エピローグ:黒幕と独白
エピローグです。第5章はこれにて完結となります。
──あの時、天からの声……そうとしか言うことができない声が、突然聞こえた。
「貴方に力を授けてあげるわ。まぁ、正確に言えば、貴方の奥底に秘めた力を解放してあげるってことね!」
「え……?だ、誰ですか?」
「私は女神よ。貴方、よく頑張ってるから、力を貸してあげるわ」
「……え?」
女神と名乗った女の人の声の通り、僕のステータス画面に、固有スキルが追加された。
今までどんなに頑張っても、駄目だったのに。
姉さんも、フールも、ズィガも、みんな僕を置いていく。
僕はもう14歳。この年まで、剣の才能も魔法の才能も、人望も育てることができなかった。
そんな僕に、『固有スキル』の欄が追加された……?
「それは貴方の元から持っていた力よ。そして、ある者によって抑制されていた力」
「……」
「私は神だから、貴方が考えていることは分かるわ。言っておくけど、私は少し手伝っただけで、ほとんど貴方だけで手に入れた力なのよ?」
「……それは」
「大事なのは、その力をどうやって使うのか。君の師匠もそう思ってるわ」
「え……?」
師匠……ヨルカワ先生?
「君の師匠と私は友達だから」
「え!?」
「だから、あまり気にしなくて良いわ。ちゃんとこの力を使いこなせるように頑張ってね。じゃあね~」
「ちょっっ……」
一瞬にして、声の主はいなくなってしまった。
「……」
──
【種類】固有スキル
【名前】正義の支配者
──
僕は、こんな力に相応しいのだろうか。
それこそ、ヨルカワ先生のような人がこういう力を持っていた方が……。
「……」
でも、これが僕の力なのだとしたら……僕はやらないといけない。
ちゃんと、皆を幸せにできる王にならなきゃ。
***
「おかしい……」
今日、私は王になっているはずだった。
だが、何故か私は愚弟が王になっているところを見せられている。
「私は『犠牲の支配者』のままに動いたはず、スキルも今までそれにこたえてきたはずだ」
分からない。なぜ負ける?
まさか……
「ここから逆転することこそが、私の宿命であるというのか?」
それならば、話は簡単だ。
私の目的は、王になること。そして、その邪魔になっているのはカインとあの英雄だ。
『犠牲の支配者』よ。私は覚悟を決めた。
私が最高の指導者であり、人類の頂点であることを証明しようじゃないか!
「……さあ、私の逆転劇が始まる」
「いえ。そんなことはありません」
「……!?誰だ!」
急に背後から声が聞こえ、私は珍しく驚いて声を出した。
「こんにちは。あの時以来でしょうか?属性神ミナですよ」
「……っミナ様!?」
振り返ると、間違いない、属性神ミナがいた。
彼女はあの時と全く変わらぬ、美しくも人間とは明らかに違う異質なオーラを放っていた。
「貴方、『犠牲の支配者』があったのに、王になれなくて残念だったわね」
「……っ申し訳ありません。ですが、『犠牲の支配者』はこれから私に……」
「もうその必要はないわ」
「え?」
「貴方はもう用済みよ。もともと、貴方だけで世界を動かすのは無理だと分かっていたわ。でも、こっちとしても『実験』が必要なのよ」
「何を言って……」
「君の『犠牲の支配者』は剥奪しておくわ。じゃあね、スキルに支配された、哀れなお馬鹿さん」
彼女は嗤いながら、私の視界から消えていく。
そして、後に残ったのは、何のスキルも持たぬ、ただの人間1人であった。
***
「平くん、本当お疲れ」
「いや、別に俺は疲れていない。それよりも、雪さんにはいろいろ迷惑をかけて申し訳なかった」
俺たち4人はカインが王になった記念に静かにパーティーのようなものを開いていた。
カインにはまだ酒は早いので(違法ではないが)、用意していない。もっとも、俺も雪さんもメーレスも誰も酒を飲まないので全く問題はなかったのだが。
「えー、別に良いよ」
「まぁ、また何かあったら言ってくれ。手伝う」
「ふふ」
「はい、カイン。チキンです、食べてください」
「う……あ、あの、姉さん……さすがにもう……」
2人は楽しんでいるようだ。主にメーレスがだが。
……さて、そろそろか。
「少しトイレに行ってくる」
「うん」
俺は、部屋から出た。
そして、誰もいない廊下の隅で立ち止まる。
「……誰ですか?」
