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第48話 月夢魔 リリーナ・アシュレイ

「私はずっと前からマスターのことが好きなんです!!」


 好きなんです……、好きなんです……、好きなんです……。

 リリーナからの突然の告白で、頭の中が真っ白になり今のセリフにエコーが掛かる。


 すっ……好きとな!?

 えっ、すっ……すすすす好きなの?

 俺のことを??


 つか、スキって何だっけ? 鋤? 空き?


 あぁぁ!! わかった隙かっ!?


 そっか、なるほどなー。俺に隙があったのかー。


「ヨルシアよ。お主、壮大な勘違いをしておらぬか? 顔にそれが出ておるぞ? リリーナはお主のことを愛しておるのじゃぞ? 一人の男としてちゃんと答えてやらぬか! あぁ、そうそうついでに言うておくが妾もお主のこと好きじゃぞ?」


 かるっ!! エリーの愛情かるっ!! ビックリするほどかるい!! その好きって食べ物や趣味とかと同じ好きなんじゃないのか!? 何に便乗してんだか。


 しかし、リリーナは俺のことを、その、なんだ、あっ……あああああ愛しているのか。そうか……、その好きなのか……。


 俺がなんて答えようか考えているとリリーナが先に口を開く。


「初めて会った時は、正直マスターのことをクズとかゴミとかと思ってました。ダンジョンの仕事もしないし、眷属のことも考えていない最低のダンジョンマスターと思ってたんです」


 あれぇー…‥、リリーナさん? いきなりディスってくるね? まぁ、しかし本当のことだから仕方ないか。うむ、的を射ている!


「でも……でも違ったんです!! マスターは誰よりもダンジョンのことや眷属になったみんなのことを考えてくれてました! 本来であればマスターを守るべき盾である私たちを、マスターは何よりも大切に思ってくれてました。そんなマスターを見てたら気付かないうちに、その……すっ、好きになってました」

「そっ……そうか!」


 俺が話しているわけでもないのに、めっちゃ恥ずかしいのは何故だ!? 青春臭がプンプンする!! 誰か助けてっ!! 顔からゲヘナの爆炎が出そう!!


「でも、私にマスターを好きになる資格はありません……。私はマスターをずっと裏切り続けていたんです」


 あ、あれ?


 なにやらいきなり雲行きが怪しくなってきたぞ?


 ふとエリーとマリアンヌを見ると二人は静かにリリーナを見守っていた。するとリリーナの目から大粒の涙が溢れだした。


「私は……、私は……マスターに黙って吸精行為をしていたんです!!」


 リリーナの言葉で部屋の中が静まり返る。


 きゅ……吸精行為?


 でもそれって確かサキュバスの食事みたいなもんだよな? なんか悪いことでもあんのか? 要は生理現象だろ?? あれ? ダメなのか?



 あっ……。



 この時、俺は気付いてしまった。

 何故、俺の息子が勝手に引き篭もりになってしまったのかを……。


 息子よ……お前……お前ぇぇぇ!?


 毎晩毎晩、マッ〇シェイクのようにチューチューと精気を吸われてたのか!! そら、引き篭もりになるわ!!


 だとしても変だ。エリーも一緒に寝ていたはずだし、そんな相撲みたく激しい行為を行ったら俺が起きないわけがない。


 ……なぜだ?


 するとエリーがドヤ顔で話しかけてきた。


「ふふふ……、ヨルシアよ。お主またも疑問に思っておるな! リリーナが妾を売れるはずもないからのぉ。妾、自ら教えてやろう。きっとお主は妾が傍にいるのに吸精行為なんて無理じゃと思っておるはずじゃ」


 おう! その通りだ。俺はロリNGだし、あまり詳しいことを書くとノクターン送りにされるからな! そう思いながら俺は静かに頷いた。

 

「簡単なことじゃ。妾もそれに参加し、お主が目を覚まさぬように催眠の魔法を掛けたからじゃ!!」


「バカなんじゃないのっ!?」


 この駄女神は何を言っているのだろう? 本物のバカなんじゃないだろうか? マジで狂ってる!! ドヤァって顔するんじゃねぇ!!


「マスター……本当にごめんなさいっ!! マリアンヌの言う通り私は許されない行為をしてきました。私はマスターの傍に居るべき者ではありませんっ!! だから……だから、すぐにダンジョンから出ていきます!!」


 そう言ってリリーナは泣きながら部屋を飛び出していってしまった。


 おっ……追った方がいいのだろうか? それとも一人にしてあげた方がいいのか?

