4話 犬獣人と狼獣人
「おい、そこのガキ!わがまま言ってねぇで家に帰んな!」
振り返ってみると黒の毛並みの獣人冒険者がいた。
脇で座ってこっちを眺めてる同じ系統の獣人達も仲間のようだ。
(皆同じ犬…いや狼か?会う人皆んな子供っぽいおれを心配してくるなぁ)
つい苦笑してしまう。
「何笑ってやがる!ここはガキの遊び場じゃねえんだよ。オレはそこのメルと話がある。とっとと消えろ!」
「カギルさん、わたしは話はありませんよ。それにここは喧嘩会場でもありませんので静かにしてください。」
メルさんが冷え切った声でキッパリと告げる。
(カギルとか言う冒険者より怖っ!話しかける相手間違ったか…)
「おいメル、おれ達はC級に上がったんだぞ?下級用受付のお前を呼び捨てにして何が悪い?」
「はー…今度は、お前ですか…」
(へー。自慢にするぐらいだしC級ってけっこう凄いのか?)
《SとA〜G級に分けられる冒険者のクラスのうち、上級と呼ばれるA〜C級の冒険者は各種族の限界値の強さを持つと言われています。》
うわっ、ヘルプさん⁈
突然ヘルプが飛んで来た。
ヘルプさんが教えてくれるのは《自己鑑定》で見た情報だけだと思ってたよ。
《いいえ。《自己鑑定》の結果に加え、メルティス様の数々の功績もインプットされています。》
女神様の功績?
《冒険者のランク分け制度は、実力に見合わない依頼を受けて亡くなる冒険者たちを見かねたメルティス様が、天啓で与えたアイデアです。》
なるほど。
そううば女神様って人々を見守ってるんだよな。
教えてくれてありがとう。助かった。また何かあったら教えてくれ。
《待機に戻ります。》
うーんコイツが狼獣人の限界レベルなのか。
同じ犬系獣人の限界者が、チンピラのようで少しがっかりだなあ。
「やっとC級になってくれたんですか。ここの列は下級専用ですので、C級のカギルさんはジェーンの列へどうぞ。それとも…もしかしてジェーンの仕事に不満がおありで?」
ビキッ
他の列から冷気が放たれた。
おれ達へ目を向けていた他の冒険者も視線も散っていく。
タカンの冒険者ギルドには、優しい受付嬢はいないのかもしれない。
気性が荒い獣人が多い所のギルドだもんな。
しょうがないさ…きっと他の街に行けば違うはず。
「そ、そんな事言ってねぇだろうが!」
「ならとっとと行ってください。私はこの子の相手で忙しいので。」
「ちっ」
カギルはおれにガンを飛ばした後、仲間と共にギルドから出て行った。
ギルドに用があったんじゃないのかよ。
チンピラみたいなC級冒険者様を追い払ったメルさんが、おれを見る。
「ごめんなさいね。ここはあーいう荒い連中が多いのよ。マスターがいると大人しいんだけど、今はちょっと急用でいないのよ。」
「悪いタイミングだったみたいですね。それで登録なんですけど…」
「だからね、若過ぎてさすが..に……んん?」
「??」
「あなた狼獣人にしては耳が丸い?」
「おれは犬獣人ですから。」
「⁈えーーーー!?本っ当に犬獣人なの?!黒い毛並みなんているんだ…どおりで幼く見える訳だわ…」
どうやら地球と違って、オルビスでは黒い犬は珍しいらしい。
「黒の犬獣人は珍しいんですか?」
「ええ、少なくとも私は聞いた事ないわ。」
おれが犬獣人だと分かるとチラチラと頭を見てくるメルさん。
(どうした?さっきまでと雰囲気が変わったぞ)
「あの、頭撫でてもいい?」
「へ?」
「本当に狼獣人じゃないか確かめるだけよ!犬獣人はモフモフで撫で心地が最高って言うし、すぐ分かるわ!王都の本部でも行かないと鑑定は出来ないから今はそれしか方法も無いし!」
他に証明できる方法が無い以上、撫でてもらうしかない。
「そういう事なら。ど、どうぞ。」
メルさんに頭を差し出す。
さっそくとばかりに、両手で揉みくちゃにされる。
主に耳を、重点的に。
(心地良かったが、なぜか汚れた気がする…)
「ふぅー。ごちそうさまぁ〜。犬獣人で間違いないわね…(さすが癒しの女神さまが自分自身を癒すために生み出したと言われるモフモフ種だわ)」
「何か言いました?」
「ん?何でもないわよ?では、あなたを犬獣人と認めます。幼く見える理由も分かりました。さっそく登録手続きを始めましょう」
反応いただけたら幸いです。
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