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2-4 竜族の秘密

 カームの国璧の外側。またもや一組の男女が顔を付き合わせていた。


「さて、さっき俺のベッドでなにをしてたか教えてもらおう」


 男の方は安っぽいフード付きコートに身を包んで。


「なんかふわふわしたものがあったから食べてた」


 女ーーと言っても幼女だがーーの方は白いワンピースを着て。


 悪気のなさそうな幼女の言葉に男は肩を落とした。男からは、何か大切なものを失ったかのような哀愁を感じる。


 誰であろう。この二人。


 やっぱり俺たちである。


「あ、そう.........」


 ああ.........、今はなき我が低反発枕.........。

 俺はお前を絶対に忘れない。


「えっと、あのふわふわ、お兄ちゃんの大事なものだって僕知らなくて......えっと......、ご、ごめんなさい.........」


 ルイが謝ってきた。謝れるのはいいことだ。


「いや、いいよ。むしろ俺が悪かった。普通あんなところに置いてあったら誰かが捨てて言ったんだと思ってもおかしくないし」


 草原のど真ん中にわざわざベッドを捨てていくやつなんかいないだろうが。


「いやな気持ちにさせてごめんな?」

「い、いいよ別に。気にしないで。どっちも悪くないんだし.........。謝らなくてもいいよ」


 そう言ってルイは手を伸ばし、俺の頭をよしよしと撫でてきた。大人ぶってる幼女カワイイデス。しかし、


 幼女に頭を撫でられながら慰められる魔王の図。


 実にシュールだ。


「.........?」


 俺の頭を撫でていたルイが、何か違和感を感じたようだ。


 ルイはフードをゆっくりと上げて俺の頭を


 ーー俺の額の角を見た。


「...........っ......!」


 ルイの目が驚きに見開かれる。人族だと思っていたのだろう。魔族だったのか。みたいな反応が返ってくると思っていたのだが、


「お兄ちゃん.........魔王だったんだ......」


 魔王だと言うことが分かったようだ。ルイは角があることの意味を知っているのか?


「ああ。そうだよ。角のこと知ってるのか?」

「まぁ100年生きてるからね。何回か聞いたことがあるんだよ」


 なるほど、100年生きてるなら、魔王の角のことを知っててもおかしくな.........


「今なんて言った?」

「え?えっと、何回か聞いたことあるって......」

「違う。その前。何年生きてるって言った?」

「100年」


 .....................。


「100年?」

「うん。100年」

「マジで?」

「マジで」

「final answer?」

「え?ふぁ、ふぁいなさー?」

「あ、いや、ごめん」


 マジかー。100年かー。


 俺はルイを見た。


 褐色の肌。銀髪のショートボブ。華奢な四肢に未発達の胸。さらにまだまだあどけない顔。

 俺に見つめられて居心地悪そうにモジモジしている。

 .........これで100年だと?


「ロリババアじゃねえか」

「.........なんでだろ。馬鹿にされてる気がする」

「馬鹿になんてしてないさ」


 心からそう思ってるだけで。


 しかし、この見た目で100歳はおかしい。現実にロリババアが存在するはずがない。


「お兄ちゃんさっきからどうしたの?」

「いや、随分お若いですねと思いまして」

「.........言っておくけどさ、竜族の100歳ってこんなものだよ?」

「......説明を頼む」


 ルイが拙い言葉で一生懸命説明してくれた。とても心がほんわかするのに100歳だと思うと途端に悲しくなった。


 要領を得ない説明だったが、言いたいことは分かった。

 ルイが言うに、竜族は人族のおよそ10倍長く生きる。その分、成長速度が人族の10分の1らしい。

 よって、現在100歳のルイの年齢は、竜族換算で10歳である。


 よしっ。セーフ。いや、逆にアウトか?


