森林の騎士④
食事はデザートまで進んだ。
一皿は、いずれも極少量、それでもコースで何皿も重ねれば、お腹も膨れる。
それでも腹八分目には少し足りない。
そして最後に出たデザートは桃をふんだんに使った果物のケーキ!
桃は僕の大好物です。
しかも、最後の最後で量があり、大きい。
まるで、デザートがメインのよう。
そこでハッと僕は気がついた。
これは、僕のための裏メインだ。
今までの少な過ぎる量は、この為の布石!?
僕は、ケーキを取り出して剣匠の前に置く料理人を、見つめた。
…
やられた…意図は読み取ったが、好物を前に嬉しさが弾けそう。
おそらく僕が、この時点で 料理人の思惑に気づくことも織り込み済みであろうと思うと、やられた感が強い。
僕の完敗だ…そして乾杯だ。
こんな幼な子にやられるとは…嬉しい驚きだ。
僕は、紅茶を含み、口中をリセットした。
観察すると桃の表面に透明なジュレが濡られて木漏れ日が反射して光っている。
皿に描かれた赤色は、多分ラズベリー系のソースだろう。
…美しい。
眼福だ。まるで芸術品、目の保養になる。
しかも、これから食べて味わうことができる。
僕は、期待たかまり胸踊らせた。
だがここで僕は、この世の普遍の公理の一つを思い出した。
それは、等価交換の法則。
これを無視した商人が罪貨の重みで、数え切れぬほど今まで地獄へと落ちている。
有史以来地獄に落ちて現世に帰って来るものはいないから、ヒト族には認識が薄いかもしれない。
しかし世界法則は現象であるから、世界内では神でさえこのルールには従わざるを得ない絶対のもの。
即時性はないが、蔑ろには出来ない怖ろしいものだ。
このような至高の一品の対価を、はたして僕に差し出すことは可能であろうか?
でも…食べたい。
この機会を逃せば、おそらく次の機会はない。
ヒト族の言う一期一会とは、なんて儚い概念であろう。
「…願いを言え!」
このデザートに見合う対価に絶望感が湧き、食べれる嬉しさに希望の光が胸に灯る。
「一つだ!…この見事なデザートの対価に一つだけなんでも願いを叶えてやろう。」
なんだかどこぞの魔神のような言い回しだが、当然ながら僕は魔神ではないので、願い事には限界がある。
とにかく僕は、デザートに視線を集中させながらも聞いてあげた。
「もったいないお言葉なれど辞退致します。」
料理人の頑なな返答が聞こえた。
うん、彼女ならば、そう言うと思った。
…なんて奥ゆかしい。
謙虚な人間は、僕は嫌いではない。
だが、今はそれでは、僕が困るのだ!
目前のデザート食べたさに催促する。
「ホラ、アレ、キミ、願いなど、人生いろいろあるだろう?」
なんだか料理人の僕を見る視線が冷たいような気がするのは、僕の気のせいだろう。
「…それほどまでに仰るのなら、今日の私の雇い主に聞いてみて下さいませ。彼ならば回答をくださるでしょう。」
剣匠に?
うん…それは、ちょっと、いろいろと不味い気がするなぁ。




