EP 10
ルナキンでの勝利の宴
「「「かんぱーい!!」」」
深夜のポポロ村。
24時間営業のファミリーレストラン『ルナキン・ポポロ支店』の貸し切りフロアに、村人たちの盛大な歓声と、ジョッキやグラスがぶつかり合う音が響き渡った。
「いやぁ、今日の役人の逃げっぷり、傑作だったわねぇ! 靴まで置いて裸足で逃げるなんて、よっぽどお漏らしバラされたのが効いたのね!」
「まったくですわ。植物さんたちに感謝ですわね。ふふっ、ポテト美味しい♡」
「だっぷんだぁおじさん、また来ないかなぁ。次のダンスも考えとこーっと!」
キャルル、ルナ、リーザの三人が、ドリンクバーのメロンソーダを片手に悪魔のような笑い声を上げている。
テーブルの中央には、ルナキン名物・バケツサイズの『メガ盛りポテト』や、巨大なチーズハンバーグが次々と運ばれては、胃袋の底なしなヒロインたちによって一瞬で平らげられていく。
「大地! ポテトのおかわり! あと、新作の『肉椎茸入りデミグラス・ドリア』も三つお願い! 戦車の再設計で頭を使ったから、カロリーが足りないわ!」
「はいはい、わかってるよ。オカンは今、厨房でハンバーグ焼いてるからちょっと待ってろ!」
俺はファミレスの厨房の奥で、エプロン姿のままフライパンを振るっていた。
村長代理とはいえ、こういう宴会の場では完全に『給食のおばちゃん』状態である。だが、不思議と嫌な気はしなかった。
「おおおおっ!! な、なんじゃこの『どりんくばぁ』という魔導装置は!? 甘くてシュワシュワする薬液が、無限に湧き出てくるぞ!!」
ドリンクバーのコーナーでは、地下帝国からこっそり地上に抜け出してきた内務官・ガンドフが、目を丸くして大はしゃぎしていた。
「ガンドフさん、そいつに『サケスキー』を少し混ぜてみな。コーラ割りって言って、悪魔的に美味い酒になるぞ」
喫煙席(※村長権限で作った特別ルーム)から出てきたネギオが、ポポロシガーの煙をくゆらせながらサケスキーの瓶を差し出す。
「こ、こーら割りじゃと!? どれ……ゴクッ。……カァァァァッ!! なんというジャンクな旨さ! 高級なサケスキーの香りを、あえて下世話な甘さで塗りつぶす背徳感……たまらんわい!!」
ドワーフの重鎮が、ファミレスのドリンクバーで安酒(中身は極上だが)の割材を作って感動している。
大国のスパイが見たら、頭を抱えて卒倒するような光景だ。
「……はぁ。まったく、カオスな村になっちまったな」
俺は焼き上がったドリアをテーブルに運びながら、深く息を吐き出した。
最初は、ただの貧乏な辺境の村だった。
それが今や、タロー経済圏(コンビニ、スーパー、ファミレス)を完全制覇し、地下にはドワーフとの密輸ルートが開通。独自通貨『PG』を発行し、村人は最新鋭の魔導兵器で完全武装している。
今日の一件で、大国(ルナミス帝国)に対しても「手を出せば世界大戦と経済崩壊を引き起こす」という、核の傘ならぬ『オカンの傘』を見せつけることができた。
「大地〜、何黄昏れてんの? ほら、大地も座って座って!」
「あーんしてあげますわ。はい、ハンバーグですわよ♡」
キャルルが俺の腕を引き、ルナがフォークに刺したハンバーグを口元に運んでくる。
「もぐっ……うん、美味い。ルナキンの冷凍技術もかなり上がってきたな」
「でしょでしょ! これも全部、大地が来てくれたおかげだよ!」
キャルルが満面の笑みで俺の肩に寄りかかってくる。
周囲を見渡せば、ガンドフとダイヤが新しい兵器の設計図(紙ナプキン)を囲んで熱論を交わし、農民たち(自警団)が芋酒を片手に大声で笑い合っている。
「……まぁ、悪くないか」
大国に干渉されない、最強の独立国家。
それは同時に、世界中を敵に回しかねない『共犯関係』の証でもある。
だが、このアットホームでヤクザな家族たちとなら、どんなトラブルでも笑って(あるいは武力と経済力で)吹き飛ばせる気がした。
「よし! 今日は俺の奢りだ! ルナキンのメニュー、端から端まで全部食い尽くせ!!」
「「「わあぁぁぁーーっ!!」」」
「大地、太っ腹じゃあぁぁっ!!」
深夜のポポロ村に、いつまでも宴の笑い声が響き渡る。
迫り来る大国の影をド派手に蹴散らし、俺たちの最強で最凶の『箱庭スローライフ』は、さらにカオスな明日へと続いていくのだった。