 ちなみに竜族は、人が来ることが極めて困難なとある山奥に、集団でひっそりと暮らしているらしい。しかし、体長30メートル以上もある生物が集団で暮らすことができる広さではないので、竜族が人族の姿になれることを知らないものは、そこに竜族がいることを予想することもないのだとか。ドラゴンの体だったら生活しにくいじゃんとはルイの言である。


「だから里の場所を知られないためにも、人化できることは秘密なんだけど.........」


 ルイがじとっとした目で見上げてきた。今気づいたが、目の色は赤だな。


「いや、そんな風に見られても、俺悪くないしな」


「うっ。ま、まぁそうだよね。ごめんなさい」


 フッ。良い良い。寛大な俺はそんなこと気にしないのです。


 そんなことより気になることがある。


「里の場所が人族に襲われても、大丈夫なんじゃないか?竜族強いし」

「成竜なら問題ないけど、幼竜や生竜は弱いからさ。守るのが大変なんだよ」


 生竜と幼竜。赤ちゃんや子供の竜だろうか。成竜は大人の竜かな。確かに守るのは大変だとは思うが、


「それでも余裕だろ。成竜の群れを倒せるやつとかいないだろ」


 俺みたいなのは除いて。


「.........僕はお兄ちゃんを信用してるからね?」

「お、おう。ありがとう」


 え、何いきなり。照れる。

 やめようよ。そういうの。

 というか、なんで信用してくれてるんだろう。


「実は、竜族は150歳まで里の中でいろんなことを学んで、150歳を超えたら里から出て行かなくちゃいけないんだ。だから里にいる成竜は数人の教育者しかいないんだよ」

「......?里に残ればいいじゃないですか」

「里を出た者は2度と里に戻ってきたらいけないんだ」

「なんでだ?」

「そういうしきたり」


 しきたりか。ならしょうがないな。

 ......ん?150?


「じゃあなんで君はここにいんの?」


 今の話が本当なら、100歳のルイはまだ里にいるはずだ。


「ぼ、僕?僕はねぇ......。えっと、うんっと.........そ、そうだ!優秀だったからさ!早めに出してもらえたんだよ」


 ......嘘だな。間違いない。『そうだ』って。

 もうちょっと隠す努力をしようぜ。


「本当は?」

「や、やだなぁ。嘘なんてついてな......」

「ほ・ん・と・う・は?」

「うっ。うぐぅ〜。......。.........れた」

「ん?なんて?」

「追い出された!ファイアーブレスが使えないから、諦められたの!竜族は80歳までにはファイアーブレスが使えて当然なの!でも僕はいまだに使えないの!だから見込みなしって追い出されたの!分かった⁉︎」

「お、おう。」


 若干自棄になったルイに怒鳴られてしまった。なんかごめんな?

 そうか。ファイアーブレス使えなかったのか。戦った時から疑問だったが、そういうことだったのか。


「勉強や体術なら僕が一番だったのに.........なんでファイアーブレスだけで.........」


 ルイがぶーたれている。ちょっと負のオーラが強いですね。なんか呪われそうだ。


 勉強が優秀だったのなら、最初の方の言葉遣いの幼さも演技だったのか?


「ああ、あれ?殴られるのが怖かったから、子供の振りをすれば大丈夫かなって思ったんだけど.........」


 こ、このやろう!やっぱりか!


 なんか文句を言ってやろうと思ったが、半泣きだったのでその気が失せた。


 100歳でもまだまだ幼女のようだ。


 こんな幼女を外の世界にほっぽり出すなんて、責任感がないんじゃないか?

 いや、もしかしたら人族と竜族では倫理観が違うのかもしれない。基本的に強い竜族だ。そう言った方面の心配というものがないのだろう。


 でも、俺は心配だ。


「仲間とかいないのか?」

「.........いない」


 なんだぼっちか。なんてことは言わない。心を抉ってしまいそうだからね。


 しかし、仲間もいないとなると、本格的に心配だ。まだ関係が浅いとは言え、このまま何もしないのも後味が悪い。


 ......しょうがない。


「なら、俺と一緒に来るか?」

「え?」


 『え?』じゃねぇよ。話の流れで分かるだろうが。モノローグもちゃんと読めや。


「いや、だからさ、俺と一緒に旅しないか?」

「.........いいの?」

「いいよ?」

「行く!」


 即答だった。うん。いいと思うよ。即決即断。


「じゃあ、よろしくな。ルイ」

「うん!よろしく!お兄ちゃん!」


 2人目のパーティメンバーはちょっと生意気なロリドラゴンになりました。


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