 わからん!! 俺、どーしたらいい!? ストレスで胃が潰れそうだ!! 


 あまりのストレスで、床で『おうおう……』と言いながらゴロゴロ転がってるとマリアンヌが話しかけてきた。


「ヨルシア様、どうなされるのです? あの頑固で馬鹿な小娘が本音でヨルシア様にお気持ちを伝えました。きっと何処かで自分を責めて泣いているはずです。追って差し上げなくてもよろしいのでしょうか?」


 意外にもマリアンヌがリリーナをフォローしてきた。

 おや? あんたらお互いに仲が悪いのではなかったのか?


「わたくしはヨルシア様に黙って吸精行為を行っていた小娘を許せないだけであって、ちゃんと自分の想いを告げたのなら、想い人が同じだけの仲間でございます。ですのでリリーナさん(・・・・・・)のことがちゃんと片付きましたらわたくしにもお返事いただけたら嬉しく思います」


 マリアンヌって言動の割には良い奴なんだな。ちょっと見直した。後は、その化粧と香水さえ何とかしてくれればなぁ……。


「ヨルシア! マリアンヌの言う通りじゃぞ? 早くリリーナを追わんか!!」


 この駄女神はなんでこんなに偉そうなのだろうか? つか、お前も元凶の一人だよね?

 でも、エリーは神様なので俺はそんなことを言わない。けしてエリーが怖いからじゃないよ?


 そして、俺はリリーナを探しに城を飛び立った。







 リリーナを探しに城を出たのはいいが、この8階層にいるのだろうか?

 うちのダンジョンかなり広くなっちゃったから1階層から虱潰しに探すのスッゲー大変なんですけど? しかも会ったところでなんて声掛ければいいんだ? うーむ、悩む……。


 城の上空を飛んでいると、日が暮れ始めていた。

 今日も夕日が綺麗だ。


 そういえば天候投影って外の空を忠実に再現してくれるんだっけ? リリーナがそんなこと言ってた気がする。ほんとリリーナって俺に色んなことを教えてくれたよなぁ……。


 思い起こせば俺ってリリーナがいなきゃ何もできないダメ男だったんじゃないだろうか? 仮にダメ男選挙なるものがあるのであれば、最速で当確を取る自信がある。うーむ……。


 自分自身のダメ男っぷりを再認識し、空中で胡坐をかきながらブルーになっていると、湖の畔で一人膝を抱えて泣いているサキュバスを発見した。



 ……やれやれ、見つけてしまったな。



 悩んでいても仕方ないので静かにリリーナの隣へと降り立ちそっと横へと座る。

 リリーナは、しゃくり上げていて口が利けないほど泣いていた。


 きっ……気まずい。何か話さなければ……、って何を話せばいいんだ? こんな時に洒落の利いた言葉の一つでも言えればいいんだが、残念ながら俺にそんなイケメンスキルはない。



 ……しゃーない、俺の身の上話でもすっか。



「なぁ、リリーナ。そのままでいいから俺の話を聞いてくんねーかな? あのさ……、俺って生まれてすぐにスラム街に捨てられてたんだわ。親の顔とかしんねーの。でな、ちょうど通りかかったトロールのじいさんに拾われて育ったんだけど、これがまた酷くてさ。仕事もやらねーし、酒も飲むし、殴られるし。拾った理由聞いたら俺を使いっ走りにするために拾ったんだってさ。笑っちゃうだろ? 2歳くらいまではパシリでよかったんだけど、成長するにつれてコソ泥生活っすわ。もう何か盗んでこねーと問答無用で殴られるまさかのハードモード」


 おっ、リリーナのしゃくり声が少し静かになった。聞いてくれてるのだろうか? にしても懐かしき我が暗黒時代。自分で言うのもあれだがほんとよく生き残ったよな。


「でな、10歳になった時、そのトロールじいさんが死んじまって長きにわたるパシリ生活からやっと解放されたのよ。いやぁー、あん時はマジで嬉しかったねー。じいさん死んで喜ぶなんてクズの発想だけど、そんなこと考える余裕もなく自由になれたのがとにかく嬉しかった」


「…………」


「それからは毎日生きるためにバイト生活。もうひたすら働いたね! 魔素を買うために掛け持ちのバイトを五つもやってたし。つか、俺が働くなんて想像できねーだろ? マジなんだぜ? そんな時、バイト先の先輩からダンジョンマスターのこと聞いてさ、なんつー夢の職業なんだろうと幼いなりに感動したわけですよ」


