第46話 悪い予感しかしねぇ
ウィンクードの支配地域化計画は、ミッチーを中心として順調に進んでいった。ギルマスや手強い冒険者たちを予定通りに上手く取り込み、街の広場にエリーの銅像が建てられた。
今日はそんなミッチーの近況報告の日である。俺はリリーナと一緒に謁見の間でミッチーの到着を待っていた。すると突然、バンっと勢いよく謁見の間の扉が開かれる。
「ぃぃぃぃいやっほぅぅぅーーーー‼ 我らがぁぁぁぁー、偉大なるヨルシア様にぃぃぃー、こうしてぇぇぇ、謁見できるのはぁぁぁ、恐悦至極の極みにぃぃぃぃ、存じますぅぅぅ‼」
何こいつ?
ミッチーと一緒に超暑苦しいおっさんが部屋に入って来たんですけど? そういえばミッチーが紹介したい人がいるって言っていたな……。
え、もしかしてこいつのことなのか?
頭のネジが一万本くらいぶっ飛んでるみたいだけど大丈夫? いや違うか、完全に脳ミソ破壊されてるわ。なんでこいつこんなハイテンションなの? リリーナもエリーもめっちゃ引いてるし。
「なぁ、ミッチー。誰これ?」
「あっ、ヨルシアさんすんません。紹介するの遅れました。こいつが例のギルマスです」
例のギルマス? どの?
もしかしてこいつがミッチーを謀殺しようとしてた奴なのか!?
想像してたのと全然違うんだけど。というかこいつ大丈夫なのか? 無駄にハイテンションで目の焦点合ってないじゃん……。なんか変な薬でもやってるの? ちょっと心配になるわ。
――ジャキン‼
「マスター、黙らせましょうか?」
リリーナがエクスカリバーを構えながら物騒なことを進言してきた。
いやいや、それやっちゃうと永遠に黙っちゃうから‼ リリーナ怖ぇーよ‼ つか、ウチの秘書が武闘派すぎる……。秘書ってこんなんだっけかなー!?
「いや、リリーナさん。とりあえず落ち着きましょうか? それにミッチーたち怯えてるから。えーっと、じゃあミッチーとりあえず説明して?」
そして俺たちはミッチーから、ウィンクードで起きた出来事の説明を受けた。
⌘
ミッチーが魔族に転生して五日が経ち、ウィンクードの支配地域化が粛々と行われていった。街の中央に大きな広場を建設し、そこにエリー銅像を設置したまでは良かったのだが、案の定ギルマスたちが口を出してきた。
やはりギルマス含むミスリルランクの冒険者たちはミッチーに対して敵対心剥き出しのようだった。そして度重なる暴言や嫌がらせの数々。それがミッチーの怒りを買いサクっと魂を抜かれ死霊化してしまった。
まぁ、ミスリルランク如きが魔族に転生したミッチーに勝てるはずもなく、あっという間に戦闘は終了したのだが、ミッチーの使った死霊魔法があかんかった。
【死霊化】。倒した者の魂を抜き取り死霊化できる魔法。死霊化の際、術者の精神状態に影響され性格、口調などが決まる。
「ミッチー、つまりアレか? むかつくギルマスたちを倒したから、柄にもなくざまぁとか、くたばれボケェとか思っちゃってハイテンションな状態で術を使ったからこんなことになってんの?」
「面目ない……。ただ、ギルマスだけじゃないんっすよ。他も呼んでもいいっすか?」
は? まだあんな暑苦しい奴がいんの?
