3-13 国王会談inドラゴニア
正直ね。本当驚いた。
ガストロが「もうそろそろ到着っすよ〜」とか言うくせに何も無いからさ。
なんだこいつ馬鹿にしてんのか殺してやろうかって、ちょっと思っちゃった。
そしたらいきなり巨岩の影の穴に入っていったのさ。
いやー、まさか地下にあるとはねー。
意外。
うん。
まぁ、そんな訳で、今から俺たちが何をするのかと言うと、王様に会いに行くのだ。
正直こっちは来てやった立場なんだから、お前の方から出向けよとか思ってしまうが、一国の王であるため軽率な行動は出来ないらしい。
難儀なもんだな。
メンドっちぃ。
「こちらっす。これが、我が国が誇る、竜王城エウロペっす」
竜王城エウロペ。《竜王》ヴェルザックの住処にして、政務を行う職場にして、民衆が気軽に使用することができる、日本でいう県庁や市庁のようなものらしい。
1階では民達が職員に相談したり、談笑したり、お茶をすすっていたりしていた。
「あぁ、君は確か、ロインさんとこの長男の.........はて、誰だったかなぁ」
「ラインですよ。ドランさん。お久しぶりです」
「おお、そうだったそうだった。久しぶりだね。レインくん」
「いや、だからライン.........」
これつら本当に竜族なのかと疑問に思えてくるが今はスルー。
2階と3階はヴェルザックや《五大竜》とかいうなんか凄そうな人たちとか.........まぁ、言うなれば、この国のお偉いさん達が働く場所になっている。
そして4階よりも上が、ヴェルザックのお家となっている。
と言っても、政務で城を離れられない人が度々泊まりにくるので、4階自体は、なんというかビジネスホテルと化しているらしいが。
ちなみに竜王城エウロペは、12階建てだ。
128と18L4D2Kの、超豪邸である。
そして今回俺たちが通されたのは、11階にある応接室だ。
12階はヴェルザックの寝室がある。
中に入ってしばらくボーっとしていると、数人の男が入って来た。
白いマントを身につけて昂然と歩いてくる姿は貫禄を見せつけ、思わず息を呑むほどのものであった。
おそらく、彼らこそが《五大竜》だろう。
しかし目を引くのはそれらの後について来た者だ。
子供である。
ルイとおんなじくらいかな?
そいつは、マントをつけていなかった。それ以前に、服装がラフだった。
正装? 何それ美味しいの? とばかりに私服である。超私服。
なんだこいつ? と、そいつが進む先を見ると、そいつが座るのはこの部屋で1番の上座。
他よりも少し装飾の多い椅子に腰掛けて、俺をマジマジと見て来た。
俺もヤツを見ていたので、結果的に見つめ合う形となった。
結構コミカルなシーンだと思ったのだが、なぜか流れるシリアスな空気。
見れば、男達は俺を警戒し、フェイーー先ほど目を覚ましたーーとルイは、何してんのと俺を見つめていた。
当の子供といえば、苦笑いしながら頰を掻いている。
やがてそいつは居住まいを正して、改めて俺と向き合った。
「やぁ、魔王スガさん。俺の名はヴェルザック。御察しの通り、俺こそが《竜王》ヴェルザックだ」
.........察してないです。
俺たち3人は、示し合わせたかのように耳に手を添え、同時に口を開いた。
「「「何て(いいました)?」」」
「貴様ら! ヴェルザック様に失礼だぞ!」
「ふざけた奴らだ、生かしておけぬ!」
「ヴェルザック様にわざわざもう一度言えと申すか!」
顔を真っ赤にして、口々に俺たちを責め立てる男達。
正直そんなこと言われてもピンとこないしなぁ。
この子供が、《竜王》?