 俺、なんでリリーナにこんなこと話してんだろ? 今まで誰に話したことなんてないんだけどな。


「それから魔学に入るために寝る間も惜しんで必死で勉強しまくったね。今思えば働くか勉強しかしてなかったな。まぁ、その甲斐あって無事合格したわけなんだけれども」


 うん。あん時は何かに取り憑かれたかのようにやってたなー。……もう二度とやんねーけど。


「で、当初の予定では一人でこっそりとダンジョンに隠れ住むはずだったんだけど、気が付いたらゴブリダがいて、リリーナがいて、エリーも来て、知らないうちにどんどんメンバーが増えていってさ。気付いたらダンジョンも信じられないくらいデカくなってるし」


 ふと、横を見るとリリーナが顔を上げて俺の話を聞いててくれた。……目が真っ赤だ。


「正直、これって俺が頑張ったからこのダンジョンが立派になったわけじゃなく、みんなが頑張ったからこのダンジョンはここまで大きくなったわけですよ。だから俺が凄いわけじゃなくて、みんなが凄いわけ。おわかり? そう、俺はただのお飾りであってメインではない! ケーキでいうなれば名前が入ってるだけのチョコプレート!!」

 

 そうなんだ。俺は特に何もしていない。マスタールームで毎日鼻くそほじってるだけだし。


「このダンジョンの一番の立役者は……、お前なんだよリリーナ。だからリリーナが居なくなっちまったらウチのダンジョンあっという間に潰れちまうぜ?」

「…………まぁすたぁ」


 リリーナの目尻から再び涙が溢れ出す。


「俺はリリーナに出会ってよかったとマジで思ってる。そして俺はもうリリーナ抜きで生活をできないとも思っている。俺は何一つダンジョンのことや、生活のことをリリーナ抜きでやりきる自信はないっ!!」

「…………」


 あれっ? なんかリリーナが大事だよって伝えようとしたのに何故か誤爆した感じがする。ちょっとリリーナさんが顰めっ面になったような気が……。これでは捉えようによってはおかしな方向へ行きそうだ。やはりこういう場面ではイケメンスキルが必須なのか……。


「私に対するマスターの気持ちはよくわかりました。でも私、マスターに黙って吸精行為をしてたんですよ? それでもマスターは私のこと許してくれるんですかっ!? それにマスターは私のこと、すっ……すすす好きなのですかっ!?」


 Oh……オジョウサーン答えを求めるのが早すぎでデース。

 しかし、ここで嘘をついても仕方ないので俺は包み隠さず今の気持ちをリリーナに話した。


「まず先にリリーナに言っておくが、俺にはその好きっていう気持ちが正直よく分からん」


 リリーナの表情が心配になるくらいみるみる痩せ枯れていった。

 ヤバい!! リリーナがマジで死にそうだ!?


「リリーナ、待て!! 最後まで俺の話を聞けって!!」


 俺はリリーナの両肩を掴み、萎んでいくリリーナを強く揺すった。


「まずな、リリーナが俺に黙って吸精行為をしていたことについてだが、その話を聞いた時は別に嫌ではなかった! むしろ、どちらかと言うと嬉しかったかもしれん! ……んっ? 変態か? 今の俺の発言変態かっ!?」


 リリーナの表情に力はなかったが、何故か嬉しそうに首をゆっくりと横に振った。


「さっきも言ったが、俺がこれから生活していくうえで真っ先に名前の挙がる存在はリリーナなんだ。だから、リリーナがいないという選択肢は俺の中にはない! オーケー?」


 またもやリリーナは嬉しそうにゆっくりと頷いた。


「これが好きっていう気持ちなのかは分からないが、リリーナが大切っていうのは確かだ! それにこんなじゃじゃ馬な性格じゃあ嫁の貰い手なんか俺くらいしかいねーだろ? だからこんなことくらいで俺の側から離れるな!! いいな? わかったなら、これからも俺の傍にずっといろ!!」


 リリーナの目から大粒の涙が滴り落ち、絞り出すように声を出した。



「…………はい゛っ!!」



 そしてリリーナは俺の胸の中で泣きじゃくった。

 あーぁ、服が涙でベトベトだ。まっ、いーけどさ。


 ふぅー、やれやれ。なんとかなったな。マジで疲れたわー。リリーナさんも納得してくれたようで良かった、良かった。これで万事解決。


 いや待てよ……。


 俺、さっきめっちゃヤバいことを言ったような気がする……。脳内ログを巻き戻そうか。



 えーと、これが好きっていう……うんたらかんたら……。



 んっ??