ミッチーがパチンっと指を鳴らすと空間転移で新たに四人の人族が現れた。
「おーーっほっほっほっ‼ ヨルシア様ぁん! お逢いできて光栄ですわ! わたくしが死地に咲く一輪の真っ赤な薔薇! 人呼んで【死の薔薇】のマリアンヌ! どうぞ、お見知り置きを!! おーーっほっほっほっ‼」
金髪縦ロールで胸元が大きく開いた白いドレスアーマーを着ている爆乳お姉様?が、開口一番に自己紹介してきた。原理はわからないが、何故か身体の周りを薔薇の花弁が舞っている……。それにしても化粧濃いなー……。つか、ケバい。
「押忍‼ 自分はぁ、アサシンのアーヴァインです‼ よろしくお願いしゃーーーす‼ 押忍っ‼」
白髪イケメンのアサシンのようだが、中身が応援団員のようになってしまっているので暗殺稼業はもう無理だろう。気配隠す気ゼロだよね? 残念イケメン感が半端ない。
「やっと、アタシたちの番ね! いくわよピース‼」
「わかったわ、ラブ!」
「我らは‼」
「夜空に輝くミスリルの星……」
「男よりも強く!」
「女よりも美しい‼」
「吠えろ、上腕二頭筋‼‼」
「軋め、エイトパック‼‼」
「「二人合わせて拳討死のラブ&ピース‼ 星に代わってお死於きよぉぉぉ‼」
タンクトップを着た双子のボディビルダーのおっさん二人が身体全体を使ってハートマークを作っている。
正直、滅したい。うん、滅したい。……滅していい?
身体にオイルを塗ってるせいか、物凄くテカテカしてる。なんのための油なのだろう? 火をつけて消毒すべきか?
あっ、リリーナさんの目が汚物を見るような目に変わった! できれば、こいつらを消毒してほしい。今回は許可するよ?
でも触りたくないんだろうな、あのリリーナが殴れずにいる。
見た目だけでリリーナを制するとは、あの二人やるな。
「で、ミッチー。こいつらをどうしろと?」
「えー、この五人なんですがあまりにも豹変しすぎてギルド内で浮きまくっちゃってるんですよ。ヨルシアさんとこで匿ってもら……」
「断るっ‼」
いや、無理だろ‼ イエスと言った瞬間にリリーナの地雷を踏むし‼ ミッチー、察しろやぁ‼
「そこを何とかお願いします‼ 他の冒険者にバレる前に‼ 一番厄介なギルマスだけ俺が何とか誤魔化しますんで、他の四人を匿ってください‼ お願いします、ヨルシアさん‼ 俺もよくわかんないうちに眷属化しちゃったんで、こんな四人でも面倒見るしかないんっすよね。いっそのこと、俺みたいにちゃんと魔族に転生させて仲間にしないっすか?」
こっ……この子何してんのー!? 捨て猫とか勝手に拾ってきちゃうタイプなの?
百歩譲って仲間にするのはいいけど、こいつら濃すぎるわー。
特にあのボディビルダー二人。さっきからずっと俺へのアピールなのかボディランゲージしながらウィンク飛ばしてくるんだけど。マジで勘弁してもらいたい。
「ヨルシア、ちょうど良いのではないか? こやつら既に眷属化されておるし。あとお主の魔力を込めた魔具か指輪を作成して、ルルが錬金すればミチオほどではないが、強力な魔族なり魔物なりへ変貌するじゃろうて」
うぉ、エリーいつの間に膝の上に!? さっきまで部屋で寝てたよね?
「あぁん素敵ですわぁ! この忌々しい身体を捨て魔族に転生できるなんて」
「押忍! 自分も魔族になりたいっす‼」
「ピースちゃん、魔族ですって!?」
「あらやだ、素敵っ‼ アタシたちさらに可愛くなっちゃうわ。どーしましょ!?」
いや、俺がどーしましょ?なんだけど。えー、キャラ濃いんだもの。絶対面倒くさいって! 悪い未来しか予想できない。
「マスター、仕方ないですね。街に滞在させてバレるよりもダンジョンを守る強力な仲間にした方が無難です。……諦めましょう」
なっ、何ぃ!? リリーナが許可しただと!? じゃ、もう面倒くさいからいーや。リリーナが良ければ全て良しっ!! おっ、名言だな。
じゃあ、まずはエリーが言う魔族転生でもさせてみるか。
⌘
俺は早速錬金室へ移動して、自身の魔力を込めた指輪を作成した。素材はもう適当である。とりあえずレアそうな物質を釜に投入してみた。考えるのすら面倒くさい。
