぶやいた。
「……始まるか」
黒と白、そして観測するもの――三つの存在が交わる時、世界の均衡は崩れ始める。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
第4話では、セレナの“観測できないもの”に対する揺らぎが描かれました。
そしてノクティアにも、明らかにただの補助機構ではない“意思”の片鱗が見えています。
さらに登場した“上位侵食体”。
これまでとは次元の違う脅威が、ついに本格的に動き出しました。
そして――クロエとセレナの共同戦闘。
ここから二人の関係は大きく変わっていきます。
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