「──ごきげんよう、ヨルカワ・オサム」
「……」
先ほどから、俺たちを何かが監視しているような気がした。
やはりあたっていたようだ。
「私の存在に一瞬で気づいていましたね、見事です」
「……」
それは人間の女の姿をして俺の前に現れた。
だが、それが人間でないことは明らかだった。
銀の長髪を靡かせ、誰もが思わず見てしまいそうになるであろう美貌の裏に、俺のスキルは危険が潜んでいると警告する。
「『神』種ですか……」
「あら、そんなことも分かるのですか。流石に『賢者』は違いますね」
「私に何の用でしょうか?」
「まあまあ。そんなに怒らないでください。勝手に覗こうとしたことは謝りますよ」
この女は『神』種だ。俺の鑑定がギリギリ機能した。
一歩でも引けば相手のペースに飲まれる。この女は厄介だ。
「私は貴方に伝えることがあってきたのです」
「伝えること?」
「ええ。『犠牲の支配者』について」
「……」
俺は驚きの感情を抑えた。
同時に、今までの予想の答え合わせをする。
「愚かなフールの『犠牲の支配者』は、私が与えたものです。そして今日、私は彼からそのスキルを剥奪しました」
『犠牲の支配者』を与え、剥奪した。この女が『神』種であればあり得る話だ。
「だからもう、安心してくださって結構ですよ?私は別にこの国の政治に興味があるわけではありませんからね。それよりも……私はもう『貴方』に、興味が移ってしまったのですから」
「……興味?」
「これからは、貴方が世界をどうするのか、楽しんで見させてもらおうと思います」
「随分と勝手に見えますが」
「あら、そうでしょうか?私としては、せっかくフールを無力化して差し上げたのですから、そこはむしろ感謝されるべきだと思いますが……。勝手なのはこの世界の支配者なのですから、当たり前じゃないですか」
この状況は本当に良くない。
だが、現状俺の選択肢は限られる。
「まぁ、貴方がどう思ってようが関係はありませんけど。じゃあ今日はこの辺で失礼しますね。また会いましょう、ヨルカワ・オサム」
そう言って、女の姿はだんだんと薄れていく。
「あ、せっかくなら、自己紹介だけはしておきましょうか?私は属性神ミナ。この世界で一番偉い偉い、女神様ですよ」
そう言い残し、女は完全に消滅した。
「属性神ミナ……」
確かに女はそう言った。それが事実であるならば、意味するのは……。
(なんで、こんな面倒なことになる……)
俺はそっと手を胸にあてる。
「……」
この世界に来て、俺の本能が命の危機を感じたのは、あの女神様の前に飛ばされたとき以来だろうか。
俺は人間にしては強くなっているが、『神』種を見るとやはり何か別に感じるものがある。
「……戻るか」
息を整え、俺は何もなかったように雪さんたちの元へと戻った。
***
~魔人の領域~
(人間どもは、ランクSの英雄を人類の領域全体に配置すると同時にさまざまな手を打つことで、迎撃態勢を万全にした……しかも最近になって、ホワイトが英雄ヨルカワに倒され、行方が分からなくなった。ホワイトが管理していた『愛の賢者』も、英雄ヨルカワの手に渡った)
「……私に何とかできるの?」
上位魔人序列2位・運命の王"ミス・フェイト"は、魔人の拠点施設の一角で、紅茶を飲みながら必死に感情を抑えようとしていた。
「英雄ヨルカワ……本当に厄介だわ」
ホワイトだけでなく、平に倒されたこちらの勢力は非常に多い。
「あれれ~?また一人で考え事してるの?」
「……貴女ですか」
フェイトの部屋に勝手に入ってきたのは、暴虐の王"アトラ・タイラント"だ。
「貴女……本当に」
「あ、そうそう。魔人王会議で決まったんだけど、次の侵略地はね…………獣人の領域だよ!」
-エピローグ 完-
お読みいただきありがとうございます。最後までお読みくださった方へ、本当に感謝を。
第5章はかなり短かったのですが、第6章は比較的長くなりそうです。
現在第6章のプロットを作成しているので、また書き終わったら再開することになるのかなと思います。
また、現在新作も作っています。全くジャンルの違う作品にはなりますが、投稿した時には活動報告にも書くと思いますので、良ければ読んでもらえると嬉しいです。おそらくカクヨムの方にも投稿するかと思います。
ありがとうございました。