そして、その指輪をベースにルルが魔鉱石と錬金し、呪いの指輪なるものを作成してみた。
しかし、ここでルルが「まだまだ呪いが弱いですねー。もう一回被せで錬金しましょう!」とか言い出したので、もう一回指輪を作るハメとなる。ルルがいつの間にか呪いソムリエのようになってんだけど? そのうち、物騒な二つ名が付きそうだ……。
意外とそれが効果覿面で指輪を嵌めた四人はヌルっと魔族への転生を果たした。元々、死霊化して操られているので、すんなり呪いを受け入れたと言った方がいいかもしれない。
まずマリアンヌだが、その金髪縦ロールは薔薇のように紅い髪へと変化した。そして髪と同じ色のドレスアーマーを着たBランク魔族【紅天女】へと転生した。依然としてケバいが、なんか数段エロくなったような気がする。特に目付きと胸が。その道の方は喜びそうな風貌である。
そして次にアーヴァイン。彼もBランク魔族【悪修羅】へと転生した。大鎌片手に冒険者たちの命を刈り取るダンジョンの死神だ。めっちゃクールそうに見えるが話しかけると熱血応援団というギャップ。でも、この中で一番まともかもしれん。青春ドラマの主人公とか似合いそうだ。
最後は一番キャラ濃い二人組。こいつらはミノタウルスの上位種【金角】と【銀角】になっていやがった。
ちっ……失敗すれば良かったのに。
Bランク、しかもレアな魔物たちだ。恐ろしいほど隆起した筋肉に四本の腕。そして金角は身の丈ほどある鉄扇を持ち、背中には大きな黒い瓢箪を背負っていた。隣の銀角は大きな鉈のような刀に、左腕に巻かれた鎖鉄球。二人の暑苦しさが倍増だ。全くもって嬉しくない……。
「おーほっほっほ! 素晴らしい身体ですわ! これでわたくしの美しさも一層磨きが掛かるというもの。これも全てヨルシア様のお力のおかげ。この身を以ヨルシア様に尽くしますわぁ! いつでも夜迦へとお呼びくださいまし」
何故かリリーナとマリアンヌの間にバチバチの火花が見えるんですけど? あの、マジ怖いんでやめてもらえます? めっちゃ寒気がする。
「押忍! 自分もヨルシア団長に永遠の忠誠を誓います! 押忍!!」
こっ、この子が一番まとも!! アーヴァイン君! 俺の中での君への評価が絶賛上昇中だよ!!
「やーねー。ピース、あの二人ヨルちゃんへのゴマスリがあからさまじゃない?」
「そうよねーラブ。私たちのヨルちゃんへの忠誠心はこの拳で見せつけてやりましょ!!」
「そう、漢を語るなら拳で語れって、バーのママ(漢)も言ってたし。あぁん、楽しみだわ! ヨルちゃんが私たちへ寄せる信頼のま・な・ざ・し」
「ラブ! いけないわ。まだ想像しちゃダメ! 絶対ダメよ! じゃないと私たち……、期待しすぎて夜眠れなくなっちゃうわ!!」
「んもう、ピースったら乙女すぎ!」
「ラブちゃんもよー!!」
なんだこいつら? ブン殴ってもいいのか? 牛面筋肉がクネクネすんなやぁぁー!! イラっとする。おろすぞこらぁ!?
でも、本当にどうしよう?
こいつらマジで魔族になっちゃったし……。もう面倒を見るしかないよなぁ。
「おい、とりあえずお前ら落ち着け」
「「「「はっ!!」」」」
おっ、意外にもすんなりと命令聞くんだな。
「とりあえずシルキーたちに部屋を用意させるからそこに住んでくれ。またダンジョンの方針が決まり次第、階層を任せるか城の警護を任せるかを決めるから。それまで待機で。いいな?」
「「「「御意!!」」」」
うん、面倒くさいから全て後回しだ。きっと成るように成るだろう。……もう知らん。
だが俺は思いもしなかった。この四人が後にダンジョンの死天王として恐れ慄かれることを。
「ょょヨルシア様ぁぁぁーー!! 自分もぉぉぉぉ、魔族にぃぃぃー、転生したいでぇぇぇーありますぅぅぅーー!!」
一番面倒くさそうなギルマスが何やら叫んでいたがフルシカトした。こいつはミッチーに丸投げしよう。もう疲れた。
ヒッソリとデビダン!が日間ランキングに入りました(+_+)
これもひとえに愛読頂いている皆様のご愛顧の賜物です。
ブックマーク・評価・感想を頂いた皆様方、本当にありがとうございます。
感謝っ!!(。-`ω-)




