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黒翼契約譚《レイヴン・クロニクル》 ~終わりを選び、未来を奪い返せ~  作者:
第一章:固定された世界

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第9話:追われる者たち

第9話です。


少し、落ち着いたと思ったら――


すぐに次が来る。


今度は、逃げる側。

夜。


静かなはずの街が、不自然に静まり返っていた。


「……来る」

セレナが呟く。


クロエは壁にもたれ、息を整える。

「もう?」

「時間の問題だった」

迷いのない声。しかし、わずかに硬い。


ノクスが低く笑う。

「嗅ぎつけてきたか」


その瞬間、空気が切り裂かれる。

「――発見」

冷たい声。振り向く間もなく、光が走る。


クロエが飛ぶ。

背後の壁が消し飛び、そこに立っていたのは――白翼の二人。


「対象確認」

前に出たのは男。鋭い眼差し。感情のない声。

黒翼契約者レイヴン・バインダー

視線はセレナへも向く。

「及び、逸脱個体」


セレナが一歩前に出る。

「……レグルス隊長」

クロエが小さく呟く。

「知り合い?」

「……上官だった」


レグルスがわずかに目を細める。

「“だった”か。残念だ、セレナ・アルヴィス」


背後からもう一人、白い光を纏う少女。

「命令違反、確認済み」

「処分対象:2名」


クロエが舌打ちする。

「……来るね」

黒翼が展開される。


その瞬間、空間が固まる。

「――っ!?」

動けない。見えない何かに縛られる。

絶対拘束アブソリュート・バインド

レグルスの声。

「抵抗は無意味だ」


セレナが歯を食いしばる。

「……違う」

白翼が軋む。

「私は――」

空間に亀裂が入り、拘束が砕ける。


レグルスの瞳がわずかに揺れる。

「……成る程。そこまで堕ちたか」


次の瞬間、ミリアが動く。

「排除開始」

光が放たれ、触れたものをすべて消す。


「クロエ!」

セレナが叫ぶ。


だがクロエは動かない。

いや――

「見える」

黒翼が静かに揺れる。影走シャドウ・スライド

消え、次の瞬間背後に回り込む。


「遅い」

黒断ブラック・リッパー。一閃。

ミリアの結界が軋む。

「……速い」

初めての反応。


その時、レグルスが動く。

「甘い」

空間が圧縮され、クロエの動きが止まる。

「――っ!」

セレナが飛び込み、光がぶつかる。白と白。だが、質が違う。


「お前は“観測者”だ」

レグルスの声。

「戦う存在ではない」


セレナの瞳が揺れる。

「……違う」

小さく、確かに。

「私は――」


その瞬間、クロエが動く。

拘束を引き裂き、黒が爆ぜる。

「終わらせる」

終焉一閃ラスト・レイヴン。闇が走り、レグルスがわずかに後退する。


「……ほう」

初めての“回避”。


クロエは息を吐く。

「勝てない」

正直な言葉。

セレナも理解する。

「……撤退」


クロエが頷く。

「同意」

ノクスが笑う。

「いい判断だ」


黒が広がる。煙のように視界を覆う。

「逃がすか」

レグルスが手を上げる。


だが――

「観測妨害」

ノクティアが低く鳴く。

空間が歪み、未来がブレる。


「……チッ」

レグルスが舌打ちする。


その隙に、クロエとセレナの姿が消えた。――静寂。


ミリアは淡々と告げる。

「追跡継続可能」


レグルスは空を見上げ、小さく呟く。

「……面白い」

「セレナ・アルヴィス」

その名にわずかな感情。

「どこまで堕ちる」

視線は闇へ。


逃亡は、始まったばかり。

そして追撃も――終わらない。


ここまで読んでいただきありがとうございます!


新たな追撃者、レグルスとミリア。

これまでとは違う“人”としての敵が登場しました。


クロエとセレナは、初めて明確に“逃げる”選択を取ります。


まだ勝てない。

でも、終わりでもない。


逃走は続きます――。


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