ルイが実は100歳だ、の方がまだ信じられる。いや、事実か。
だとしても、信じられないものは信じられないのだ。
「そんなこと言われてもな、信じられる訳ないだろう。取り敢えずその子供がここに住む竜族を統べてるってのが想像つかないし、俺の正体を知っているのも気になる。大体、俺のこと魔王だって分かってんのに普通に本人が出てくるとかありえねぇから。危険だろうがどう考えても」
そんな俺の言葉に、ハッとする相手側一同。
それから立ち上がって、自称ヴェルザックを守るようにこちらを見始めた。
いや、今更でしょうが。
滑稽なり滑稽なり。
「いや、今更だろうが」
自称ヴェルザックも5人に対して呆れた態度をとる。
元の位置に戻るよう5人を促し、仕切り直しと再び居住まいを正した。
「信じられないのは分かるよ。うん。そんな見た目じゃないもんな。でも、貴方には俺の正体を見破る方法があるだろ?」
............それも知ってるのか.........。
「.........確かにあるが.........どうやって知ったのか話してもらってもいいか?」
「竜族が生まれる度に、とある部屋で水晶が現れるんだ。その部屋はそれそのものが竜族の秘宝の魔道具で、その水晶は対になる竜族の行動を映し出すのさ」
俺の質問にあっさりと答える自称ヴェルザック。
五大竜達は顔を青ざめさせて自称ヴェルザックの方を見ている。
なるほど。
嘘はついていないようだ。
それはそうとして酷い魔道具だな! ストーカーが泣いて欲しがりそうな道具だ。
詰まるところ、竜族は四六時中上層部に監視されているようなものじゃないか。
思わず胡乱げな目でヴェルザックを見てしまう。
「そんな目で見るなよ。俺だって好きで見てる訳じゃないんだ。ただ、竜族には秘密が多いからな。どこで言いふらされるか分かったもんじゃない」
「............」
その場のすべての目線がルイに注がれる。
ルイはビクッとなってどこか隠れる場所はないか探すが、その前に俺がガッツリとホールディングした。
「ルイ。言いふらされたら困るんだってヨ」
「そ、そうらしいね〜」
「いっぱいお話ししたナ?」
「し、したね〜。いや、でも! ほら! もう、いいじゃん? 時効でしょ?」
「............お前なぁ.........」
あたふたと弁明に走るルイ。
取り敢えずコメカミをグリグリとしておいた。
すると、視界の端で男の1人が鼻を鳴らすのが見えた。
「ふん、ルイよ。やはり貴様は出来損ないなのだな。竜族の秘密を貴様がベラベラと話さなければ、今回のような大事にならずに済んだものを。所詮、竜族の恥か」
...............あ?
「え......そ、その.........すいません......」
「口を開くな、鬱陶しい。謝罪など誰も求めておらぬ。まぁ、願わくば、今すぐこの場から消えて欲しいとは思っているがな。貴様がおらずとも、この場は成立する」
「そ、それは............」
「口を開くなと言っているだろうが。今しがた言ったことをもう忘れたのか? ハッ、出来損ないの記憶力は違うな」
「...............」
「そこで黙ってしまうのも考えものだ。相手の言いなりになって悔しくはないのか? 貧弱な精神しか持ち合わせておらんようだな。そんな者が竜族を名乗る資格はない。いや、それ以前から、貴様に誇り高き竜族を名乗る資格などなかったな。ファイアーブレスも打てない愚物が。結局貴様は、『紛い物』なのだ」
「............ひぐ」
ルイの嗚咽を聞いた。
ドゴォォン!