 あれ???



 これってまさか……。







 プ・ロ・ポ・ー・ズ・し・て・な・い・か?







 ちょいちょいちょい! タンマ! マジでタンマ!

 リリーナを引き留めるつもりが何やら大変なことを口走ってんだけど? いつの間に呪われた!? いや、本当にそんなつもりはなかったんだって! この口が、この口が調子に乗って……。


 リリーナを見ると静かに目を閉じ、顔を俺の方へと少し上げた。


 ……はい、手遅れーー。


 この状況でさっきのなしとは言えないよな? うん、言えねぇ……。言った奴、神だぁ! もうこうなった以上責任取るしかないよなぁ……、あぁ゛ーーもうっ!!



 俺は少し屈んでリリーナの小さな唇にそっと触れるように口づけを交わした。







 そして森の中で、なんやかんやあり俺たち二人はエリーとマリアンヌが待つ自室へと戻った。

 しかし、マリアンヌは空気を読んだのか既に部屋にはいなかった。とりあえずエリーには仲直り?した旨を伝えると、エリーもなぜか嬉しそうだった。


「リリーナ! よかったのう! これで万事解決じゃ!」

「エリー様、心配かけてごめんなさい。もう大丈夫です! マスターから、その……、求婚もされましたし……、これからは妻としても頑張っていこうかと思います」


 リリーナは耳まで真っ赤にしながらそう話した。

 いや、求婚したつもりはなかったんだけど……。というか妻って!? 展開早すぎだろ? そしてリリーナも受け入れるの早すぎっ!! 既に彼女の中でのポジショニングが俺の正妻になってるような気がしてならない。


「かっかっか! そうか、そうか。しかしこれでもう隠す必要もなくなったのぅ。これからは堂々と吸精をすることができるというわけじゃ」

「はいっ!!」


 リリーナが元気良く返事を返す。


 は? 堂々と吸精? そうか、そうなるのか……。

 俺が呆然としてるとリリーナがまた悲しそうに聞いてきた。


「マスター、ダメ……ですか?」

「いや、駄目ではないけど……逆に俺でいいのか?」


 リリーナはゆっくりと嬉しそうに頷いた。


「マスターがいいんです。だから、ずっと一緒にいてくださいね?」


 儚げにそんなことを言うリリーナが、物凄く可愛く思えてしまい思わず抱きしめてしまった。

 なぜかエリーも嬉しそうに俺の後ろから抱きついてきたのは謎だが。





 そしてその夜、俺は初めて本気の女夢魔(サキュバス)というものを思い知った。

 もうね、言葉にできないくらいヌリュンヌリュンでした。これは人間(雄)が魂捧げても吸精してもらいたくなるのも頷ける。

 まじサキュバスパネェ!! 夜のお店のねーちゃんたちとは次元そのものが違った。


 ちなみに女夢魔(サキュバス)にとって魔力の強い精気というのは凄く濃厚で美味らしく特に俺のは極上物らしい。

 

 途中、リリーナの目が肉食獣のソレに変わった時は若干恐怖を感じたが、俺の息子は勇気を持ちしっかりと立ち向かった。そう、息子が……息子がやっと一人立ちを……。(涙)

 そして俺が寝ていた時とは比べようもないくらい大量の魔力が、精気と共にリリーナの体内へと放たれ、気付いたらリリーナは気を失っていた。

 その後、よく分からないうちにエリーに襲われたがロリNGなので以下省略で。

 いやぁー、まいった、まいった。





 そして翌朝。


 目が覚めると、俺の隣には身体つきが大人びたリリーナが眠っていた。

 ……あれ?? リリーナさんがモデルのような超マブいねーちゃんになってんっすけど? 美少女から美女に変わってる……。



 リリーナが月夢魔(リリス)へと進化を果たした。



これで第2章は終わりです(*´ω`)

ヒッソリとブックマーク、評価、感想をいただきました皆様方。

本当にありがとうございます(´;ω;`)ウゥゥ

マジで泣けます。そして作者、狂気乱舞中でございます。

明日からはキャラデータまとめを上げていきますので、第3章開始までしばらくお待ちください。

今後もヒッソリと更新を続けて参ります。

では、魔王襲名編、12/8開始っ!!(。-`ω-)ビシッ


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