部屋に爆音が響いた。
音のする方には今までルイを責め続けていた男が白目をむいていた。
そこにいた者の殆どは、何があったか分からずに呆然としている。
そりゃそうだろう。
ほぼほぼ俺の全速力なのだから。
男の後頭部には手が伸ばされている。伸ばしているのは、俺である。
一瞬のうちに男の頭を掴んで、壁に叩きつけたのだ。
壁には穴が開き、隣の部屋とつながってしまった。
だが、そんなことは知ったこっちゃない。
名も知らぬおっさんよ。実にイラつく光景をどうもありがとう。
お礼に賑やかな眠りをあげるとしよう。
と言っても、少々相手が頑丈すぎるからな。
少し手間がかかりそうだ。
「き、貴様っ! 何をする!」
白目をむいていた男が、そこは流石に《五大竜》と言われているだけはある。すぐに意識を戻して俺の手を払いのけた。
否、払いのけようとしたと言うのが正しいか。
俺の手はビクともしなかった。こいつのステータスがどんなもんかは知らんが、カンストの俺に届くわけはない。
男が俺の手を払いのけようと無理に伸ばしてきた手をつかんで肩を極める。
丁度、警察とかが犯人を抑え込む時の方法だろうか。
しかし今回の目的は抑え込むことではない。
ルイを泣かせたこの男に制裁を加えるのだ。
ゴキャッ
「ぐ、あああっ!」
そのまま腕をぐるっと一回転させ、完全に肩から外す。
男の肩は捻れた皮と肉で辛うじてつながっている状態になった。
ここで1つ情けをかけてやろう。
「きっ、貴様! 我にこの様なことをして、タダで済むと思ってーー」
「さっきの言葉取り消せ。あと、ルイに謝れ」
撤回と謝罪の要求。正しくは脅迫。
もしくは、『こうすればやめてやる』という情け。
同時に身の内側から湧き上がる殺気。
竜族トップの実力者をして、最強の魔王たる俺の殺気には堪えるものがあったらしく、身を震わせた。
惜しむらくはこいつにトップとしてのプライドがあるということだ。
身の程をわきまえぬ、やけに高いプライドが。
「は、ハッ! 愚物に愚物と言って何が悪い? 奴はブレスを打てないゴミだ。役立たずにどう言っても、何も問題あるまい?」
「.........あぁ、分かった」
「そうか。ようやく理解しーー」
「くたばれ」
我ながら恐ろしい声が出たものである。
体の芯から凍りつかせる様な魔王の殺気、闘気、覇気。
自分が超常の存在であると自覚させられる。
一端の高3に、こんなもの出せはしない。
「ーーーー!!」
言葉の後に続いて、しかしコンマ1秒以下のタイムラグから放たれる連撃の拳。
それらは本気ではないとはいえ、一撃一撃が平凡なる者を死に至らしめる凶器だ。
声にならない悲鳴と恐怖による失禁でも十分賞賛に値する。
まぁ、しないけど。
なぜならこいつはルイを泣かせただけでなく、俺の慈悲も要らぬと突き返したのだ。
だから、止める理由も無くなった。
続きをしようか。
さて、次はーー
「ストップ! ストーーップ!」
そこへヴェルザックが割り込んできた。
俺の連撃の最中に割り込んできた。
驚くべき身体能力である。
「...............何」
「いや、何じゃなくて.........やめてあげて欲しいんだけどもさ」
...............あ?
「こいつの撤回と謝罪を聞くまでは続ける」
「あ〜〜、そうすか............分かったよ。おい、ガイモン。スガさんに謝罪しろ」
「俺じゃねぇよ。こいつだ」
こっちを見て呆然としていたルイの脇に手を滑り込ませ、持ち上げる。
「...............す、すまな......かっ.........た............」
「が、ガイモンさん、いいですよ別にそんな.........」
うん。一件落着である。
騒ぎを起こした本人が言うことじゃないかもしれんがな。
腕を組んでウンウンとしていると、ツカツカとフェイが歩み寄ってきた。
「おー、フェイ。どうしーー」
「やりすぎです!!」
ゴチン
いだっ!
フェイが俺の頭に拳骨を落とした!
今時暴力系ヒロインは流行らないのに!
「スガ様。もう一度言いますが、やり過ぎです。ガイモンさん? に謝ってください」
「えー、やだー」
「謝りなさい」
「あ、はい」
こ、このやろう、魔王の俺がビビる覇気だとぅ!?
フェイ.........恐ろしい子!
「なんか、やり過ぎたらしい。すまん」
ちょっと気まずい空気になった。




